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第109話 黒十字団とグレルマンを撃破

 黒十字団の連中ががやがやと声を上げながら中へ入ってきた。


「あそこの街道はカモが多いな」


「ちょろいもんだぜ」


 どこかの街道でまた悪さをしてきたのか。


 洞窟の入り口の近くにつながっている広間で待ち構えていると、全身黒づくめの盗賊たちが姿を現した。


「あ? なんだ、こいつ」


「どうしたんだよ」


 自分たちのアジトに他人が入り込んでいるとは思ってなかったのだろう。


「てめえら、何もんだ!」


「私たちはお前たちの悪名を聞きつけて成敗しに参った者だ」


「ああ!? んだとっ」


 アルマも妖精銀の盾を構えて前に出た。


「てめえら、国から遣わされた連中か!」


「そんなことはどうでもいい。農村の弱い人たちを怖がらせる悪人たちは許しません!」


 アルマの突撃で黒十字団の連中がまとめて外へと放り出される。


「アルマはほんとに強くなったのう!」


「私たちも後に続きましょう!」


 アルマに続いて外へ躍り出る。


 洞窟の前の広場にいるのは、二十名くらいか?


「クソ野郎がっ」


「殺っちまえ!」


 飛びかかってくる奴らをアルマがランスで撃退する。


 私も負けじと水の魔法で応戦するが、ほぼアルマの独壇場だ。


「弱い人をいじめる悪人は許さない!」


 ユミス様の言葉じゃないけど、アルマは実に強くなった。


「おうおうおう、たった数人になに苦戦してんだ。さっさとぶっ殺せ!」


 奴らの奥で鎮座している大男がいる。


 巨大な槍を肩にかけて、袖のない衣服から筋肉で引き締まった腕を見せつけている。


 顔じゅうに古傷をつけたあの男がグレルマンか。


 黒十字団の連中は数が多いだけで、まったく強くない。


 私とアルマで手分けすればすぐに方が付いてしまう。


 だが、


「ち。使えねえ雑魚どもだ。女とガキ相手になんて様だっ」


 グレルマンがやっと動いた。


「あなたが黒十字団の親玉か」


「ふん。だったら、どうする?」


「あなたを捕まえて盗賊ギルドを壊滅させる!」


 先制でウィンドブラストを放つ。


「くぉ!?」


 男は油断していたようだが、槍を地面に突き刺して突風に耐えただとっ。


「おもしれぇ。そういうことかよぉ!」


 男が槍を引っこ抜き、そのまま右腕を大きく振りかぶって、


「ヴェンツェル!」


 柱のような槍が轟音を発しながら私にまっすぐ飛んできた。


「くっ」


 横に飛んで槍の直撃を避けたが、槍の猛烈な勢いによってバランスをわずかに崩してしまった。


「おせえ!」


 グレルマンの声!?


 振り返った先が奴の巨大で埋め尽くされていた。


「ヴェンツェル!」


「ヴェン!」


 奴の強烈な一撃をもろに受けてしまった。


 吹き飛ばされて、背後の崖に背中を打ちつける。


「にいちゃんよ、多少は戦い慣れてるようだが、反応が遅えぜ。俺様が反撃してくるのをまったく予測してなかっただろ」


 黒十字団の中に、こんなに強い奴がいたのか。


「だが、その辺を歩いてるザコよりかは骨がありそうだな」


 アルマが私の前に立ってくれる。


「次はねえちゃんか。てめえも可愛い割にはやるじゃねえか」


「あなたなんかに負けやしない!」


 アルマがランスを果敢に突き出す。


 男は腰に差していた長剣を抜き出してアルマの攻撃をうまくかわしている。


「なかなかいい槍さばきだが、力が弱えなっ」


 男が左手を振りかぶり、アルマが持つ盾を殴りつけた。


「くっ」


 アルマはもちろん無傷だが、攻撃の手を緩めざるを得なかった。


「ヴェンよ、立ち上がるのじゃ」


 私の身体をヒールウォーターが包む。


 暖かい水が背中の打撲を一瞬で打ち消してくれた。


「ユミス様、ありがとうございます」


「気にするでない。少しばかり油断してしまったようじゃのう」


「面目ありません。今まで戦ってきた黒十字団の連中が他所の賊と大して変わらない強さだったので」


 あの男が危ないと村で警告されたのに……慢心だな。


「しかし、あの男は許せんのじゃ。わらわの可愛いヴェンを痛めつけたばかりか、アルマにまで手を出しおって」


「仕方ありませんよ。彼らにとっても私たちは敵なんですから。奇襲されたんですから、余計に腹立たしいのでしょう」


「何を冷静に語っておるのじゃ。わらわが力を授けてやるゆえ、あの不届き者を早く倒して参れ」


 ユミス様が何かのバフをかけてくれる。


「これは、魔力が上がるバフですか?」


「そうじゃ。あの不届き者に神の裁きを下すのじゃ!」


 反則な気もするが、悪人に情けをかける必要はないか。


「アルマ、下がれ!」


 アルマに叫びながら突撃する。


 アルマが地面を蹴って後退したのを見届けて、またウィンドブラストの魔法を唱えた。


「けっ、またお前かよ。何度こようが俺様には勝てねえよ」


 霊木の杖を向けて突風を発生させ……なんだこれ!?


 急激な気流が生まれて地面に落ちていた石や落ち葉を吹き飛ばす。


「ぐお……っ、なんだこれ……さっきと……ぐおおお!」


 グレルマンは腰を低くして突風に抗おうとしたが、すぐに吹き飛ばされてしまった。


「ぐぎゃぁぁあ!」


 いや……反則だろ。やっぱり。


 メネス様からいただいた杖も私の魔力を増幅してくれているのかもしれない。


「ほほ。やったの、ヴェン」


「すごい……」


 やっぱり神の力に人間じゃ勝てないよな。


「アルマ、だいじょうぶ?」


「うん。わたしは平気。今日のヴェンツェルはいつにも増してすごいね」


「いや、これユミス様のバフのせいだから。正直言って反則だって」


 肩をすくめるとアルマが苦笑した。


「いいんじゃない? 悪い人を懲らしめられるんだったら」


「正々堂々とした戦いを求められる場だったら完全にアウトだよ」


 抱きついてきたユミス様をどかして、遠くに吹き飛ばしてしまったグレルマンを探した。


 奴が背中を打ちつけたと思われる木が倒壊していたが、奴の姿はそこになかった。


「いないね」


「逃げられてしまったのかもしれない。私としたことが、使う魔法を誤った」


「吹き飛ばすのではなくて、水や氷で攻めた方がよかったのかもしれんのう」


 だが、これで奴らの悪事を挫くことができただろう。


「黒十字団のアジトを発見したから、後は王国になんとかしてもらおう。奴らを全員捕まえればここは平和になるよ」


「そうだね。すぐに方が付いてよかったね!」


 グレルマンには少し苦戦したが、黒十字団自体は大したことなかった。


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