出席番号19・福田(ふくだ) 瑪瑙(めのう)
くやしい。
なにがくやしいかって?
他人に配慮せず薬藻くんにも遠慮せず、小さな体でダイレクトアタックして抱きついているヌェルちゃんが羨ましい。
私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。私もしたい。……そうだ。この闘いが終わったら、薬藻くんを監禁しよう。
「瑪瑙、行くよ」
「はぅっ!? 了解だよカトラちゃん!」
思考の海に埋没しかけた私を拾い上げたカトラちゃんが走る。
巨大化を始めたナーガラスタに一撃、二撃、さらに至宝ちゃんの斬鉄。しかしすぐに回復するナーガラスタは東京タワー並みに巨大化してしまう。
首も九つに分かれてるし。
「でっか」
「ダーリン、アレ二回目だぞ。さっきまでナーガラスタの反存在があんな感じだったのだ」
ふと気付けば、直ぐ横に薬藻君がいた。
思わず抱き付きたくなるけど我慢我慢。今はまだ敵がいるんだから。
コキュートスを構えながらもじりじりと薬藻くんとの距離を詰める。
「コラ瑪瑙、何してんの!」
「い、今行くよカトラちゃん! 薬藻くん、あとで話したいことあるから時間取ってほしいの、その、二人きりで!」
「え? あ、ああ……」
「ちょ、コラそこの悪魔、ダーリン殺そうとしてたくせに二人で会うとかさせると思うなっ!」
「だったらカトラちゃんと一緒でもいいから、お願いします」
お辞儀を行い私が来ないことに叫ぶカトラちゃんの後を追う。
とにかく、命狙ってごめんなさいって謝らないと。告白とかそういうのはその後だ。
大丈夫、私どんなに嫌がられても諦めないから。最悪魂だけでももらうからっ。
身震いする薬藻君を一度だけチラ見して、私はカトラちゃんと交差するようにしてナーガラスタに斬り込む。
「我が手に贖罪の力を! 集まれエーテリオン! 宿れマウィオング!」
「我が手に断罪の力を。集まれダークマター。宿れコキュートス!」
「不可避の炎咬」
「逢う魔が時の絶叫」
さらに上空から光の槍を手にした魔法少女が、地上から無数の尾を持つ子狐が走る。
「ダムドライアッ!」
「にょほほ、そろそろ全員集結するぞナーガラスタ。魔王共ももう終わりじゃ」
ナーガラスタは怪獣としか思えない悲鳴をとどろかす。
巨体をずりずりと動かし桃栗へと迫りながら、無数の攻撃を受けて大絶叫。
なのに着実に距離を詰めて行く。
「あの野郎。意地でも桃栗を殺すつもりか!?」
「手塚さん、大技ブチ当てて行くしかないんじゃないかなアレ」
「そりゃそうかもしれんが、あたしらが必殺しようとすると妨害がやんじまうぞ?」
事実、手塚さんの攻撃が一番ナーガラスタを後方に下がらせている。
でも、結局相手の距離を詰める動きの方が早い。
この妨害を止めてしまうと他のクラスメイトも攻撃がし辛くなり、ナーガラスタの移動がさらに上がってしまう。
「桃栗移動させるのはダメなのか?」
「ダメです勇者様。女神様の傷を治せない以上、下手に動かすと致命傷になりかねません!」
「面倒臭ぇ……」
舌打ちしながらナーガラスタに斬りかかる勇者、元魔王が魔法で援護し、魔法少女と超能力者が重力圧でナーガラスタを押し潰す。
「伝説の大地の悪夢の記憶!」
吸血鬼が真正面から動きを遅めようと魔法で迎撃し、救世主が矢を射る。
天使が光の矢を、魔法使いが三連の雷を、王女が水の丸ノコを発動する。
陸軍将校が指示を出し、不死者と暗殺者が左右からナーガラスタを破壊する。
「すまん、遅くなった。桃栗の傷を見せろ」
機械兵を引き連れた闇医者がマロンちゃんのもとへとやって来て手術を開始する。
回復魔法の意味が無くても傷を縫合するのはできるだろうと、彼女にとっては一番必要な人材が、幸運にも間に合った。
幸運少女や怪盗少女、サンタクロースたちが見守る中、女神の治療が始まっている。
「皆、皆の意思が分かりやすいようにパス繋いでるから、毅っち指示お願い」
「分かっている。全員頼む。ここでナーガラスタを倒すぞ!」
無数の頭から破壊光線。
飛び退き障壁で防御して瞬間移動で回避する。
クラスメイト達は突然の光線攻撃にも普通に対処して、即座に攻撃を再開する。
「放て!」
日本くんの言葉に遠方から光が走った。
ナーガラスタに直撃して悲鳴が上がる。
何が起こったかと見れば、半妖少女が一つ目少女抱えていた。
私の視線に気付いて親指を立てる。
人魚の歌も場の空気を読んだのかノリの良いアニメソングになっている。
この曲聞くとやる気になってくるのがなぁ。ちょっと複雑。
よし、気合い入れよう。私この闘いに勝利して、薬藻くんを逆レイプするんだっ。




