表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/102

ダンジョン攻略の歴史

「俺たちも自転車持ってくればよかったかな?」


「電車で来たからね〜。持ってくるなら折り畳みの自転車用意しておいたほうがいいかも」


「折り畳み自転車か。あれって折りたたんでも結構な大きさになるし、ちょっと邪魔になりそうだな」


 お野菜ダンジョンを歩いている俺が周りを見ながら自転車の話を琴葉に振った。

 テクテクと歩いている俺たちの横を颯爽と通り過ぎていく自転車に乗った人の姿が何人もあったからだ。

 地面はアスファルト舗装されているわけではないが、あまり凸凹しているわけでもないので自転車でも走りやすいのかもしれない。

 移動時間を短縮するならよさそうだが、荷物が増えるのが悩みどころか。


 ダンジョンの中を車が移動することもあるのであれば自転車もあり。

 なんとなく、俺の勝手な固定観念でダンジョン内でそんな移動方法を使うという認識になっていなかったが、現実にはできるということに気づかされた。

 この世に現れた摩訶不思議なダンジョンだが、リアルの装備品が普通に役立つのだ。


 例えばだが、ダンジョンのモンスターを倒すのに銃は有効らしい。

 なので、世界中でダンジョンが現われ始めた当初は、各国の軍が銃を構えながらモンスターと対峙していたそうだ。

 そうして、ダンジョン内でさまざまなモンスターとの戦いが繰り広げられ、結果としてそれは下火になった。


 理由は単純だ。

 金がかかりすぎる、というものらしい。

 ダンジョン内にいるモンスターは強さも千差万別で、強いモンスター相手だとライフル銃でも何発も叩き込まないと倒せないのだ。

 そして、数多く出現したモンスターに無数の銃弾をお見舞いして、各国の軍事費はダンジョン出現以前と比べてけた違いの額になってしまった。


 そのため、いつしかこう考えられるようになったわけだ。

 ダンジョンを放置していてもモンスターが外に出てくるわけでもないのに、国防のための軍事費や装備、人材をそこに消耗し続けるのはいかがなものか、と。

 わざわざ国を傾けるほどの費用対効果はない、ということになる。


 なので、今はどの国もダンジョン内で大規模な掃討戦というのは行われていない。

 しかし、その結論に至るまでにかかった金額というのは決して無駄にはならなかった。

 なぜなら、ダンジョン内で得られた素材を持ち帰り、研究することで得られる利益が十分にあったからだ。


 さまざまなダンジョン素材がそれまでに使い込むことになった軍事費を補填する可能性が浮上し、しかも、軍を動員は控えられた。

 そのかわりとして世界的に広がったのが探索者の制度だ。

 ダンジョン内に国が費用を支払って軍を送り込むのではなく、自分からダンジョン内に潜り込もうという人を増やし、そういった者たちから利益を得るのだ。


 探索者は自己資金で装備を整えてダンジョンに潜り、いろんな素材を見つけて利益を得る。

 なので、銃や銃弾を日常的に購入しやすい国ではダンジョン内でも普通に銃をぶっ放しているらしい。

 だが、さすがに日本ではそうならなかった。

 少なくとも日本で銃を持ち歩いていれば違法であり、捕まることは間違いない。


 しかし、ダンジョンに潜るには武器がいる。

 そこで、銃の代わりに主流となったのがダンジョン素材で作られる武器だ。

 琴葉のような【錬金術師】が生み出した金属だとか、モンスターの牙などの素材を用いて作られた武器は強力なものもあるし、なにより耐久力があるといわれている。

 いつかは一つくらいそういう武器を手に入れたいという気持ちが俺にもないではないが、値段の高さが問題となって買えそうにもない。

 まあ、しばらくは手持ちのマチェットでなんとか頑張ってみよう。


「お。ちょっといいか、琴葉? あそこの素材を採取してみないか?」


「ん〜。あれはなんだろ? ニンジンかな?」


「パンフレットによればここらはニンジンが生えていて、もうちょっと進むとジャガイモもあるみたいだ。たくさんはいらないけど、それぞれちょっとずつ採ってみないか?」


「ニンジンとジャガイモか〜。うん、いいよ。それなら今日は帰ったら私が料理しようか? 久しぶりにお母さんに教えてもらったマー君の好きなカレーを作ってあげるよ」


「琴葉のカレーか。いいのか? ダンジョン帰りだと疲れるだろ?」


「いいのいいの。そんなこと気にしないでよね。よし、じゃあ早速ニンジンさんから引っこ抜いちゃおう〜」


 自転車移動からダンジョン探索の歴史についてを頭に浮かべていた俺だが、すぐにそんなことはどうでもよくなった。

 帰った後も楽しみだな。

 俺が自分で作るのとは全然おいしさが違うのが琴葉の家のカレーだ。

 それをダンジョンの素材で作ってくれるというのだ。

 どんなものができるのだろうか。

 琴葉のことだからあまり失敗することもないだろう。

 期待を膨らませて、俺たちは初めてのダンジョンでの採取を行うことにしたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ