六等級
【運び屋】がハズレ【職業】だといわれる原因の一つ。
それが、クランのランク制度にある。
クランがそのランクを上げていこうとする際には各構成員の位階レベルが深くかかわってくる。
総計のレベルも重要だが、構成員の平均レベルが一定値を超えていないといけないのだ。
が、ここで問題が起こる。
それは、レベルを上げるにはモンスターを倒す必要がある、ということだ。
ダンジョンではモンスターを最終的にとどめを刺した者がレベルを上げることができ、そうでない者は変化がない。
これまでの考えではそう言われてきた。
すると、どうなるか。
戦闘職ばかりがレベルが上がっていくのに対して、【運び屋】などは全然レベルが上がらないという事態に陥りやすい。
そのため、クランを高いランクに維持するためには人材を選ぶ必要が出てくることになる。
レベルの高い者だけを集めて高ランクを維持するのと、モンスターを倒せなくレベルの上げにくい者を入れながらも維持すること。
どちらのほうが簡単であるかは誰でもわかる。
つまりは、【運び屋】などはクランからはじかれることを意味していた。
平均値を上げるならば、どうしたって足手まといはいらないしな。
一人でもレベルが低い者がいればすぐに平均値が下がってしまうから、抜かざるを得ないという理屈も分かる。
それに、加入した者同士で利益を分配するのに貢献度が低い者がいるのであれば、最初から除外しておいたほうがよいというのも分かる。
ただ、どうしても不公平感が拭えないこのシステムができたのは、これまた海外からのやり方を模倣したからだそうだ。
外国だと国民の不公平感などよりも、マフィアなどの反社会的勢力を抑え込むシステムのほうが重要なんだろう。
たんにレベルの総計だけでは規模のでかい組織が力をつけてしまうが、平均値を導入することで無駄にクランの規模が大きくなりすぎるのを抑制する働きがあると考えられたのかもしれない。
もっとも、どうせ日本でシステムを導入するのであれば、もう少し【運び屋】などにも優しいランクシステムにしてくれればよかったのにと思ってしまうが。
まあ、なんにせよ、このクランのランクシステムは現在日本で使われている以上、それを俺たちが利用するのは当然だろう。
ブロンズランクに上がればオークションへと出品することができる権利を得られる。
それはWDOという世界的な機関が行っているオークションだ。
日本でもポーションを売ることができるとはいえ、世界は広い。
WDO主催のオークションのほうが同じものでもはるかに高い額で競り落とされると思う。
もっとも、手数料などがかかるので最終的に得するかどうかは出品する商品や運に左右されることになるのだろうけれど。
「はい、どうぞ。今日採ってきた薬草とかを使って【錬金】したよ。明日もダンジョンに入るんでしょ? なら、必ずそのポーション持って行ってね、マー君」
「ありがとう、助かるよ、琴葉。ちなみにこのポーションって?」
「これは六等級ポーションだよ。採取した薬草のなかからレベルの高いものを選んで、レベル三十の魔石と前にマー君が倒した再生スライムさんの粘液も使って作ったら等級が上がったんだ」
「六等級か……。とんでもないな」
【錬金】レベルが七にまで上がった琴葉さん。
なんと驚きの六等級ポーションを作成してしまわれたようだ。
以前琴葉が作ったのが八等級だった。
それでも骨折したかと思う傷を瞬時に治してくれたほどの効果があった。
が、多分これはそれ以上なんだろうな。
……ちぎれかけた腕とかなら、すぐに使えば引っ付くくらいの効果とかありそうじゃないか?
いや、知らんけど。
ネットで見ても六等級ポーションの効果ってあまり情報がないみたいで分からなかったのだ。
多分、日本国内で出まわっていないと思う。
作れる人がいないってことはないと思うんだけど。
「ほかにも毒消しポーションと麻痺消しポーションも作ったよ。これも持っていく?」
「……一応、もらっていこうかな。ダンジョンでは何があるか分からないし。まあ、明日はまたF-108ダンジョンに行くつもりだから、大丈夫だとは思うんだけど」
毒消しポーションってなんだよ、と心の中で突っ込みを入れつつ感謝をする。
どんな毒に効くのかは知らないけれど、多分、なんらかの毒攻撃をしてくるモンスターがいるのだろう。
どこかのダンジョンには。
俺に今必要かどうかははなはだ疑問ではあるが、一応念のためにも受け取っておいた。
その後、琴葉を家にまで送り届け、俺は翌日からの平日ダンジョン生活に備えて準備をしながら過ごしたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ぜひブックマークや評価などをお願いします。
評価は下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけけますと執筆の励みになります。




