表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十三話 幸運少女はいつでも幸運です
1119/1162

出席番号27・山田(やまだ) 八鹿(やしか)又の名をネリウ・クラリシア

 「とりゃあ!」


 声と同時に私に抱きつく桃栗さん。

 思わずグーで殴ったけど、どうやら自分が私に抱きつくことで狭いウォーターシール内に収まろうという事らしい。

 思わず男日照りで女性に走る気か駄女神! と思ってしまったのは言わないが華かしら?


 私、ネリウ・クラリシアは空を見上げる。

 脳内に流れるのはとある名ゼリフ。飛べない豚はただの……いや、そんなこと考えてる場合じゃないわね。

 犬神の反存在を倒さなきゃ。


 私はミストシェルターを切ってウォーターシールを上部に張る。

 これで爆風を避けられるシェルターは無くなった。

 空いた精神力で次の魔法を唱える。


「楕円のフラット・ボウト


 頭上にいる橇向けて、楕円の魔法陣から間欠泉が吹き荒れる。


「回れ捩れ噴き出す水よ螺旋描く水柱スルパ・ウォル・フェリア


 飛び出した楕円の滝に新たな魔法が掛かる。

 飛び出した水の柱が螺旋を描き、反犬神の乗る橇向けて、落下する爆弾全てを巻き込み上昇していく。

 ぐんぐんと上昇していく螺旋の水に驚き移動しようとする反犬神。

 でも残念。これ、追尾式なのよね。


 大量の水が噴き上がり、空中に浮かぶ小さな橇を撃破する。

 綱が千切れ飛び、爆弾の代わりに落下して来たトナカイを五月雨の舞闘具エアリー・アーマーで消し飛ばす。

 そして滝のように降り注ぐ水に紛れてデブった男が落ちて来る。

 咄嗟に袋に手を入れ何かを取りだす。

 ペットボトルロケット?


 それにくっついたまま上昇しようとする。

 落下する水と拮抗して、数秒だけど動きが止まった。

 あの高さなら落下しても死なないわね。

 これで終わってくれれば楽だったんだけど……


「ひぃぃっ。爆弾っ、横に爆弾ッ!!」


 安心なさい。私が手を下すまでもないわ。

 ウォーターシールの直ぐ横を抜け、私の側へと落下する爆弾。

 このまま地面に辿りつくくらいで爆発するだろう。けれど。


「無茶をするっ!」


 咄嗟に私の横に飛び込んだそいつが爆弾を蹴り上げた。

 強化された肉体の一撃で吹き飛ぶ爆弾。桃栗に似た存在がこちらに来ようとしてたんだけど、そこに激突して爆発していた。

 ……よし、殺った! 反存在一匹撃破!


「周囲は任せろ」


 私を救ったのは仮面ダンサーペトル。

 どうやら復活できたらしい。マズルカ達も自分たちの反存在を撃破し終えて別の反存在を相手にしてるらしい。


「先程から不安になっていることがある。だがアン先輩の反存在もアレの反存在も姿が見えない。どこにいるか、存在しているのかの証明も出来ないのが辛いな」


「アレって?」


「この地上で一番危険な存在だ。インセクトワールド首領、レウコクロリディウムの反存在だ」


 そういえば見てないわね。

 確かに居てもよさそうなものだけど。

 まぁ反存在って訳だし、本人が死んだならもういないのかもしれないわね。


「さぁ、大地に落ちた雨粒たちよ、天への叛旗を翻すは今。爆ぜよ雨粒。穿て水球。雨粒たちの叛逆ウェルゼ・レボリュトス


 降りて来た反犬神を同じように地面に落下していた大量の水が襲いかかった。

 地面に吸収されるしかなかった雨粒達が反旗を翻す。

 反犬神の悲鳴が響き渡った。


「よし、ペトルさん、この駄女神をちょっとお願い」


「了解した。トドメを頼む」


 五月雨の舞闘具エアリー・アーマーを使用したまま反犬神のもとへと走る。

 反犬神は既に蜂の巣になっていたので、問題無く削り飛ばした。

 ふぅっと落ち付いた瞬間、ゾクリと背中に悪寒が走る。


 首筋に、冷たい感触があった。

 動くことなく視線だけを動かし、何があるのか見ようとするが、完全に死角に居るらしい。相手が見えない。


「だ、誰……?」


「誰とは、御挨拶だねぇ。久しぶり。ってのもおかしな話かァ?」


 声に、聞き覚えはなかった。否、それはあり得ない声だ。

 だって、こいつは……すでに死んだ存在なはずなのだから。

 首筋に感じる刃の感覚に全身が硬直していた。


「驚いたわね。あなた、生きてたの?」


「へぇ、こっちの世界じゃもう死んでンのかよ。ザマァねぇな。ククク。こりゃあ愉快。クラスメイト殺すつもりが殺されてんのかよ」


「そう、貴方も反存在なのね……枯木、直人」


 私の背後に居るのは、死んだはずのクラスメイトだった。

 もう既に席番もないそいつは、クラスメイトたちから居ない存在とされたはずだった。

 だが、反存在はまだ、生きていたらしい。向こうの私達何してたのよ。


「まぁ、そういう訳だ。仇打ちってぇわけじゃねぇが、死ねやクラスメイト」


 致死の刃が首筋につぷりと埋まる。一瞬感じた嫌な感覚は、即座に消え去った。

 私が死んだ? 全身を駆け抜ける不快感は、しかし男の悲鳴が打ち消した。


「痛でぇ!? 痛てぇっつぅのっ、放しやがれクソ女!」


「そりゃぁでけん相談やぁ、ウチのクラスメイトになにしとん? なぁ、なおとん?」


 どうやら、私の命の危機は、鬼姫様により回避されたらしい。

 安堵した瞬間、全身の力が抜けてその場に倒れ、私がしばらく動けなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ