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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十四話 そして最後に怪人が来る
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出席番号24・武藤(むとう) 薬藻(やくも)

「ガァァ――――――――――ッ!?」


 地面に突き刺さったダンガー。

 ナーガラスタは痛みに呻きながらも身を起こす。

 腹のど真ん中をダンガーが突き刺さったままになっていた。


「桃栗ぃぃぃッ!!」


 血走った目で走りだす。

 もはや誰も彼もを無視していた。

 クラスメイト達からの攻撃を喰らいながらも全力を振り絞って走る。


 凄い執念だな。

 下田や龍華師匠、断罪者の二人に至宝まで接近戦を行いだしたのにそれを押しのけ前に出る。

 桃栗への怨念が凄まじい狂気と化してナーガラスタを突き動かしている。

 虐げられたものの意地が見えた気がした。


「行くでもみりん!」


「お戯れが過ぎます姫!」


 イモータルソードを手にナーガラスタへと走る松下となんとか太刀を手にして並走する網走。

 その中央を駆け抜けるナーガラスタに二人同時に剣を振るった。

 ナーガラスタは両腕を犠牲にして突破。


 矢沢さんが決死の表情で弓を構える。

 叫びながら一射、ナーガラスタは止まらない。

 二射、三射と連続して打ち出すが、ナーガラスタとの距離はどんどん縮まっていく。

 ナーガラスタの体表面に無数の矢が突き立つ。


「どぉぉぉけぇぇぇぇッ!」


 矢沢さんを体当たりで吹き飛ばし、クラシカの無効之拡盾を蹴りで破壊する。

 あの結界、物理で破壊できるのか!?

 くそっ、直ぐ止まると思って見逃すんじゃなかった。

 ここからだと間に合わない。


「ナーガラスタ……」


「ハァ、ハァ……桃栗……」


「余程あたしが憎いのね……そこまで恨まれるとは思ってなかったけど……」


「お前らみたいなのは皆そういう。初めは小さなことだった。子供のイジメだ。その程度大人になりゃ忘れられるだろうさ。エスカレートしなきゃなぁっ」


 お、おいおい、桃栗イジメッ子だったのか!? 


「あ、アレだよほら、可愛さ余って憎さ百倍っての? 可愛い弟みたいなのをちょっと弄ってあげたかったというか」


 やっぱあいつが一番の元凶じゃねぇか!?


「ふざけるな桃栗ッ、僕が、僕がどれだけ。クソがァ!」


 ナーガラスタの口に光が集まる。

 至近距離からの破壊光線。

 女神であろうとも軽く死ねる致死の一撃が放たれようとしたその瞬間。


 ピシュン。ナーガラスタの額に小さな穴が穿たれた。

 呆然とした顔のまま傾ぐナーガラスタ。

 後頭部から倒れる彼に、ようやく俺が間に合った。


 今のは多分、御影の狙撃だ。

 ニヒルに笑みを浮かべるアイツの顔がなんとなく予想できる。

 俺は手にした神殺しの槍をナーガラスタへと押しつける。

 背中から突き刺さる槍の感触に、ナーガラスタの首がこちらに向いた。


「む、とぅ?」


「悪いなナーガラスタ。お前の想いがどれ程のものか知らないけど、この地球を巻き込んでまでやらせるわけにはいかないんだ。だから。見てんだろ相棒ッ、扉を開け! お前に親友プレゼントだ!」


 槍を突き出す。

 ナーガラスタが押し出されるように前に出る。その先に、

 バクリ、世界が裂けて暗黒が顔を覗かせた。


「何を、何をする気だ武藤っ!?」


「この槍は神殺しってより神封印の槍らしいぜナーガラスタ。そう、桃栗の能力封印したのと同じ奴だ。つまり、テメェはただの怪人だ」


 世界の裂け目にナーガラスタを押しつける。

 咄嗟に裂け目の縁を両足引っ掛け抵抗するナーガラスタ。

 ふざけるなとばかりに俺を見る。


 確かに、お前の恨みは晴れないかもしれない。でも、それはお前の想いを分かってやれる奴がいなかったからじゃないのか? たった一人でいい。その鬱屈した恨みつらみを全部吐き出してみろ。

 お前よりももっとずっと辛い思いを味わった孤独の親友にッ。


 抵抗するナーガラスタに、次元の裂け目より黒い靄が現れナーガラスタを拘束する。

 「なんだこれはっ!?」と焦るナーガラスタは、凶悪な力で裂け目の内部へと消え去った。

 ゆっくりと閉じて行く裂け目に、俺は最後の言葉を告げる。


「親友。最後の仕事だ。分かってるよな」


「まかせてくれ親友。我が愛しき眷族よ」


 最後に彼の声が聞こえ、世界の裂け目が消え去った。

 残っていた小さな亀裂も消え去った時、呆然と一人、また一人とクラスメイト達が座り込む。

 皆満身創痍だ。持てる全力を使い切り、もはや負けられないという気力だけで戦っていたようで、龍華師匠でさえ鎌を支えに息を吐いて休んでいる。


「あー、その、薬藻。終わった……ンだよな?」


「ああ。ナーガラスタの能力は封印した。おそらく百年以上能力封印されたはずだ。その頃にゃ俺らの半数も生きてねぇだろ。後は女神様たち上位存在の問題だ」


「いいのかよ、生かしたままで? アイツ、絶対に諦めねぇぞ?」


「そんときゃ知るか。百年後なんざ俺らは殆ど生きちゃいねぇし。桃栗が個人で決着付けることだ。それに、俺にとっちゃクラスメイトで……友人だからな」


 正直、俺とナーガラスタの因縁といえば殆ど無かったりする。

 だってアイツの目標は桃栗だったし、一連の元凶も桃栗発信だったし。むしろ被害者だったんじゃないかとすら思えて来るんだ。このままあいつを殺すってのはなんか、可哀想な気がしてさ。

 だったら、エスカンダリオと出会っただけで小躍りしていた程に友達に飢えてる奴の相手して貰ってた方がいいかなって思ったんだ。

 それにあいつなら……悪いようにはしないと思うし。


「はぁ、今回ばっかは生きた心地しなかったわ」


 桃栗も縫合を終えた脇に手をやりながら立ち上がる。

 矢沢さんに支えられてゆっくりと歩き出す。

 自然、何故か俺のもとへと皆が集まり始めていた。

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