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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十四話 そして最後に怪人が来る
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後日談地球編2

「はぁ……何でこんな状況に」


 天界に戻って来た天使たちは、役職に応じた仕事を始めていた。

 しかし天界に残存する天使の数があまりにも少ない。

 あまり気味だったはずの天使見習いを全て動員しても自転車操業すらできない状況である。


 四大天使長も消え、最高位天使たちも次々と消えた天界では、最上位存在がハニエルという天使に任されていた。

 ハニエルは決裁書類に判を押しながら呟く。しかし、誰もその声に答えてはくれない。


「ハニエル様ー、追加でーす」


「フローシュ、ちょっと手伝ってぇ」


 自分の背丈よりも高い書類の束を持って来た金髪天使に泣き言を告げる。

 しかし、フローシュと呼ばれた天使は書類をハニエルのデスクにどんと置くだけで首を振る。


「ムリです。そもそもほぼほぼ新人天使の私に大天使長の代わりとか押し付けないでください。前代未聞ですよ」


「そりゃこっちの台詞っ。神様も大天使の殆ども消滅とか前代未聞だっちゅーの。魔王共は地球への浸食止めて魔界に帰るらしいから力天使の殆ども哨戒任務に数百体回せばいいだけなんだけどぉ。死神部門すら手が回ってないし、どこも手が足りないのよっ、誰か知り合い連れて来てっ」


「小影さんでよければ」


「そんな金はないっ」


「ハニエル様、オルタナエル様を戻しては?」


「先日から何度も呼んでるっつーの。あ、オルタナエルで思い出した。テナちゃんもついでに呼んで来て。あとラドゥエリエルに早く新しい天使見習い産んでって催促よろ。ピスティス・ソフィアとか再誕してない? してたら同時進行で新しい天使産んどいてって言っといて」


 高速で判を押しながらハニエルが告げる。

 フローシュは溜息を吐きながら神殿を後にする。

 神殿を出ると綺麗な花畑で出来た草原が広がる。

 天界に昼夜はない。そして草原地帯を越えると崖になっている。

 無数の浮島からなる天界は、幾つかゲートが存在し、任意の場所に出る事も出来るが、羽があるの大抵の天使は自分の羽を使って飛翔し、目的地に向かう。


 方向音痴などという天使は天使になる前に弾かれ転生の海へと返されるからだ。

 しかし、ヒストブルグの事件以降、迷子になっている天使見習いが沢山散見される。

 少し前は彼らと同じ場所に居たんだなぁ、と懐かしく思いながらフローシュは純白の翼を広げる。


 天使の数はあまりにも少なくなり過ぎた。

 通常業務すらも支障をきたす程に。

 だから各部署天使見習いをしっかりと教え込み、まだ天使になっていないのに過酷な労働場所へと放り込んでいる。


 ラドゥエリエルが必死に新たな天使達を産みだし、そこから大天使の知識を持つ天使達が生まれるのを期待しているのだが、さすがに直ぐに舞い戻る天使は居ないようだった。

 フローシュは地上へのゲートに向かう。


「って、ちょっと待った!」


 丁度ゲートに向おうとする天使見習いを見付けて思わず肩を掴んで押し止める。


「ひゃ、なんですお?」


「それはこっちの台詞です。貴女はどこに行く気ですか!」


「伝達を頼まれましたお。まだ空を飛べないのでここから権天使長のもとへ向うんだお」


「こっちは人間界行きルートです。許可なく天使見習いが行かないでください。全く、普段は居るはずの天使兵は何をしてるんですか」


「ソレを権天使の空いた人に割り振る指令ですお」


 伝えに行く奴が人間界に出るという失態作ってどうする。

 フローシュは溜息を吐いて見習い天使の向きを変える。


「見てください、あちらのゲートが権天使の園へ向うワープゲートです」


「お?」


 だめだ。あまり分かって無さそうな顔をしている。

 フローシュは思わず溜息を吐く。

 何故だろう。昔の自分を見ている気がしてしまう。


「あなた、名前は?」


「リュミエルだお」


「そう、じゃあリュミエル。一緒に行ってあげるから、ちゃんとルートを覚えない」


 リュミエルを連れだって権天使の園へと向かう。

 なぜか途中で別方向に向おうとするリュミエルの動きを阻害し、正解のルートへと導くのにとても骨が折れた。


 ハニエルたちも自分を天使に引き上げる時はこんな苦労があったのだろうか?

 ふと思い立つフローシュは、隣を歩くリュミエルを見る。

 何も考えていないような能天気な顔をして、「おっ、おっ、お~っ」と楽しげに謎の声を出している。頭の中はお花畑で一杯らしい。赤髪の綺麗な天使見習いだ。


「これも、何かの縁なのでしょうね」


「おぅ?」


「この仕事が終わった後は仕事はありますか?」


「ないですお。ただ、権天使様方からの指令があればそちらに向かうですお」


「そう。なら丁度良いですね。リュミエル、私の仕事を手伝ってください。人間界に向うので付き人をお願い致します」


「に、人間界ですお!? よ、喜んで!」


 謎の使命感が湧き上がった。

 フローシュはこの天使見習いを自分が育てよう。自分が教わった全てを彼女に教え込もう。

 彼女の望みなど知った事かと、必ず教え込むことを肝に銘じるのだった。

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