レベル上げのために
F-108ダンジョンから帰宅した俺は自宅でジュースを飲みながら考えていた。
今後のレベルアップのやり方についてだ。
というか、探索者ライセンスを得てからずっとレベル上げのことばかり考えているような気がする。
まあ、上げられる環境にあるのだからどうせならばできる限り上げてみよう。
そんなふうにして、より良い方法はないだろうかと考え続けていた。
まずは、スライム亜種の活用について。
これは、琴葉が協力してくれる限りはぜひやりたい。
普通はポーションを手に入れる手段がなければできないことだが、【錬金術師】である琴葉が同じクランにいるのであれば、ポーションを絶え間なく補給できるということだ。
また、スライム亜種を生み出すために使用するのは、やはり普通の回復用のポーションがいいだろう。
毒消しポーションや麻痺消しポーションも色付きのスライムを生み出すことができ、それらは高い経験値をもたらしてくれた。
もしかすると、回復用のポーションよりも経験値効率は良くなるのかもしれない。
が、毒消し草や麻痺の実といった素材の入手性が問題だった。
琴葉に聞いたところではそれらはギルド建物のレンタルスペースでは置いていないのだそうだ。
生産職の【職業】を持つ探索者のスキルを育てるために用意されているレンタルスペース。
そこにはスキルを育てるために自由に使える素材がある。
そして、そこで手に入れられるのが薬草だ。
お野菜ダンジョンでも薬草の群生地が出入口に比較的近い位置にいくつかあるように、国内でもそれなりに数を確保できるのだろう。
それこそ、ご自由にお使いくださいと言えるくらいには薬草は豊富にある。
が、そこには毒消し草や麻痺の実といったラインナップがなく、手に入れるには購買などで購入する必要があるのだ。
どちらが入手しやすいかを比べたら、圧倒的に薬草のほうが手に入りやすい。
そのため、琴葉にはこれからも薬草からポーションを作ってもらいたい。
そして、そのポーションを使い、グリーンスライムを生み出して俺たちのレベルを上げる。
そこで、気になるのはポーションの等級だろうか。
例えば一番効果の低い十等級ポーションと六等級ポーションのどちらでグリーンスライムを生み出したほうがレベル上げの効率が良いのかは確認しておく必要があるだろう。
また、魔石のレベルも重要な要素だ。
レベル十とそれ以上の魔石で比べた場合のレベル上げの効率がどう変わるか。
もちろん、これらは安全性を確保したうえでの話というのも忘れてはならない。
レベル上げの効率を調べるのであれば、【鑑定】を使える琴葉をダンジョンに連れていく必要がある。
が、そこで強いグリーンスライムを相手にして、万が一にも琴葉がケガをするようなことがあってはならない。
もちろん、俺自身もそうだ。
レベル上げの基本は無傷で体力の消耗もなく、連続で倒し続けることができるくらいがよいのだ。
それこそ、モンスターハウスのように、無抵抗なスライムを大量に倒すような作業じみた感じのほうがいい。
そう考えると、グリーンスライムのモンスターハウスが作れないかも気になるな。
それができれば効率はさらに段違いに良くなるはずだ。
しかし、その場合はどのくらいポーションを用意しなければならないのかが問題だな。
できれば、ポーションの使用量も減らしてみたい。
希釈したものでもグリーンスライムが生まれるのか、あるいは、少量のポーションでもいいのかなど、調べたいことは山ほどある。
が、それらを差し引いても、もっと気になることが俺にはあった。
それは、スライムを生み出すタイミングだ。
いや、違うか。
スライムを生み出す場所と言い直したほうが良いかもしれない。
つまり、スライムの核と魔石、そしてポーションと魔力精製水を使ってのスライム生成はダンジョン外ではできないのだろうかということにあった。
今更ながらに、思うのだ。
レベルを上げるのに果たしてダンジョンに入る必要はあるのだろうか、ということに。
今まで、位階レベルを上げるのに必要な存在としてのモンスターがダンジョン内にしかいないからこそ、俺たち探索者はダンジョンに潜っていたのだ。
もちろん、ダンジョン素材が狙いの人のほうが多いだろうが、少なくともレベルを上げたいだけならそういうことになるはずだ。
けれど、ダンジョンの外でモンスターが生み出せるとしたら、どうだろうか。
いちいちダンジョンに行くという手間を省いてレベルが上げられるのであれば、そのほうが楽に違いない。
つまりは、ダンジョンの外でスライムを生み出すことができるのかどうか。
これを試してみてはどうかと思ったのだった。
問題になるだろうか?
……バレなきゃいいかな?
そう考えた俺は人知れず新たな実験に着手したのだった。
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