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金額の大きさ

「……やっぱり、クランにお金を管理する人を入れるべきだろうな」


 F-108ダンジョンから俺の家に帰宅したあとのことだ。

 琴葉が作ってくれた夕食を一緒に食べながら、俺がそう言った。

 それを聞いて、琴葉がたずねてくる。


「神宮寺さんに【M&K】に加入してもらうの? 私はいいと思うよ」


「違う。それとはまた別の話として受け取ってほしい」


「え? 違うの? どういうことなの、マー君」


「神宮寺さんが俺に言っていたのは、どこかのクランに加入してそこでクランの運営にも携わりたいってことだ。でも、俺が言っているのは違う。ちゃんとしたプロを雇うことを考えるべきだってことだな」


「プロって、なんの?」


「お金の管理の。っていうか、税金のか。つまりは、税理士を雇うことを考えたほうがいいと思う。クラン加入にとかじゃなくて、普通に仕事の依頼として」


 神宮寺さんの夢は素晴らしいと思う。

 大学に通いつつ、自分の得た【職業】を活かしつつも、それだけに頼らずに働こうという考えを持っていた。

 が、逆に言うとそれだけだ。

 現時点では実績も無ければ、経験もない。

 俺たちのクランに入りませんか、と提案するのは【鍛冶師】としてはありだとしても、会計処理すべてを任せられるのかという問題はまた別のことだと感じていた。


 今日の夕方に出した六等級ポーションはその後も値上がりし続けている。

 このオークションはただのネットオークションとは違って、世界的な機関であるWDOが行っているものであり、参加するにも一定の資格が必要なものだ。

 入札者が興味本位で金額を入れただけ、ということはなく、日本と同じようにライセンスカードと紐づけされた口座にある資金が間違いなく振り込まれることになる。

 つまりは、ポーション一つをオークションに出すだけで確実に大金が動くことになる。


 しかも、それはDPという仮想通貨だ。

 これがクラン用の口座に振り込まれたとして、それを日本円やあるいはドルなどの現金に替えたら、そこで税金が発生することになる。

 海外では違うらしいが、日本では雑所得という扱いになるらしく、だいたい半分くらいが税金として引かれてしまうという話だ。

 そして、それをクランメンバーである俺や琴葉の口座に振り込んだら、そこでもまた所得税などが発生し、親の扶養に入っている琴葉は扶養から外れてしまうことになるだろう。


 それらもろもろを経営学部に通っているとはいえ、素人の神宮寺さんに任せられるのかということだ。

 正直なところ、不安しかないだろう。

 下手に経費として処理できる、なんてことを言われてやったことが実はダメで、後から税務署に目をつけられたりでもしたら面倒そうだ。

 というわけで、俺は人に頼むのであれば専門家にしたほうがよいだろうという考えに至った。

 税理士に頼むのが月にいくらかかるのかは知らないけれど、払えない額ということにはならないだろうし。


「そっか。そうだよね。じゃあ、税理士さんにお願いしてみようよ」


「ああ、そのほうがいいと思う。このクランを続けるならな」


「え? どういうこと? クランを続けるって、始めたばかりじゃない。もしかして、私と【M&K】を作ったのは嫌だったのかな?」


「そんなわけないだろ。逆だよ、琴葉。このクランはその収入のほぼすべてが琴葉のポーションからになる。多分、ほかのだれかが加入したところでそれは変わらないだろう。ぶっちゃけ、税理士が必要なくらいの話ってのは琴葉がいなければ成り立たないんだ」


「……なにを言っているの、マー君? 私はこのクランをやめたりしないよ?」


「ありがとう。そう言ってくれるのはうれしいよ。けど、金額が金額だからな。やっぱりもう一度ちゃんと琴葉の親に話をしておく必要があると思う。自分の子どもが知らない間に大金を扱うようになってたなんて、後で知ったら絶対に怒るだろうし」


 琴葉の親のうち、母親であるゆかりさんとは話をした。

 ただ、具体的な金額なんてものはその時は出なかったし、一緒にダンジョンに潜っています、という程度のものだったからな。

 それに父親のほうは、ゆかりさんが気にしなくてもいいと言ったこともあり、こちらから話をしにいってはいない。


 が、さすがに必要だろう。

 ポーションを作るための材料である高レベル魔石を俺が手に入れてくるとしても、作るのはすべて琴葉の仕事だ。

 その琴葉によってできた数百万円を越えるであろう利益のすべてを赤の他人である俺、しかもまだ十代の異性が管理していると知って、不審がらない親はいないと思う。

 琴葉のご両親の信用を得るためにも、お金の管理はプロを通してやっておいて損はないはずだ。

 オークションで上がり続けるポーションの入札金額を片目に見ながら、再び琴葉のご両親へ話に行く必要性についてを琴葉へと告げたのだった。


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