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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十三話 幸運少女はいつでも幸運です
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出席番号3・綾嶺(あやみね) 麁羅(あらら)

「GAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――ッ!!?」


 ナーガラスタから悲鳴とも呼べない咆哮が響いた。

 よし、上位存在の血を吸った御蔭だろうか、ヌェルさんの攻撃が通った!

 間髪入れずに回復しながら聖さんが走り寄る。


「逆鱗乱舞ッ」

八重閃光弾マルチプル・ミサイル

「月下暗殺拳・斬空殺ザンクウサツ月面落刺ゲツメンオトシッ」


「クソ……があぁあぁあぁあッ!!」


 同時攻撃をぎりぎりで弾く。上空から踵落としを行う下田さんを腕で叩き落とし、増渕さんに破壊光線。斬撃放つ聖さんを尻尾で穿ち、ヌェルさんへと拳が打ち込まれた。

 丁度連撃を出し終えたヌェルさんは無防備に頭に食らい地面に陥没した。

 下田さんが弾き飛ばされ八神さんが受け止める。

 増渕さんの後ろに瞬間転移した坂崎くんが増渕さんを御姫様抱っこして瞬間転移。


 聖さんはふっ飛ばされたけど自力で態勢整え走りだす。

 ここだ!

 私は先程まで空気になって待機していたリテルラさん共々姿を現しダグダのこん棒をナーガラスタに突きだした。


「なんっ!?」


 技後硬直。全ての動きを終えたナーガラスタの無防備な脊中を思い切りかき混ぜる。

 神の能力を何とかできるモノは持ってないけれど、空気と混ぜればナーガラスタは動けない。

 そこに、矢沢さんが矢を番え、ナーガラスタに狙いを定める。


「消え去れッ、ナーガラスタッ!!」


 神を殺す一矢が走る。

 皆が願った。消えてください、ナーガラスタさんって。

 もう、こんな辛い闘いは御免だ。

 私が幸運だって言うのなら、いつでもツイているっていうのなら、お願い、もう悲しい結末に繋がらないでッ!


 思いのこもった一矢がナーガラスタに突き刺さる、その刹那。

 ズルリ、ナーガラスタが二つに割れて、ナーガラスタが飛び出した。

 いや、何を言ってるのって感じだけど、あれ、えーっと、そう、脱皮だ。

 ナーガラスタが皮を脱ぎ去り上空に飛び上がったのだ。


 意味が分からずあっけに取られて空を見る。

 渾身の一矢はナーガラスタに当ることなく、リテルラさんの前を通りすぎ地面に突き刺さった。

 上空に逃れたナーガラスタは両手を真下に向ける。


「邪魔なんだよテメェらァッ!!」


 掌から周囲へと赤き光が飛んで来る。

 咄嗟に飛び退く聖さん。起き上がったヌェルさんも慌てて脱走。

 矢沢さんは桃栗さんを庇い光の盾でなんとか防ぎ、遅参したクラシカさんが無効之拡盾で防壁を重ねがけする。


 でも、私とリテルラさんは違った。

 目の前に迫り来る赤き光を避け切れない。

 これ、回避不能!?


 う、嘘だよね? ねぇ、私幸運なんじゃ無かったの?

 リテルラさん足速いんだよね、走ろう、走ったら運良く逃げ切れるかも……

 だめだ。もう目前に迫ってる。

 今から走ったところで背中から光を受けるだけだ。


 迫る光に目を見開いて怯える私達。

 やっぱり参戦するんじゃ無かった。私たちじゃ敵わないの分かってたことじゃない。

 恐ろしくて思わず目を瞑る。

 百乃ちゃん、助け……――――ビキリ、私達の直ぐ目の前で、世界が裂けた。


「なんっ、だなぁ――――――――ッ!!!」


 ……

 …………

 ……………………

 ……………………?


 あれ? 私、生きてる?

 恐る恐る目を開く。

 目の前に、空があった。

 月明かりに照らされた夜空には、無数の星が瞬いている。


 音が鳴っていた。

 シャンシャンシャンと、ベルの音が鳴っていた。

 身を起こす。目の前には赤い服を着た男。

 リテルラさんを抱き抱え、太った男が手綱を振るう。

 たった一匹のトナカイが必死に走り、頭上に神聖防壁を張り続ける一人の天使が私の後ろに居た。


 ソリだ。私は今、橇に乗っている。

 目の前に居るのはサンタクロースの姿を持つクラスメイト、既に死んだと思われていた男だった。

 リテルラさんが目を見開いて彼を見上げる。


「犬神……サン?」


「もう、もう大丈夫なんだなッ。ぼくちんが来たからには、リテルラたんはこの命を賭けて守り切るんだなっ!」


 袋を取り出し、そこから爆弾を取りだすとナーガラスタに投げつける。

 連続投擲される犬神さんの攻撃に、ナーガラスタがまた悔しげに咆えた。

 そして、彼が犬神さんに気を取られた隙に、ナーガラスタに突撃する新たな影。

 走る影は三つ、そして少し離れた場所にもう一人。杖を構えた少女が魔法を紡ぎ出す。


「トリプルマジック、ライトニングライトニングライトニング!」


「何だとぉッ!!?」


 突然襲いかかって来た雷撃に驚くナーガラスタ。そこへ、


即死の鎌ソル・スラッシュ!」

揺らめく焔犬の爪フランヴェルジュ・スラッシュ!」

「乱れ雪月花」


 三人のクラスメイトたちが攻撃を繰り出した。

 ああ、やっぱり、やっぱり私、幸運だ。

 それに、ああ、それに……来てくれた。最高の幸運が、来てくれたッ!


 橇が向うその先で、次元の裂け目が開き始めていた。彼が……来る。

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