オークション
探索者になった際に手に入れたライセンスカード。
それはクレジットカードのようになっており、職員のいないギルド建物でも機械に通すことでダンジョンに入るための手続き処理を行えるようになっている。
また、銀行口座とも連携しており、ダンジョン素材の売却を行った際にはここに日本円やDPといった報酬が振り込まれ、測定機械から出金することも可能だ。
そんなライセンスカードの表面には俺の名とクラン名が刻印されており、そのクラン名の下には横一線にブロンズのラインが描かれている。
この銅色の背景色を見れば、一目で俺がブロンズランクに所属していることが分かるだろう。
これで、今までは持てなかった特権も新たに付与されることとなる。
「どうするの、マー君? さっそく、ポーションをオークションに出品してみる?」
カードの表面の一部に色がついただけだというのに、俺はしばらくそれを見つめてしまっていた。
だが、俺よりも早く平静さを取り戻した琴葉が問いかけてくる。
そういえばそうだった。
クラン【M&K】のランクアップは手段であって、目的ではない。
ブロンズランクに上がって得られる権利の一つであるオークション参加の権利を使うことを考えていたのだ。
「そうだな。一回やってみるか」
「じゃあ、はい。マー君がやってみて」
「分かった。それじゃ、そのポーション、預かるぞ」
オークションの出品についても、この場で手続きが行えるようになっている。
この測定機械はなかなかどうして便利なもののようだ。
俺はランクアップしたばかりのライセンスカードを再び機械に投入した。
すると、非接触型液晶画面にいくつか選択できる項目が表示される。
が、そこにはさきほどまではなかった項目が増えていた。
オークション、という項目だ。
ランクアップが正常に反映されているということだろう。
そこへと指を持っていくと、画面が切り替わり、検索と出品という項目が現れた。
検索を押せば、自分がオークションに出品されている商品を探すことができ、気に入ったものがあれば購入希望額を設定できる。
その際は自身が出した金額が他の参加者との金額と比べられ、期日までに一番高い額を提示した人が競り落とすことができる。
まあ、基本的にはネットオークションみたいなものと考えれば分かりやすい。
なので、このオークションの競りに参加するだけならば、ライセンスと連動したアプリのほうでも操作可能で、家でもできる。
が、出品のほうは違った。
こちらはネットオークションのように出品したい商品をスマホで写真を撮って説明文と一緒に投稿すればいい、というものではないからだ。
それだと、本物かどうか見分けがつかないのだ。
だから、出品される商品の質を担保するために、ギルド建物にあるこの測定機械が使われる。
なんといっても、この測定機械には鑑定水晶なるものが組み込まれていて、それがデータベースとつながっているのだ。
【鑑定】が人も物にも使うことができるように、この鑑定水晶での鑑定も対象は人のみではない。
なので、出品の項目を選択したら、液晶画面に「出品したい商品を鑑定水晶に触れてください」という表示が出た。
その指示通りにしたがって、ポーションを鑑定水晶に触れさせる。
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名称:六等級ポーション
性能:対象の傷を癒す。効果(中)
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すると、画面には鑑定結果が表示された。
なんというか、非常にシンプルだ。
効果(中)、というのがどの程度効くのかが直感的に分かりにくい。
が、八等級ポーションですら効果(小)らしいので、複雑骨折くらいは瞬時に治してくれるのかもしれない。
「この鑑定水晶があれば、【鑑定】スキルっていらなくないか?」
「そうかもしれないけど、これで調べられるのは最低限だけらしいよ。【鑑定】はスキルレベルを上げていけば、今まで見られなかった情報も調べられるようになるらしいって聞いているから」
「へえ、そうなのか。ってことは【鑑定Lv1】程度の能力が鑑定水晶にはあるだけ、とかそういうことになるんだろうな。でも、出品する商品の質を確認するには十分か」
この測定機械の鑑定水晶でオークションに出品したいものを鑑定する。
そして、それが間違いなく出品したいものであるかを再確認したら、出品登録する。
この情報がネットを通じて世界中へと広がり、設定した期間の間に競りが行われ、落札者が確定することとなる。
ちなみに、購入希望者側からは鑑定水晶で表示された情報が表示されるのみだ。
なので、落札した者であっても、出品した者が誰かは分からない仕様になっているらしい。
もしも、俺たちのクランの名を世界中に知らしめたいのであれば、出品者情報の開示設定を変更しておけばいいのだけれど、必要ないのでそれはしない。
こうして、俺たちのクラン【M&K】は初めてオークションに参加し、ポーションを出品したのだった。
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