表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

128/142

第128話 ヴェン、マル、アルマの連携

「ヴェンツェル、ユミス様!」


「こんなところで何やってんの!?」


 戦場の向こうからアルマとマルが戻ってきた。


「ふたりがいなくなって、めっちゃ焦ったんだよ!」


「あの竜巻を発生させたのってユミス様ですか?」


「うむ、そうじゃ。ちと気に入らない者がおっての」


 ユミス様が発生させた竜巻は戦場のど真ん中を絶賛暴走中だ。


「ユミス様、あれ消せるんですか? このままだと戦場がめちゃくちゃになりますけど」


「むお? ま、まぁ、平気じゃ。そのうち、なんとかなるじゃろうて」


 えっと、もしかして、あの竜巻は消せないっていうことじゃ……


「もしかして、消せないの……?」


「うっそ。敵も味方もめちゃくちゃになっちゃうよ!」


「消せないとは言ってないであろう! ちょびっとばかり、面倒じゃと言うとるだけで、その……」


「だったら消せるって言ってくださいよ」


 竜巻がだんだん大きくなっていく――


「っていうかさ、あれ、こっちに来てない?」


「う、うん。こっちに近づいてきてる……」


 曇天まで呑み込む竜巻が暴風を吹き荒らしながら迫ってきてるぞ!


「ユミス様、あれなんとかしてください!」


「むお!? わらわを捨てて逃げる気かっ」


「だってユミス様じゃなきゃ止められないでしょ!」


 ユミス様を捨てて避難だっ。


「い、いいの? ヴェンツェルっ」


「大丈夫。あの人も一応は神だし、なんていうか自分で蒔いた種だろ?」


「ヴェンが微妙に酷いこと言ってる気がするけど、あたしは賛成!」


 竜巻に引き込まれないように大きく迂回して戦場に戻る。


「竜巻に気を取られてすっかり忘れてたっ。戦場が酷いことになってるんだよっ」


「わかってる。闇の力が降り注いで人間も魔物も暴走してるんだろ?」


「闇の力が……?」


「詳しい話は後だっ。まずは戦場を静めるんだ」


 戦場は人間と魔物が入り乱れる地獄と化している。


 人間たちは肌を黒く変色させて、狂戦士のように暴れまわっている。


 魔物たちも我を忘れて近くの生物に噛みついていた。


「なんだ、これは……」


 もはや戦争のていを成していない。


 我を失って凶暴化した者たちが暴れまわる地獄でしかなかった。


「さっきまでちゃんと戦ってたのに、急におかしくなっちゃったんだよ」


「なんか黒い雨のようなものが降ってきて、それからおかしくなったような気がするんだけど」


 カルタが闇の力を撒き散らしていったせいだ。


「暴れる人間に強烈な一撃を与えて気絶させるしかない。魔物は仕留めてもいい」


「うん。わかった!」


 発狂した兵たちがさっそく襲いかかってきた。


「吹っ飛べ!」


 多勢を一斉に吹き飛ばすのはモーメンタリストームが効果的だ。


 背後の空気を魔力で急激に押し込んで突風を発生させる。


 兵たちは成すすべなく吹き飛ばされて、地面に頭や背中を打ちつけた。


「さすがヴェンツェル!」


 アルマは魔獣の突進を盾で受け止めている。


 ふたつの頭をもった狼のような獣だ。


「はっ!」


 盾で魔獣を押し込んで、怯んだ隙にランスの強烈な突きで一気に勝負をつける。


「凶悪な魔獣もアルマの突きなら一撃で終わりだっ」


 うちの壁役兼アタッカーは頼りになるぜ!


「あたしも負けられないね!」


 マルは巨大な悪魔と戦っている。


 私が前に戦った、炎を操る黒い悪魔に似ているが、


「あんたなんか、向こうに行っちゃいな!」


 マルは悪魔の突撃をうまく利用して遠くへ投げ飛ばしてしまった。


「マルもすごい!」


「マルはうちの遊撃隊長だな!」


 マルもアルマも強い。


 ユミス様がへまをしても、私たちで充分に対応できる。


「メトラッハのギルドから来られた皆さん、まだ戦える状態ですかっ」


 後ろから私たちに声をかけてくれたのは副騎士団長のテレザさんだ。


「はい。戦えますよっ」


「ありがとうございます。他に戦える者はもうほとんど残っていません。あなたがたが頼りです!」


「テレザ副騎士団長、わたしたちにおまかせください!」


 凶暴化した兵と魔物たちを手分けして退けていく。


 カルタの魔力の影響を受けていない者もいたが、負傷して動けない者が多かった。


「負傷している人は後退してください! 動ける人は負傷して動けない人をフォローしてあげてください」


 向こうの戦場から鳥の鳴き声のようなものが聞こえてくる。


 猛獣の雄叫びに似た声を発するのは……なんだあれは。


「ヴェンツェル!」


「何あのでっかい鳥!」


 鷲よりもはるかに大きい怪鳥だ。


 飛竜のような魔物が翼を広げて急降下してくる。


「キャア!」


 横に跳んで直撃を避けるが、巨大な魔物が通り抜けた衝撃で吹き飛ばされてしまった。


 上空へ舞い上がった魔物が炎を吐き出す。


「ちっ」


 ウォーターガンを放って火炎放射を打ち消す。


 直線状に放水された魔法が炎にぶつかり、炎の勢いを止める。


「この程度の炎を消すのは簡単だっ」


 ウォーターガンが炎を消して、背後にいる魔物を弾き飛ばした。


「さすがヴェンツェル!」


「やるぅ!」


 私も強くなったものだ。


 怪鳥の魔物がまた急降下をはじめる。


 奴が通り過ぎるたびに突風が発生して吹き飛ばされてしまう。


「ヴェンさ、風の魔法とかでなんとかならないの?」


「微妙だな。あんなに速いと攻撃を当てるのが難しい」


 奴が旋回したタイミングを狙うか?


 しかし雲のそばまで逃げられてしまうと風の魔法も届かない。


「ユミス様くらいの魔力があれば、あそこまで魔法が届くんだろうが……」


「ヴェンツェル!」


 アルマが上空の魔物に盾を構えながら私を呼んだ。


「どうした」


「あの魔物の突撃の勢いを殺せない?」


「突撃の勢いを殺す?」


 魔物が絶え間なく突撃を繰り返してくる。


「ウィンドブラストで奴の突撃を止めろっていうことか!?」


「そうっ」


 魔物がしつこく攻撃してくるから落ち着いて会話できない。


「やったことはないが、できると思うっ」


「あの突撃の勢いを殺せれば、わたしの盾で動きを止められる!」


 アルマが盾で奴を遮って、突撃の勢いを止めるのか。


「危ないが、やってみよう」


「うんっ」


「あたしはっ、どうすればいい!?」


 マルの助けも必要だ。


「マルは少し離れて待つんだ。アルマが奴を止めたらすかさず攻撃を仕掛けてくれっ」


「あたしがあいつを仕留めるんだね。まかせといて!」


 鳥の魔物が雲のそばまで旋回してこちらへ急降下をはじめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ