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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十三話 幸運少女はいつでも幸運です
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出席番号23・三か……アンゴルモア

「クソ……効かないか」


 ナーガラスタに責任転嫁スキルを使うが、上手く作動した感じがしない。

 どうやらあの野郎も不幸との付き合い方を学んでしまったらしい。面倒なことになったモノだ。

 反存在はその特性のせいで不幸が幸福へと変換されるために厄介だが、こっちのナーガラスタも厄介度で言えば大差ない。


 しかも奴を何とかすべき天使や魔王は反魔王の猛攻で苦戦中だ。

 72柱の魔王勢ぞろいなのが特に痛い。アンドロマリウスとかブエルとか、こちらの魔王では戦わなかった奴、天使と闘って死んだらしいザガンとかも面倒な相手だ。


 余裕が出来た大井手たちがナーガラスタに攻撃していたが、今は反魔王の妨害のせいで彼らも手一杯だろう。

 つまり、文字通りの一騎打ちになるらしい。

 使える武器を確認する。

 折角メンテナンスしたはずなのに、不幸にも幾つか機能不全だ。

 特にバーニア系統は完全に沈黙しており飛行は不能。


 面倒なことに左腕の一部武装まで不能となると、俺は本当に不幸なのだと泣きたくなる。

 でも、背後には桃栗。俺がやらなきゃこいつは誰にも守られること無く殺される。

 特に、同じ神だからこそ、女神を殺す術を持ったナーガラスタを放置する訳にはいかない。

 俺が、せめて他の誰かが来てくれることを信じて、それまでの中継ぎに……命を賭ける。


 ああ、そうさ。俺は不幸だ。

 だからきっとこれは犬死になる不幸なんだろう。

 分かってる。英雄になれた俺は不幸に死ぬのがお似合いなんだ。


 ちくしょう。分かってんだよ。凛と家族になって、ミコトが生まれて。

 幸せ過ぎたんだ。まるでこれから別れる家族とのちょっとした平和だけをくれるって言われたみたいに。だから、俺はそろそろ死ぬんだろう。ナーガラスタに殺されるのかもしれない。だけど。だからこそ。その一瞬一瞬に、命を賭ける価値がある。


「行くぞナーガラスタ!」


「息の根を止めてやる、アンゴルモアッ!!」


 ナーガラスタは槍を手にして滑空。俺に向って襲いかかってきた。

 生身で決着付けるつもりか!?

 俺も左腕からサーベルを取り出しナーガラスタに向ける。

 走ろうとした瞬間、左足が重いことに気付いた。


 ああもう、マジか!?

 左足の機械がまた壊れやがった!

 さっきメンテナンスしたばっかじゃねぇのかよ!?


「ははっ。ホント不幸過ぎて笑えるなぁ」


 うるせぇよ!

 突撃して来た槍をサーベルで受ける。サーベルが曲がった。

 慌ててアームガトリングを撃ち放つ。整備不良で爆発した。

 左腕大破だ。


「ぶはっ。貴様、僕を笑い死にさせる気か!? そこまで自爆してると笑い話にしかならないな」


 畜生、言い返せないのが辛い。

 後部ミサイルを発動させてなんとかナーガラスタを後退させる。

 武器が役に立たないとか、なんの兵装だよ。


 余裕のナーガラスタに手も足も出ない。

 ばかりか、不幸なことにこちらが動けば動くほど整備不良や不幸な事故で身体が故障していく。

 直ぐに半身不随になった俺は悔しげに呻く。


 残念だが、やはり観念すべきなんだろうな。俺はここで終わるんだろう。

 けど、せめて桃栗を守った英雄という少しだけの名誉だけでいい。俺に残してくれ。

 なぁ不幸の神。あんたの望みは叶ったか? 俺は不幸のままで死ねばいいのか?


「くたばれ三神照之ぃっ!!」


 ナーガラスタの放つ神の槍や俺の腹部を貫いた。

 思わず口から込み上がった物を吐く。吐血……じゃなくオイルだった。

 はは、既に血すら通ってないってか?


「あなたぁぁぁぁぁ――――ッ!!?」


 不意に、金切り声のような悲鳴が聞こえた。

 見れば、凛が座り込んで叫んでいる。

 ああ、不幸だ。本当に、こんなとこで凛に殺される場面見せるのか俺は。

 不幸、不幸……ふ、こう?


 何を……何を勝手に決めてんだ俺はっ。

 思い出せ、何を不抜けていやがる。

 俺は、三神照之は、アンゴルモアは。ずっと何度も死にかけてただろ。

 何故死ななかった? 死ぬ事が幸運だと思う事で回避して来たからじゃなかったか!


 なんでその死を受け入れてる? 死ぬのも仕方無いとか思ってやがる? 死ぬのが幸運と思うでもなく、ここで死ぬんだなんて、なぜ受け入れる必要があるんだ。

 貫かれた槍が引き抜かれ、大穴開いた俺は地面に倒れる。

 ああ、不幸だ。確かに不幸だ。でも……


 ここで・・・死ねるなら・・・・・幸運だ・・・


 刹那、何かが逆転した。

 そう。責任転嫁など途中で手に入れただけの後付けスキル。

 俺の不幸スキルは、もともとこの身にあったのだから。


 桃栗へと向かったナーガラスタの足を持つ。俺の腕に引っ張られ無様にこけたナーガラスタにようやく帰って来たロケットパンチが突き刺さった。

 何が起こったか分からなかっただろう。

 背中に突き立つ俺の腕に目を白黒とさせている。


 忘れていた。俺は根っからの不幸だ。

 だから誰かを守るのは、そいつの不幸を背負えばいいだけだ。

 ああ、そうだった。俺は英雄だ。不幸な不幸な英雄だ。

 なぁ、ナーガラスタ。世界の人のその不幸、俺が全て引き受ける。だから、不幸にも、俺が神を殺してしまう事を……了承してくれ。


「三神……みぃかぁみぃぃぃッ!!」


「第三ラウンドを始めようぜナーガラスタ。不幸な不幸な英雄譚の始まりだ。消えろ失せろ蛇神。俺の英雄譚の華として!」


「またかッ、また貴様なのか三神ィッ!!」


 立ちあがった俺達は互いに睨み、叫ぶ。

 まるで生まれた時からずっと憎み合っていたかのように、相手を殺したくてたまらないと、俺達は互いに憎しみをぶつけ合った。

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