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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十四話 そして最後に怪人が来る
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SS・帰ってきたF・T

「ねんねーん、ころーりよ~……」


 眠りに付く息子と娘、三人のお腹をゆっくりと叩きながら、儂は微笑みを浮かべて歌っていた。

 金色の髪を左右で纏めたツインテール。小柄ながらもいつ見ても可愛いよとダーリンに言われる美貌を持つ儂、ヌェルティス・フォン・フォルクスワーエンは今、ダーリンとのやや子を寝かしつけたところであった。


 ぴくり、耳が反応する。

 気のせいか? 否。そんなわけがない。儂がダーリンを間違えるわけがない。

 つい先日、行方不明の正義の味方が異世界に飛んだとのことで、探索していた勇者手塚至宝が戻って来たのだ。

 どうやら見付けたらしい。


 ただし、向こうでいろいろと面倒事に巻き込まれているそうで、仕方無く助っ人としてダーリンが向かってしまったのである。

 御蔭でダーリン成分が無さ過ぎて毎日が暇だ。

 ああ、子供はちゃんと生まれたぞ。三人目だ。

 さっさと正義の味方などぶっ殺して帰ってきてほしいモノだ。ン? ぶっ殺すではなく助けるのだったか? まぁどっちでもよい。儂は薬藻ニウムが不足中であるぞっ。


 そんな儂の耳に、聞こえたのだ。

 ダーリンの声を、聞き間違えるわけがない。

 赤ん坊が寝入っているのを確認し、儂は走りだす。


 石で造られた冷たい廊下を駆け抜ける。

 ツインテールが風の中を泳ぐように揺れる。

 女中やら兵士とすれ違いながら、儂はひたすらにエントランスへと駆けていく。


 ここはクラリシア城。石造りの西洋風の城内だ。

 悔しいことに正妻であるネリウ・クラリシアにダーリンが婿養子として結婚した形でこの城が家となり、側室の儂らが一緒に住んでいるという状態になっている。

 側室は一人一人が濃いキャラなうえに強力なので毎日修羅場であり楽しい日々なのだ。ダーリンを確保するだけでも一苦労なのである。

 だから、絶対に一番乗りでダーリンに抱きつく。儂が一番であるということをダーリンに刻み込んでやるのだ。


 エントランスに掛け込む。

 ちぃっ、イチゴの奴と美音奈の奴が既に来ておった。

 割り込むように押しのけ弾き飛ばしてやる。

 赤い髪に小柄な体。マスクメロンを胸に取りつけたような女と共に戻ってきた少し冴えない感じのする男に、近づいて行く。

 息を切らし駆け抜ける儂に気付いたのだろう。

 顔を上げたダーリンは驚いた顔をこちらに向ける。


「ダッアリィィィン――――ッ!!」


 飛び込んだ儂を思わず抱きとめくるりと回るダーリン。

 彼が何かするより早く思い切り抱きしめ顔をうずめてくんかくんか。

 ダーリン臭が鼻腔に広がり安堵感が押し寄せる。

 ああ。ダーリン最高。


「待っておったぞダーリンっ」


「悪い悪い、ちょっとややこしいことになっててさ。今帰った」


 悪びれた様子はなく、告げるダーリン。そこがまたいい。

 というか、後ろに二人程見知らぬ女が居るのだが、何だこいつ等?

 両方黒髪の女だ。一人はアイヌ民族に似た衣装を来た小娘で、もう一人はセーラー服に西洋鎧を着込んだ女。少し前の手塚か萌葱のパクリか?

 まぁよい、どうせどこかでコマした新しい側室だろう。


「ヌェル、イチゴ、美音奈、紹介するよ、向こうの世界からきたチキサニと稀良螺だ、二人は……」


「まぁ、いい、許す。側室候補であろう。ちゃんと帰ってきたなら問題無いから。それよりダーリン、ついに生まれたぞ、息子だ。男だ。次男だっ。毒舌魔法使いどもは儂には種族違うから生まれんとか言っとったがちゃんと三人目も生まれたぞ。こっちだ。見るがいい!」


 喜び勇み、ダーリンから離れた儂はダーリンの手を引こうと手を差し出す。その刹那、パァッと足元が光り輝いた。

 あれ? と不思議そうに自分の真下を見る。


「おりょ? これはもしや、次は儂が呼ばれるのか」


「あー。そうみたいだな。行ってらっしゃい」


「そりゃないぞ、今日は儂と濃密なラブラブタイムが、ああ、ちょ、何だこの術式、力が封じられて……ええい、ふざけんな、抵抗してくれるわ! 今から儂はダーリンとぉぉ……」


「あーその、できるだけ早く迎えに行くな」


「頼むぞ。待っておるからな。本当に待っておるからなダーリンっ。愛しているぞ――――っ……」




 そんな言葉を残し、少女が消えた。

 魔法陣は盛大に輝き少女を押し隠し、少女だけを諸共に消失した。


「はぁ、次はトラブル娘の捜索か……」


 武藤薬藻の溜息だけが、その場に残される。


「姦しいコシマツだったな」


「チキサニ、そういうこと言わないの」


「だって、突然出て来て突然消えたぞ稀良螺、意味不明コリメノコだ」


「いや、まぁ、確かに嵐のようではあったけど……」


「薬藻ニシパ」


「ん? どうしたチキサニ?」


「オソマ行きたい。オソマオソマ! クアニ漏れるっ」


「オ・ソ・マ言わないぃっ」


 チキサニの頬を両手で抓る稀良螺。随分と仲が良いらしい。

 チキサニと稀良螺、と紹介された二人のやりとりを見て、イチゴも美音奈も確信する。

 また、濃い奴らが増えたな……と。

お久しぶりです。完結作品なのですが、新作のご紹介のため追加作品を作りました。


この話の続きが下記作品にて連載始まります。よろしければご閲覧ください(^^ゞ

俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件EX

https://book1.adouzi.eu.org/n4181eh/


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