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俺のクラスメイトが全員一般人じゃなかった件  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三十二話 怪盗少女は捕えられない
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狐討伐戦

「がはぁ……っ」


 血溜りの中、ゆっくりと下田完全が沈んでいく。

 無数に切り裂かれた身体は三枚に下ろされ、悔しげな瞳が私を見つめていた。

 ふぅ、仲間を切り裂くというのはなかなかクルものがあるな。


 息を整え、鎌を振る。ぴしゃりと血飛沫が地面に飛んだ。

 私、聖龍華の目の前には、下田完全の反存在が死んでいた。

 かなりの強敵だ。だが私の不死性に助けられた。


 不死がなければ死んでいたのはこちらだったな。

 しかし、不死性は反存在にも反映されているのだろうか? 下手したら向こうの下田も死んでいる可能性があるな。


「そこの機械兵。済まないがこやつの処分を頼む」


「マスターに問い合わせます。……了解、反存在を処分します」


 量産型インペリアだったか。そいつに死体の処理を任せ、私はこちらの世界の下田に視線を向けた。

 良かった。どうやら小出の助けで向こうも生還出来たらしい。

 問題は……あれか。


「確かに強力だな。下田だけでは無理だろう」


 下田のもとへと駆け足で合流する。

 背後から来た私にびくりと驚いたが、直ぐに冷静になったようだ。


「聖。心臓に悪い」


「抜かせ。お前の反存在も私の反存在も消えたのだろう。ならば二人は本物だ。それより、アレが敵か」


 私の言葉にコクリと頷く下田完全。

 バサリと鉄扇を開いた反小出はこちらを見て困った顔をしている。


「主ら、何故妾の反存在と一緒におるのかえ?」


「ま、惑わされるな二人とも、奴が反存在じゃ!」


 む、むぅ?

 私と下田が二人の小出を交互に見回す。

 双方同じにしか見えない。はて、小出はどっち側だった? 鏡映しではあるのだが、どっちが正解か分からん。


「分かるか、下田完全?」


「むぅ、異世界から戻ってきた。ということをこちらの小出は告げていたが、判断材料にはならないかしら?」


「難しいな。反存在は確か嘘吐きなのだろう。本当の小出が正直にいえば反存在は嘘を付く。自分が行っていなくとも小出が向っていれば嘘を言って私達に近づいて来た可能性もある」


「むぅ、頭が混乱しそうだな。とにかく、こちらの小出も反存在の可能性は拭えんというわけか」


「そういう事だ。さて、どうするか……」


「ふむ、こういうときは、アレではないか?」


「……ふむ。アレか。ならば、私が向こうを担おう」


 私と下田がコクリと頷く。

 嫌な予感を感じた二人の小出が思わず後ずさる。


「月下暗殺拳・胡蝶落とし!」


「青龍乱舞ッ!!」


 互いに同時に足を踏み出し、別々の小出向けて飛び込む。

 下田は直ぐ横に居た小出に、私は離れた場所に居た小出へと、同時に踏み込み、必殺の一撃を叩き込む。


「「なんでじゃぁっ!?」」


 私の鎌が小出に当るその瞬間、背後に動きがあった。

 小出の頭蓋すれすれ数ミリを残して鎌を止め、背後を振りかえる。

 すぐそばまで迫っていた死に気付いた小出がへなへなとその場に座り込んだが、私は気にせず放置する。


 月下暗殺拳を喰らったはずの小出がその場を飛び退き距離を取る。

 わき腹に穿たれた穴を庇いながら、舌打ちをしていた。

 どうやら向こうが反存在らしい。


「随分とおかしいわねその身体。秘孔が逆よ?」


「ぬかった。まさかこちらに攻撃が来るとは。いつ気付いた?」


「「今だが?」」


 私と下田の声が混じる。

 はぁ? と分かっていない反小出。

 簡単なことだ。どちらか分からないから両方攻撃して反応をみよう。という事にしただけだ。


 まぁ、運良く本物の小出が傷付く前に敵が割れたがな。

 さぁ、ここからが本番だ。私と下田だけで何とか出来ればいいのだが。

 問題としては反私を殺したというあのダグダのこん棒だな。

 あれを……ん? おいおい、さすがはクラスメイト。頼りになるじゃないか。


「下田、畳みかけるぞ!」


「むぅ、しかし……」


「かき混ぜられる心配はなくなった。道を開ける、トドメは頼む!」


「正気か? わかった。信頼するぞ聖」


 私が駆ける。

 遅れて駆けて来る下田が私の背後に入り込む。

 無数の尻尾が私に向い飛んできた。


「黄竜連舞!」


 鎌が届く範囲にやってきた尻尾全てを切り刻み、反小出向けて走り寄る。

 止め処なく放たれる尻尾だが、私の鎌を越えられない。

 歯ぎしりする反小出のもとへ、一気に近接。


 キィンと嫌な音がして鎌が弾かれる。

 剣尻尾か!

 次の瞬間、残っていた尻尾が私の身体に突き刺さる。

 石化尻尾か。

 なんとか鎌を振り切り自身に突き刺さっていた尻尾を切り裂く。


「貴様もかき混ぜてや……なん!? いつの間に」


「ふっ、つい先程リテルラが側を通ったのにも気付かなかったのか?」


「なんじゃと!?」


「行け、下田ッ!」


「月下暗殺拳・奥義! 叢雲無音拳!」


 気が付けば、私すらも気配を感じていなかった下田が反小出の目の前に迫っていた。

 驚く小出が付きだされた拳をギリギリ避ける。次の瞬間、後頭部に喰らった一撃で昏倒していた。

 あれは、例え来ると分かっていても避けられるものではないぞ。

 自分が闘っていた反存在が使わなかったのは僥倖だったらしいな。


「断末魔作成拳・イクラ三連ッ」


 意識を無くして倒れる反小出に、無慈悲な拳が突き刺さる。

 反小出から紡ぎだされる断末魔。

 容赦ないな下田……私は呆れた顔で震える小出に石化を直して貰うのだった。

 反存在とはいえ、自分の口からあれが漏れるのを聞かされるとか、不憫だな小出。

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