ランクアップ
「そういえば、ギルドでレベルを鑑定するのってライセンスを取って以来だったかもな」
「私が【鑑定】スキル使えるからだよね? この機械の使い方は覚えてる?」
「大丈夫。そんなに難しいものじゃないしな」
F-108ダンジョンがあるギルド建物。
そこで、俺たちのクラン【M&K】のランクアップ申請を行うために、まずは俺たちの登録情報を更新する必要があった。
そのために、ギルド建物に設置されている機械のもとへと向かう。
全国に現れたダンジョンとそれを管理するために作られたギルド。
正式にはダンジョン管理庁という国の機関であり、ライセンスを持つ者の助けとなる設備があると同時に、資格のない者が勝手にダンジョンへと入り込まないように制限するために各ダンジョンには基本的に建物が用意されていた。
そんなふうに全国各地にあるギルド建物では、探索者のレベルなどを鑑定するための機械があった。
これは【鑑定】スキルと同じように、対象者の【職業】と位階レベルやスキルレベルを測定できるのだそうだ。
どうやってそんな機械を作れたのかは知らないが、多分なんらかのスキルを利用してのことなのだろう。
機械中央にある鑑定水晶なるものが測定してくれるらしいので、そういうアイテムを作れる【職業】があるのだと思う。
探索者のステータスを見たいならば【鑑定】スキルを持つ人がいればいいのだけれど、全国津々浦々でいつでも好きな時に情報を確認できるようにするならこういう機械があったほうが便利なのだろう。
【鑑定】自体は【錬金術師】や【鍛冶師】など、生産職系統の【職業】を持つ人に現れやすいスキルなので人を雇っても対応できるだろうけれど、それだけのために人員を配置する必要もないしな。
それに、この鑑定水晶が組み込まれた機械はデータベースとの接続がされているのも特徴の一つだ。
鑑定を行う際に探索者はライセンスカードを差し込む必要がある。
そのカードはギルドが持つデータベースと通信を行い、鑑定水晶で判明したレベルを鑑定するたびに更新していくことができる。
つまり、何が言いたいのかというと、俺の公式なレベルはまだ一のままだということだ。
ライセンスを取得した後からずっとこの機械を使わずに、琴葉に【鑑定】をしてもらっていたから、データ上ではレベルアップしていないということになるのだ。
なぜ、機械を使わなかったかと言えば、お金を取られるからという理由だったりする。
機械で自分のレベルを調べるだけで毎回お金を取られるのだけれど、琴葉にやってもらえば無料だからな。
多分、琴葉も自分でできるからこの機械を使っていないはずなので、俺と同じようにレベル一のままの情報だと思う。
ただ、クランのランクを上げるのであればこれではいけない。
俺たちがギルド建物の受付で自己申告で二人のレベルが合計五十を超えましたと宣言しても意味ないからだ。
きちんとこの測定機械を用いてライセンスカードの情報を更新しておかなければいけない。
というか、それさえ済めばランクアップの申請はほぼ終わったも同じだ。
すでに俺たちは【M&K】というクランを作って加入していることをこのカードに登録しているし、その【M&K】が構成員二人だけというのもデータベースに登録されている。
なので、ここで個人のレベルの情報更新さえしてしまえばそれでいいということになる。
「じゃあ、ちゃっちゃと済ませようか」
「うん。私もマー君の隣で鑑定してもらうね」
「オッケー。それなら、一緒にやろうか」
この機械はATMに近い形をしていて、二台が横並びになっている。
ここのダンジョンは規模が小さく、人気がないから数が少ないのだろう。
むしろ、一台だけでも事足りるくらいかもしれない。
だって、一日通してほとんど探索者が来ないくらいだし。
逆にお野菜ダンジョンのように人気のダンジョンであればもっとたくさんの機械が並んでいるはずだ。
そんな二つの鑑定水晶つきの機械を他に誰もいないことから独占するように俺と琴葉で使うことにした。
ライセンスカードを差し込み、液晶画面に表示される目的の項目に向けて指をかざす。
ATMみたいだといったが、実はこの機械は鑑定するだけではなく、お金の出し入れもできるのでぶっちゃけ似たようなものだろう。
今回はステータス鑑定という項目を選び、鑑定水晶に右手を触れた。
現実世界では魔力バッテリーが発見されたにもかかわらず、安定電源として使われずに終わっている。
が、魔力のこもった魔石そのものが全くの無価値として扱われずに低い価格ながら買取してくれるのは、この機械があるおかげだそうだ。
鑑定水晶でステータスを鑑定する際には魔力を必要とするのだそうで、そのためにこの機械には魔石を補充してその魔力を供給しているのだそうだ。
この機械の中のどこかに魔石がセットされているんだろうな、と考えている間にも鑑定は終わったようだ。
俺のレベルが表示される。
琴葉に【鑑定】してもらった時と同じだ。
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氏名:如月真央
性別:男性
位階:LV26
職業:【運び屋】
所持スキル:【収集Lv6】・【重量軽減Lv7】・【体力強化Lv7】
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位階レベルと【体力強化】もレベルが以前よりも上がっている。
画面に表示された情報を確認し、完了の項目に指を触れ、そして、さらに次の項目へと移る。
クランのランクアップの申請だ。
機械の画面は非接触型なので触れる必要はないのに、気持ちが高ぶり、ついつい力をいれて触ってしまう。
いくつかの操作を終えて、俺のカードが機械から返却された。
そのカードにはしっかりと変化があった。
クランを設立した際にカード表面に表示されるようになったクラン名【M&K】。
そのクラン名の表示背景色がブロンズ色へと変化していた。
「えへへ。やったね、マー君」
自分のライセンスカードを見て、そして隣にいる琴葉へと目を向ける。
琴葉のカードも同様に変化していたようだ。
こうして俺たちのクラン【M&K】はランクアップを果たしたのだった。
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