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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十三話 幸運少女はいつでも幸運です
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出席番号33・新禿(しんとく) 凛(りん)

 それはあまりにも衝撃的な光景だった。

 桃栗マロン。自称女神で上位存在と呼ばれるクラスメイトの脇腹に、槍が貫通していたのだ。

 衝撃に驚きつつ桃栗さんがばっと後ろを振り向くと。そこには上空から宇宙船軍団と共に姿を現す白き蛇。


 先ほど倒した反ナーガラスタ同様に九つの頭をくねらせる頭以外人型の生物がゆっくりと降臨してきていた。

 ニヤニヤとしたそいつの周りには、今まで倒したはずの魔王の群れ。

 さらに彼の直ぐ横には、インセクトワールド首領と思しき少女の存在。目玉が飛び出ているのがとても恐ろしい。


「ナーガ……ラスタ?」


「勝利を確信した時こそ、最も無防備になる。桃栗ぃ、僕の勝ちだ」


 地上に降臨したナーガラスタはニヤリと笑みを浮かべ、直ぐ横の少女の頭を撫でる。


「さすがこの世界を牛耳ろうとしただけあるなぁ、レウコちゃん。君の言うとおりにしただけで桃栗に一撃加えられたよ。はは、この僕がお前を傷モノにしてるんだぜ? 今までどうやってもお前に勝てなかった僕が。笑え過ぎて泣けてくるぜ」


 脇腹を押えながら睨む桃栗さんは、力がでないのかその場に片膝を付く。

 慌てたように駆け寄ってくる皆さんが桃栗さんを隠すようにナーガラスタの軍勢に睨みをきかす。


「ナーガラスタ。どうやらそちらもようやく総力戦かしら?」


「保障するよネリウ・クラリシア。これが最後の闘いだ。そして、お前達を屠る戦力さ。先程まではこのレウコちゃんがそちらの味方に付いていたから魔王は殲滅させられた。だが、反魔王たちは倒せるかな? 君たちにレウコちゃんの助けは無い。こちらには72柱の魔王と……む? ミシャンドラとルシュフェルの反存在はやられたか。折角向こうの世界と繋げてやったのに」


 天使の数も少なくなった。魔王の数も殆ど居ない。私達クラスメイトと生き残った正義の味方。このメンツで魔王70体以上とナーガラスタと首領さんを相手になんて……

 戦力差は歴然だった。

 確かにチート存在達が居ればそれなりに戦える。でも……


 ぽん。と私の頭に手が置かれた。

 みことを抱きしめながら不安げにしていた私を勇気づけるように、彼は振り向いた私に微笑みを浮かべる。


「凛。行って来る」


「あなた……」


 アンゴルモア様。いいえ。私の旦那様が動きだした。

 半身機械に変えられた神殺しの英雄。いえ、神を殺すまでは至らなかった彼だけど、きっと誰よりも不幸で英雄な彼は、再び神に挑むのだ。

 まるで自分の不始末を片付けるとでもいうように。


「ナーガラスタ。本当に生きてたんだな」


「やはり出てきたかアンゴルモア。そうだな。桃栗より先に貴様を八つ裂きにしてやろう」


 私は祈る。こんな状況になってしまっては、私はただのお荷物だから。

 日本さんや赤城さんが忙しなく指示を出し、機械兵が行ったり来たりする横で、私は泣きそうになりながら、私の英雄に祈りを捧げた。


 不安はある。ここで不幸にも死んでしまうのではないか? そんな不安が胸に渦巻いている。

 でも、逆の希望もあった。

 あの人ならば、神と崇められた不幸の英雄であるならば、きっとまた。不幸にも生き残ってしまうのではないかと。


 魔王の群れに、生き残った天使が、機械兵が、ミシャンドラとルシュフェル、チェクトバヂットが、正義の味方が、怪人たちが、そしてクラスメイトの皆が、一斉に立ち向う。

 互いにぶつかり合う面々の中心で、桃栗さんを背にした英雄は、全く動いていないナーガラスタに対峙する。

 二人の闘いを予感したのか、反首領は無言で戦場から遠ざかった。


 その反首領は、何を思ったか炎野さんが歌い続ける場所へと向って行く。

 誰もそれに気付いていない。

 彼らすらも気付いていないようだ。自分たちの反存在を全て撃破したおかげと、周囲に敵性存在が居ないことで、音楽に集中しているらしい。


「日本さん。この娘をお願いします!」


「は!? ちょ、お、おい!?」


 私はみことを日本さんに預けると、走りだす。

 腰元の刀を引き抜き、徐々に近づく反レウコへと切りかかった。

 踏み込みと同時に渾身の一閃。しかし反レウコの身体は既に宙を舞っていた。

 すたりと背後に落下した反レウコ。

 技後硬直の私に手を伸ばす。


 ああ、不幸だ。私は結局。何をやっても不幸にしかならないんだ。

 踏みしめた足に体重を全部移動させ、後ろ足を横に蹴りぐるりと回る。

 回転斬の要領で剣を煌めかすと、しゃがんだ反レウコは私の一撃をくぐり抜けて回避する。


「なかなかの剣技だが。私と敵対するには力不足だ。それっ」


 腕を持たれた。

 そう思った次の瞬間視界が回った。

 背中に衝撃が来たと呻いた時には、もう全身が痛みで動かなくなっていた。


「終わり、阿呆め」


 私が持っていた刀は奪われ、私に突きつけられていた。

 ああ……やっぱり、不幸だ。

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