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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十三話 幸運少女はいつでも幸運です
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出席番号7・炎野(えんの) 美音奈(みねな)

 自分がソレに気付いたのは偶然だった。

 喉に痛みを感じたので自己修復を終えるまで水でも飲んでようと歌を止め、戦場を見た。

 そして、見つけてしまったのだ。


 レウコクロリディウムと一人闘っている凛さんを。

 なんであの娘以外誰も気付いてないのよ!? そう思えるほどに誰にも見向きされないまま、彼女は即座に制圧されていた。

 自ら使っていた刃を突きつけられ、死を覚悟した凛。

 誰も助けてくれる人などいなかった。そう、ボクが見捨てれば……


「ああもう、なんでボクなのよッ!!」


 驚く音楽隊を放置してボクは走りだす。

 手にしていたペットボトルの水をペットボトルごと投げつける。

 気付いた首領さんはなんだペットボトルか。と刀で一閃。

 飛んできたペットボトルは何のダメージも与えられずに真っ二つに切り裂かれた。


 普通なら、そう、普通ならばそのまま切り裂かれた二つのペットボトルが落下するだけだ。

 中身の水がぶちまけられ、辺りを水浸しにする程度。

 しかし、ボクが居たことでそれは変化した。


 水が意思を持つようにペットボトルの残骸を引っ掴み、首領さんへと投げつける。

 「なんと!?」驚いた顔をする首領さんは思わずそのペットボトルをさらに二つに切り裂く。

 その間に水が彼女に襲いかかった。


「炎野美音奈か! 人魚のクセにやってくれる!」


「人魚を甘く見んなし!」


 水を操り首領さんの口を塞ぐ。

 気道に潜りこませ息を止めた。


「ふむ。確かに人魚でも人を殺すのは可能か。しかし、私を殺すには役不足だな」


 うそん。気道塞がれたらほぼ確実に死亡するのが生物ってものよ?

 あ、そうか。こいつは寄生虫みたいな存在だっけか。

 だったら宿主を殺したところで意味は無い。内部にいるだろう首領さんを仕留めないと無理なのだ。


「まぁ、そう急くな小娘共。先程は攻撃されたから反撃したが、私は争うつもりはないぞ?」


「その言葉、信じれるとでも? 第一反存在でしょあんた!」


「そうだな。だが、私が敵対するという可能性がどこにある」


 絶対に嘘にしか思えない。そもそも反存在は嘘吐きだらけと聞いたことあるし、つまり、こいつが話すことは全て反対と思った方が良いわけだ。


「ふふ。警戒するのは良く分かる。だが、考えてみるといい。私の反存在、お前達から言えばこちらの世界の私は、嘘吐きではなかったか? 嘘吐き、秘密主義。その逆は何になると思う」


 それは……順当に行くなら誠実、暴露主義。いや、でもソレが真実であるとは限らない。

 ああもう、この人が嘘付きなのかどうかわかればこんな考えしなくてもいいし、ボクが強ければこの人倒して問題を無くせるのに。


「じゃあ、こちらに来て何をするつもりなの?」


「元々私が望んでいた対消滅は不可能になったしな。せっかくだ。こちらの私が残した世界征服の夢を引き継ぎ混沌へ導いてやろうかと、といっても、今はナーガラスタが勝たねばソレは不可能そうだからな。私がお前の横で見学しながら物語の趨勢でも見ておこうかと思ったわけだ。ついでに人質にできそうだし」


 ああ、こいつ本当に隠す気無しだ。

 そう思えるほどに心の内を暴露していた首領さん。いっそ清々しいよ。ヤバそうならボクを人質に取ろうとかすることとか特に。


「悪魔や天使に監視して貰うけど、それでよければ……」


「構わん。どうせ敵対する気はないしな。ククク」


 正直、闘いにならなくて良かったと思いたい。

 立ちあがった凛さんには日本君のとこへと戻って貰い、ボクはアムドゥスキアスのもとへと戻る。

 信用ならない反首領さんと一緒なのが怖いけど、ボクや凛さんじゃ敵わないので放置するしかない。


「それで、そいつを放置しているのか」


「どうしたらいいでしょう?」


「知るか。適当に殺せばよかろうに。なぁ天使共」


「愚かな。神の名において悔い改めねば。先に悔い改め後の自己犠牲により徳高き人物へとなることを願います」


「阿呆か? 神とやらは先程対消滅しただろうに」


 とりあえず、神様がもういないので天使の悔い改める意味が無くなってしまった気がしなくもない。

 アムドゥスキアスの言葉の方が正しいよね。だから裏切られる前に首領さんを殺した方がいいってわけじゃないんだけど。


「神が居らずとも輪廻転生の処置は行っております。我々しかいないという訳ではないのです。神々はそれぞれの国に存在するのですから。我等の教えを知っている者たちは我等の管轄。それだけです。仏教の神々などとはまた別ですから。悔い改めることが無意味にはなりません」


 ごめん。そういうの良く分からないです。ボクは激論を始めた天使と悪魔を放置して歌い出す。

 とりあえずボクは歌い続けることにするよ。だからさ、そんな呆れたような顔でこっち見ないでくれないかな首領さん。

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