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立ち上がれ! 女子風呂決死隊

 ふぅ……

 俺は全員のステータスを確認し終え、深く息を吐いた。

 まさかこれ程人外が揃っているとは思わなかった。


 予想以上の幸運だと思う。

 俺と同じ程度の人間ばかりだったら、きっと詰んでいたはずだ。

 あのペリリューの戦いの再現になる所だった。

 万歳突撃など万が一でも御免だ。


 だが、これなら十分勝機がある。

 相手がどれ程の戦力かは分からないが、魔法少女に魔法使い、改造人間、半妖、天使、聖戦士、究極超人二人に吸血鬼、極めつけは元魔王である。

 しかも勇者である手塚は今、究極超人の一人である聖と共に元魔王の城でレベル上げと来たものだ。おそらく帰ってきた手塚は今までとは比べ物にならない強さを持っている事だろう。


 俺は椅子に背もたれながら眼を瞑り、思考の海に埋没する。

 遥か昔、前世において部隊を導いた頭脳が、戦略を組み立て始めている。

 まずはそう、超強力火力で敵陣を急襲、戦意を挫く。

 ならば次に行うは遠距離部隊の撃破だ。

 いや、この二つは同時進行も行えるか?


 ならば歩兵戦の布陣と罠を考えるべきか?

 敵戦力の分類と時間が問題だな。早く偵察の結果が知りたい。

 あいつら、失敗していないだろうな?


「なぁ日本」


「……ん? どうした赤城?」


 俺が考えを巡らせていると、赤城が話しかけてきた。

 一度思考を止め、俺は眼を開く。


「いや、作戦会議を開くのはいいが、偵察待ちなら先に仮眠を取るべきだと思ってな。一日くらい寝なくとも行動は出来るが、判断が鈍ると問題だ」


「それもそうだな。偵察部隊が帰ってくるまでは時間があるし、作戦は俺が考える。二、三時間なら眠れるぞ」


「了解した。なら、俺は仮眠させてもらう。今日は集中力が必要になりそうだしな」


 言って席を立つ赤城。


「ふむ。ならば私達も仮眠するか。イモニカイだったな。先に風呂に入りたい。構わないか?」


 と、増渕がいつの間にか部屋に居た宮廷魔術師に話を振る。

 どうやら俺が考え事をしている間に彼と、国王がやってきたようだ。

 ずいぶん遅い登場だが、今まで謁見などで仕事をしていたせいで遅れたらしい。

 今着いた所だそうだ。

 来て速攻終了とか、遣る瀬無いな。


「ふむ。風呂ならば儂も入りたいぞ。待っておれダーリン。今日は隅々まで綺麗にしておくでな」


「ちょ、田中さんっ。ダメだよ、そういうのは。ほら、時間も無いし武藤君も困ってるから」


 田中、いや、今後はヌェルティスというべきか。そちらが本名らしいしな。一応、奴も戦力に入るのだ、敬称は付けておくべきか。

 ヌェルティスと大井手が立ち上がり、大井手がとつめという魔物を起こして増渕に続く。

 ついでに山田も立ち上がり、大井手たちを追って行った。


 さらにカタリと立ち上がる伊吹。

 こちらの世界の女性たちに振り向くと、行くぞ。と顔でジェスチャーする。

 ふむ。女性陣は全員風呂に入るのか。

 俺達も入った方がいいだろうか? いや、それよりも国王と打ち合わせが先だな。


 少しして、武藤とアルテインが立ち上がる。

 奴らも寝に向うのかと思っていると、何やら様子が変だ。


「さぁ、行くか同士よ」


「は、はいっ。でも、いいんですか? 伊藤さん、いませんよ? 龍華さんも」


「それがどうした? 女性たちが風呂に入る。その事実がある限り、女子風呂決死隊は永久に不滅だ。そして、立ち向かうのが漢の宿命だ。だから、信之の分も俺は征く!」


「そ、そうですね。行きましょう。伊藤さんの分も。僕、頑張りますよ!」


 二人の男が互いにがしりと握手を行い、俺を見る。


「来るか、同士よ」


「誰が行くか」


 全く、何が悲しくて娘のようなクラスメイトたちの裸を覗きに行かねばならんのだ。

 行きたければ勝手に行ってくればいい。どこで野垂れ死のうと関係ない。

 ただし、俺を巻き込むなバカどもめ。


「チッ。奴は同士ではなかったか。漢でない奴などお呼びではないわ」


 武藤が舌打ちして部屋を出て行った。

 向こうは人外の実力者だらけだぞ? 本気で死ぬ気か奴らは。

 まぁいい。


 俺はクラスメイトが誰も居なくなった作戦会議室を見回す。

 一度ため息を吐き、上座に座った国王、クリキントンに視線を向けた。


「国王、魔王軍と対抗できる国の戦力を教えてくれ。包み隠さず動かせる者を全てだ」


「我が国の……か? 国家機密だ。勇者の仲間といえどそう簡単には……」


「国の存亡を左右するぞ。嫌なら言わなくていい」


「むぅ……」


「元々、俺たちは召喚されただけでこの世界とは関係ない。武藤の話ではこの世界の創造神とやらが知り合いらしいしな。元の世界に戻ろうと思えばいつでも戻れるだろう。だが、この国は別だ。魔王からは逃げられん」


 脅しのようになってしまった。だが、これくらい言わなければ国王も口を開くまい。


「わかった。だが、他の者には他言無用にしてほしい」


「ああ。作戦を練るのは俺だけだ。秘密は墓場まで持って行こう」


 俺は国王からこの国の兵力、諜報部隊、暗部、教会からの回復要員、ギルドの冒険者、可能な限り戦力になりそうなモノを聞き出した。

 ついでに、近隣に住む魔物についても聞いておく。

 そう、魔物。それも強力な魔物の噂をだ。

 武藤の泣きそうな顔が目に浮かぶようだった。

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