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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十四話 そして最後に怪人が来る
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出席番号5・犬神(いぬがみ) 三太(さんた)

「じゃあ。ちょっと遅くなったけど先に出てくれ」


「了解なんだな師匠」


 ぼくちんとヨルゥイエルと師匠は黒しかない世界にまだ居たんだな。

 エスカンダリオを友達召喚したラスト神の御蔭で、現状を知ってしまったのでエスカンダリオに向こうがどうなっているか聞かされていたんだな。


「しかし、首領が死んだ……か、信じられないけど、そういう世界になってると思わないとダメか」


「とりあえず、敵の親玉が出てきているのなら話は早いですよ。やっちゃいましょう!」


 ヨルゥイエルが咆えるが、その親玉が面倒だから困ってるんだな。

 仮にも上位存在らしいし。


「そうだねぇ。あ、そうだ。これをあげよう薬藻君」


「なんですコレ?」


「アザトース殴ってたら欠けた爪、とかで作ったやつ。呪い付きだけど使用者には問題ないから遠慮なく使っておくれ」


 ラストが持って来たのは短剣だ。扱い間違えたら大変そうなんだな。

 呪い付きとかいうけど、アザトースの呪いかぁ……普通の人が使ったら確実SAN値爆散なんだな。

 ナーガラスタに効くんだろうか?


「うっし、んじゃぁ出る……あれ? なぁ犬神、そこに居たトナカイどこ行った?」


「ん? な、なんだなっ!? 一匹消えてるんだな!」


 ま、まぁ一匹でも居てくれれば問題無く引けるから橇使えるんだけど、ちょっとショックなんだな。

 あれ、レンタルトナカイだから無くしたら罰金が。

 うぅ、ぼくちんのMPマネーポイントがぶっ飛びあぼあーっ。なんだな!?


 泣きそうになりながらも荷物を橇に乗せ、ヨルゥイエルを後ろに乗せる。

 トナカイのケツをパシンと叩き、背後の師匠を見た。

 師匠は一緒に出て来ないらしい。


「師匠、本当にぼくちんたちが先でいいんだな?」


「ああ、一緒に行くのもいいけど、ラスト神がそうしてくれって言ってるしな。なぁに、お前の後に直ぐ出て行くから気にすんな」


「了解なんだな! ぼくちんが露払いしちゃうんだな!」


 手綱をぱしんを打つ、トナカイが走りだすとともにラスト神が時空の狭間を切り裂く。

 闇しかない世界から、月明かり差し込む世界へとサンタが走りだす。

 シャンシャンシャンと鈴の音を響かせ、良い子に夢を届けるために闇夜を駆ける。


 外に出たその瞬間、ぼくちんはあまりの状況に慌てて橇を走らせたんだな。

 まさか目の前にリテルラたんが居て、ナーガラスタの一撃が頭上から放たれるところだったんだからっ。

 もはや無我夢中でトナカイのケツを教鞭で叩き、リテルラたんを掻っ攫う。

 ついでに一緒に居た女を橇の中に転がす。


 ヨルゥイエルも緊急事態に気付いて神聖技で結界を張り巡らせる。

 しかし、所詮は下っ端天使。上位存在の一撃を耐えきれるはずもない。

 ぼくちんはプレゼント袋に手を突っ込み、放り投げる。


 出てきたのは運がいいことに結界生成機だ。どこのどんな用途で使われているどれ程強力な存在かはわからない。でも幸運が味方したように発動した結界がナーガラスタの一撃を受け止める。

 橇が移動すると結界も移動するのでこの橇自体を結界が包んでいるんだろう。

 欲しかった結界が丁度良いタイミングで発動してくれてラッキーだったんだな。


 もしかして、ぼくちん今超幸運になってたりするんだな?

 腕の中にはリテルラたんがいるし、こ、これはもう、告白タイミング!?

 い、いかん、柄にも無く緊張して来たんだな。


「あ、あの、り、りて、りて……」


 ぼくちんが勇気を振り絞って声を出そうとした時だった。

 ナーガラスタを雷撃が襲う。

 悲鳴をあげたナーガラスタに、見知った女どもが突撃したんだな。


 危険地帯を駆け抜けられたので手綱で知らせてトナカイの速度を緩め、ゆっくりと桃栗の近くに着地させたんだな。

 ほれ、さっさと降りろヨルゥイエル。それと綾嶺。

 この橇はリテルラたん専用なんだな!


「よ、よかった。私達生きてマス!」


「私、生きてる。生き残ってるっ。それに……」


 あ、待って、リテルラたんはここに居ていいんだな。降りる必要ないんだなっ!


「なかなかヤルではないですか三太殿。貴方の男気に感服いたしました」


 だから、なぜお前が残るんだなヨルゥイエルっ!?

 こ、こら、寄るな、ひっつくな。なんだなーっ!?


「来た」


 少し離れたところに居たイチゴショートケーキだっけ? がぼくちんたちを守るようにやって来てナーガラスタを睨む。

 必殺の一撃を叩きつけた手塚、武田、福田の三人も、吹き飛ばされた場所から起き上がった聖も下田も八神も坂崎も増渕も、他のクラスメイトたちも魔王も天使も機械兵すらも、動きを止めてソレを見た。


 世界に亀裂が、開いていた。

 たった一つ、縦に避けた亀裂を、巨大な両手が内側から現れ掴み取る。

 ぐぐっと力を入れて亀裂が押し開かれる。


 世界が悲鳴をあげた。

 今までの比ではない致命的な悲鳴に聞こえる。その存在の出現を、世界が認めないと、戻って来るなと悲鳴を上げる。

 知らず、その世界に生きる全てが言い知れない震えを感じた。


 地獄が来る。

 地獄の底から奴が来る。

 ひたり、ひたりと名状しがたきモノが来る。

 知らず、ナーガラスタが地上に降り、震える全身に戸惑いを隠せないでいた。


 次元の隙間から、暗黒しかない世界から、ゆっくりと。

 アザトースの開いた穴からそれがやってくる。

 死んだはずの亡者が、神をも引きずり込む闇の福音が。地獄の底より現れる。

 その悪夢の名は、地獄の細胞。又の名を……怪人フィエステリア・ピシシーダ。

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