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龍華出陣

 儂がダーリンの元へと戻ってくると、何故か聖がそこにいた。

 なんだ? もう特攻したのではなかったのか?


「聖よ。なぜまだここにおるのだ?」


「ん? おお、ヌェルティスか。なに、徒歩で向かうには少々面倒だと思ってな。どうせなら人より速い足に乗って名乗りでも上げようかと思ったのだ。何せ久々の大戦だからな」


 心なし、龍華の目元が微笑んで見える。

 あまり顰め面から変わっていないが、なんとなくそうじゃなかと思える程度のわずかな変化だ。珍しい。


「名乗りについてはトト様に教わり何度も使っているからな。ちゃんとあざなもトト様から頂いたのだぞ」


「なんだ? 字?」


「武将は姓名の後に字を名乗り突撃をするのだ。これが正式な名乗りである。私の生きた時代では女性はめったに名乗る事はなかったがな。いや、むしろトト様の知り合いぐらいしか私が名乗りを上げていた女性は見たことが無いな……もしかして名乗ってはいけなかったのだろうか? いや、今さらだな」


 何故か途中から思案するように顎に手をやりだしたので儂は聖を放置してダーリンに……っ!?

 なんと、ダーリンが、ダーリンが真っ赤な竜に乗っておる! カッコイイではないか。乙女漫画のようにキラキラ輝いて見えるぞ。歯も光ってないか?

 いや、それはどうでもいい。肌の赤い竜などどうでもいいのだ。

 そんなことより、その背に乗るダーリンに、ダーリンに乗っている(・・・・・・・・・・)のはイチゴショートケーキではないか!!


 ど、どど、どういうことだ?

 こ、これは夢か? そうだな。夢だな。まさかアレが泥棒猫だったりするはずもあるまい。

 何せお子ちゃまなのだ。容姿的には儂とそう変わらんが、頭の中身は完全に子供なのである。

 そんな恋愛のれの字も知らんような小娘風情が、なぜ、なぜダーリンに背中を預けておるのだ!?


 ありえん、ありえんぞ! なんだこの出し抜かれ感!

 許せるか? いいや許せん、かくなる上は我が吸血により儂の上前を撥ねる事の無い従順な従者に……

 などと黒い思考と闘気を発していると、肩を叩かれた。


 振り返ると、真っ白な毛並みに羽の生えた一角馬が前足を儂の肩に乗せていた。

 そして、儂が振り返ったのに気付き、首を横に振る。

 まるで、次の恋があるさ、頑張れジェニファーとでも言っておるようだ。

 ムカついたので脛蹴りに加えて掌で下顎を打ち上げてやった。誰がジェニファーだクソ馬がぁ!

 何故か嬉しそうに鳴かれて背筋に怖気が走った。


「お、ヌェル、戻ってきたのか」


 憤りと得体の知れない恐怖を感じていた儂に、ダーリンが声を掛けてくる。

 巨大な赤竜は儂に近づき寝そべるように座り込み、出来るだけダーリンの目線を儂に合わせてくれた。

 物凄いいつも通りの口調にちょっと傷付いた。

 もしかして、儂、どうでもいい奴と思われてないか? い、いや、まさかな? あんな濃密なキスを交わしておいてそんな……まさか、釣った魚に餌はやらない性格だったのか!?

 ……そ、それはそれでアリかも……ゴクリ。


「ダーリン、その、なぜイチゴショートケーキを抱き上げておられるので……」


「へ? 抱き上げ……」


 気付いていなかったのか、ダーリンとイチゴショートケーキが互いに見合い現状を確認する。

 一瞬で顔を真っ赤にしていた。

 な、なんだその反応は!? い、いいい、一体何があったのだ? というか、何をヤったのだ!?


「ドラゴンには一人しか乗れないんです。二人乗るにはこうやって近づいてないといけないんですよ」


 泥棒猫がほざきおる。

 別のドラゴンに乗れば良いだけではないか。


「そ、それならダーリン、儂と一緒に……」


「いや、ヌェルにはぴったりの竜族を見つけておいたんだ。お前のリクエスト通りなんだからちゃんと乗ってくれよ」


 リクエスト通り?

 ふと、影が差した。

 儂の背後から何か巨大なモノが近づいてきたようだ。

 振りかえると、蛇腹が見えた。


 黒く艶やかに日の光を反射する漆黒に輝く竜鱗が蛇腹の左右に無数に生えている。

 儂好みの黒く艶光する身体である。やはり竜に乗るなら黒一択であろう?

 視線を上げると、真っ黒な竜が儂を覗きこんでいた。


『ヌェルティスというのは貴様か? 我を直々にご指名とはいい度胸だ。だが、先程の暗黒魔法は実に我好みであった。我が背に乗る事を許可しよう。さぁ、共に戦場を駆けようか』


 こ、黒竜……いいのか? 乗って、よいのか? よいのですかダーリン!!

 ダーリンが、儂の為に、儂だけの為に黒竜をテイムしてくれたというのか!

 やはりダーリンが儂を見捨てるはずがなかったのだ。儂のバカめ。

 ちゃんと儂へのプレゼントを用意してくれていたではないか。


 そうだ。ダーリンは女に優しいのだ。だからイチゴショートケーキが子供過ぎて過保護になっているだけに過ぎん。そうさ。そうに決まってる。

 ダーリンの妻となるのは儂なのだ。もっと広い心で他の女共が近寄ってくる事を認識せねばな。

 この程度で嫉妬している場合ではなかった。そんなことを思っている時間があるならもっとダーリンとラブラブになれる方法を考えねばな。


「聖様、どうぞ」


 感動に打ち震える儂の横で、ぶつぶつ呟いていた聖に声が掛かった。

 声をかけたのはこの国の女性で、メイド服を着ていた。

 確か、チョコバナナの部下になるのだったか?


「これは?」


 聖が渡されたのは鞍だった。ちゃんと踏ん張れるようにと足を固定する場所もある。

 ここの名前、なんだったかな? まぁよい、どうせ儂には一生関係ない言葉だ。

 決して思い出せないからではないぞ。

 ……ま、まぁ後でダーリンにでも聞いておくか。


「馬乗鞍と申します。馬の手綱や鐙もございますので動きが格段に良くなるかと」


「そのくらいは知っている。よくこの時代にあったなという感心で言ったのだ。これは貰ってもいいのか?」


「構いません。既に世に普及しているモノですので」


「では遠慮なく」


 龍華が先程儂にちょっかい掛けてきた馬、ユニコペガサスというらしい。に鞍を取りつける。


「あ、あの、その馬かなり変態なので、ドラゴンさんに乗った方がいいんじゃ?」


「名将、馬を選ばず。なに、救いようのない変態だろうが知能は高いのだろう。聞けばそこの竜が警戒中にイチゴショートケーキを拉致したそうではないか。それだけ知能があれば十分だ。こいつとてふざけていい場所とそうでない場所くらいは理解しているだろう。それに理解がなければ白い毛並みが赤くなるだけだ」


 と、ユニコペガサスに振り向く聖。「な?」と同意を得るように聞いているが、馬が理解できるわけ……龍華の顔を見た瞬間、ユニコペガサスが唐突に姿勢を正した。人間だったら突然【気を付け】の姿勢になったようなものだ。


 ふむ。何を見たのかは知らんが物凄い青い顔で首を振り子のように縦に振っておる。

 これなら暴走することもあるまい。

 アホみたいに従順になりおったな。


「さて、そろそろ行くか」


 鐙を装着した聖はユニコペガサスに飛び乗る。

 ユニコペガサスが女性に乗られてちょっと嬉しそうだ。

 ほんと、変態だなこの馬。


「では、薬藻、イチゴショートケーキ、ヌェルティス。留守は頼んだぞ」


 アイテムボックスからあの真っ赤な鎌を取りだし聖が頭上へ掲げる。

 聞いた話では、増渕が幾つか異空間型アイテムボックスを持っていたので一つ譲って貰ったのだとか。

 ダーリンがいいなあ。と呟いていたが、結局増渕から貰う機会は無かったみたいだ。

 後で貰っておいてダーリンにプレゼントするのもありかも。


 周囲から人を遠ざけると、聖は鎌を凄い勢いで旋回させた。

 凄い音がしておるぞ。なんだかそのまま浮き上がって飛んで行きそうだな。

 人間ヘリコプターだ。


「我が性はシャオ、名は龍華ロンファ、字は青龍シャロン! いざ、参る!」 


 ビシリと鎌を斜め下へと構え、片手で手綱を掴む。


「出陣ッ!」


 聖の掛け声と共にユニコペガサスが駆け出した。

 助走が付くと翼を広げ徐々に浮き上がる。

 ユニコペガサスは、悔しいがとても雄々しく空を飛んで行った。

 字はトト様が考えたキラキラネームです。

 こんな読み方普通はしません。

人物紹介(仮)


 武藤薬藻

   改造人間・フィエステリア・ピシシーダ

 ヌェルティス・フォン・フォルクスワーエン ≪田中ナナシ≫

   吸血鬼・真祖

 しゃお 龍華ろんふぁ

    不死者

 イチゴショートケーキ・フロンティア

   イシナキ村の大魔術師

 アグニ・アルカン・アトランテ

   赤竜王 

 ユニコペガサス

    薬藻のテイムモンスター・ドM


 部隊構成(仮)


  魔王軍

   第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅

   第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 残り1万8千

   第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万

   第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万

   第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約5千

   第六部隊 巨人部隊 約8千

   第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名


  フルテガント王国軍


   第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約1万名

   第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約千名

   魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約千名

   医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約八百名

   遊撃部隊テイムモンスター25名

   竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名


 魔王軍戦経過報告(仮)


 ・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。


 ・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に填める。


 ・魔法部隊による追い打ち。


 ・機動部隊壊滅。


 ・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。


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