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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十四話 そして最後に怪人が来る
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後日談異世界編1

 とある世界の一角で、男が一人、危機に陥っていた。

 黒い布で目を覆われ、両手は後ろで柱に縛られ、胡坐状態にさせられている。

 暗い部屋の一室は埃っぽくて、男は逃げることすらできずに監禁されていた。


「……おかしい。ここはどこだ? どうなってんだ? 昨日はネリウに襲われかけて炎野に助けられて普通に寝たはずで……」


「あは。目覚めた薬藻くん♪」


 武藤薬藻は聞き覚えのある声に顔を上げた。

 目を覆う布のせいで顔は見えないが、そこに存在を感じた。

 その声は聞き間違いはないだろう。知り合いの、というか自分を求める女性の一人だ。


「瑪瑙?」


「ふふふ。ごめんね薬藻くん。好き過ぎて思わず拉致しちゃった」


「いや、拉致って。お前、なんでこんなこと」


「だって好きなんだもん。好きだけど全然構ってくれないし、薬藻くん人気だし、一人一人過ごす日とか決めてもネリウさんが二日に一辺とかよくわからないこと言いだして結局御破算になってるし。皆好きなように動くんだったら、私も遠慮する意味ないかなぁーって。好きだよ薬藻くん。うん。好き。大好き」


 耳元に吐息が近づく。

 普通に言い寄られたなら思わず赤面してしまうだろう。

 瑪瑙だって可愛いし、自分に好意を向けてくれているのだ。薬藻としても無碍に扱う気はない。

 でも……


「ふふふ。好き。好きだよ薬藻くん。好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き。このまま一緒に死ぬのも、いいくらい」


 ヤンデレさんは御免だった。


「そうだよ。ネリウさんなんかに遠慮する必要無いよね。好きなら奪い取ればいい。一生自分だけのモノにしちゃえばいいよね? よね? もしも手に入らないなら薬藻くん殺して魂だけでも私のものに、あは。それいいかも。魂貰っちゃうのありだよね。うん、大切にするね。ずっと、ずっと大切にするから薬藻くん」


 えへへ。とはにかむヤンデレさん。

 まさかの生命の危機だ。

 なんとか逃げ出したいところだが腕を縛る縄がとてもキツい。

 自力で逃げ出すのはムリだろう。


「ふふ。あ、でも死ぬ時の顔はみたいなぁ。ちょっと待ってね」


 ふわりと女の子の匂いが鼻孔をくすぐる。

 こんな時なのにちょっと嬉しかったりする自分が憎い薬藻だった。

 黒い布が取り去られ、視界に瑪瑙の胸元がドアップになった。


「ふふ。薬藻くんも期待してる? いいよ。顔を見合いながら殺してあげる。薬藻くんの逝く顔みせてね。えへへ」


 巨大な鎌を振り被る。

 殺される。


「そこまでだぁ――――っ」


 ドアが蹴り破られ光が差し込んだ。

 はっと振り向く瑪瑙にヌェルの飛び蹴りが炸裂。

 薬藻の頬数センチの場所を鎌の刃先が突き刺さった。


「痛ったぁ。もぅ、なにするかな! かな!」


「お黙りゃ! ダーリンを拉致するとは何事だ阿呆! 朝部屋に突撃したら誰もおらんかったから焦ったわ!」


「ヌェル、早過ぎ! 見つけたわよ瑪瑙。やっぱり暴走してたわね」


 女性陣が我先にと部屋に入ってくる。

 そしていつものように闘いが始まった。

 普通の女性ならただのキャットファイトで済んだだろうに、このメンツが揃うと炎が飛び交い、闇魔法が放たれ、鎌が空を薙ぐ。

 普通にはあり得ない闘いに、小さな小屋が耐えられるはずもなかった。


 みしみしと聞こえる小屋に、自分の末路を否応なく想像させられる。

 自分を繋ぐ柱がびきびきとヒビ割れる。

 家屋がベギンと音を立て軋む。


「薬藻くん、いっつも大変だねぇ」


 苦笑いで近づいて来た美音奈がナイフで縄を切る。随分と脱走補助が手慣れたようだ。

 いつものように美音奈により救出された薬藻は皆が暴れている隙に二人で脱出する。

 薬藻達が小屋から脱出すると、そこは森に囲まれた小さな掘立小屋だった。

 そんな小屋が、彼らの目の前で音を立てて崩れて行く。


「あー……やっちゃった」


「ほんと、いつもいつも同じようなことしてて飽きないよね皆。薬藻くんも大変だね」


「悪いな美音奈。いつもいつも血を貰って」


「ボクがいなきゃホント、既に何回死んでるんだろうね薬藻くん」


 あはは。と苦笑いで済ます美音奈だが、薬藻は既に何度も死に掛けというか、魔法の巻き添え等で殺されている。

 美音奈の血を貰っていなければとっくの昔に亡き者にされていたことだろう。

 しかも、どうせ生き返ると思っているためか最近の薬藻の扱いが女性陣は雑になりだしているのだ。どうにかしないと本当にいつか殺される。


「そうだねー……薬藻くん、いっそ二人でどっか静かな異世界とか行っちゃう? 手塚さん引き込めば多分三人になるけどここまで酷いことにはならないと思うよ」


「イチゴも巻き添えにしとかないとあいつら絶対辿り付いて来るぞ。ネリウは単独でも異世界飛べるし……はぁ、まぁ自分で選んだ道だから逃げる気はないけどさ、もうちょっと俺に優しくしてほしいよ」


「ほんとだねぇ」


 木々を薙ぎ倒し乱闘を続ける女性陣を見ながら、美音奈と二人、空を見上げる薬藻だった。

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