オーク軍団撃滅戦3
俺の背後に迫っていた2体のオークに、接近する影があった。
俺は大井手の隣に下がると手塚を預け、4体のオークへと向かう。
残りの2体に誰かが向うというのならこちらは俺が留めるべきだろう。
が、思った瞬間、2体のオークに向っていた人物を見て思わず呆気に取られた。
「待ってとつめちゃーんっ」
オークに突撃していたのはとつめとイチゴだった。
なんであいつらが……?
見た所、イチゴの制止を振り切ってとつめがオークに走りだしたと思われるが、慌てたイチゴは自分の身を護る事も忘れているようだ。
いつものように水風船で威嚇でもするのかと焦った俺だったが、とつめはオークに向い、そのまま追突してしまった。
おそらく、スキル【突進】を使ったのだろう。
小柄な体から繰り出された強力な一撃をくらったオークは身体を浮かせて吹き飛ぶ。
「きゃ、きゃあああ!?」
そんなとつめに追いついたイチゴだったが、無傷なオークが彼女へ向け大鉈を振り被る。
悲鳴と共に杖を向けたイチゴ。
「エナジーショットォォォッ!!」
手から杖を伝って出現した青白い光のエネルギー弾がオークへと飛びかかる。
不意を撃たれたオークは弾丸を一身に受け、悲鳴を上げる。
「あわわわわ。やっちゃった!? こ、これでいいんだよね?」
「阿呆っ。それで終わる奴があるか」
オーク3体を屠り終えたヌェルが体勢を起こしたオークに飛びかかる。
とつめが突撃したオークの首を噛みちぎり、狼化を解くと、イチゴのフォローに入った。
残り1体なら任せて大丈夫そうだ。
なら、俺は……この4体を倒せばいい。
ようやく攻撃範囲に俺を捉えたオークたちは、遅い動きならが連携して大鉈を振り被る。
二匹は上段からの振り降ろし、残りは左右からの一閃。
喰らってやる気はないので飛び上がる。
空を切る剣閃を真下に捉え、一匹のオークの頭上に足から突撃する。
「ぶひぃっ!?」
日本語に無理矢理訳すならば「俺の頭を踏み台にした!?」だろうか?
驚くブタ頭を蹴りつけサマーソルト。隣のオークの頭を両手で掴み、さらに隣のオークに蹴りを叩き込む。ついでに手にしているオークに毒を打ち込んでやった。
毒を打ち込まれたオークの色が変化する。
猛毒状態に変化したオークは口から泡を吹きながら突如激しく動き出す。
周囲の仲間に大鉈を振り上げ、狂ったように斬り付けた。
踊り狂うそいつは放置して、俺は足元にいたオークの頭を蹴りつけ無傷のオークへと向かう。
飛び込むようにクロスチョップ。
首元に喰らったオークが呻く。
オークと共に倒れそうになった俺は、狂ったオークに斬りつけられたオークの首を両足で掴み、そいつを起点に地面に手を付くと、倒立の様相で足元のオークを掴みあげ、クロスチョップを与えたオークへ頭から突っ込ませる。
悲鳴と共に2体が倒れ込む。
俺は転がるように横転すると、身体を入れ替え足を地面に着けて立ち上がる。
その頃には毒を喰らったオークの体力が底尽きたらしく、糸が切れたように地面に倒れ伏した。
残り3体。
大鉈を振り上げ一早く体勢を整えたオークが迫る。
あの一撃は気を付けてさえいればダメージは喰らわない。
そればかりか刃を受け止めることだって可能だ。
だが、無防備に喰らっていいかといえば、そうじゃない。
さすがに改造人間といえども防御力はそこまで強くない。
とくに俺の装甲は改造人間の中でも紙装甲に近い。
下手な攻撃を貰えば確実に死ぬだろう。
まぁ、こいつら相手に負ける気はしないが。
大鉈が振り下ろされるのに合わせ、俺は足を振り上げる。
落ちてくる手首を足で跳ねあげ、大鉈を弾き飛ばす。
さらに逆足で飛び上がりオークの顎目掛けて蹴り上げた。
オークの汚い唾が飛ぶ。
地面に着いた足でさらに跳び、側頭部向けて回し蹴り。
オークが真横に吹き飛ぶのを確認しながら地に着くと、起き上がった二匹のオークが立ち上がった。
だが、まだ攻撃態勢までは取れていない。
チャンスとばかりに俺は蹴り飛ばしたオークに駆け寄り、鞭毛を伸ばして毒を打ち込む。
身体の色が変化するのを確認し、残った2体のオークに振り向いた。
そのオークたちの背後では、龍華が巨大オークと激しい戦いを繰り広げていた。
紅に輝く二連の刃を物凄い速度で振りまわし、周りの木々をなぎ倒す龍華に、体勢を崩されながらも巨大オークはヘビィアックスで受け止めて行く。
「ブオオォォォォッ!!」
「真空波斬ッ!」
龍華がスキルを使う。
すると、巨大オークは慌てたように横へと飛び退いた。
どうやら相手の攻撃方法を理解して避けたようだ。
予想以上に知能があるらしい。
にしても、あの膨れた腹でよく動けるな。
転がるようにして立ち上がる巨大オーク。武器を構えると、吠えるように龍華に斬りかかる。
しかし、龍華も即座に反応。鎌の柄で受け止めると、異次元アイテムボックスからショートソードを取りだし、巨大オークに投げつける。
まさかの一撃に面食らう巨大オーク。その左目に、切っ先が突き刺さる。
強大な絶叫が轟いた。
仰け反る巨大オークに龍華は間髪入れずにさらなる襲撃。
赤い閃光を走らせ巨大オークを斬り付けた。




