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自転車移動

「なんか、こう、二人の姿がすごい対照的になっちゃったな」


 新たな装備を身に着けた俺と琴葉。

 【鍛冶師】の神宮寺さんに支払いを済ませた後、そのままお野菜ダンジョンへと向かうことにしたが、並んで歩くとギャップがすごい。

 俺のほうはと言えば、黒系統のスタイルになってしまっている。

 たいして、琴葉はと言えば魔銀装備のスカーフが薄い生地に銀の刺繍がしているような感じで光が当たるとキラキラと光るため、まるで真逆の印象を与えるのではないだろうか。

 ついこの前、このダンジョンに来た時にはお互いに初心者用の装備ということで同じ格好をしていたのにな。


「ま、それはいいとして、今日の目的はお野菜ダンジョンを自転車で走って遠くまで行ってみるってことでいいよな?」


「うん。ドローンを使えば、遠くまで行っても迷わずに帰れるんでしょ? なら、私も頑張ってマー君についていくよ」


 本日のお野菜ダンジョン探索で前回との違いがあるといえば、自転車を持ってきたことにあるだろう。

 俺は車を購入したが、その時に自転車も買っていた。

 二人でお野菜ダンジョンを走れるように、電動アシストのついたスポーツ自転車だ。

 本来であれば、車に積んでここに来る予定ではあるが、まだ車が納車されていない。

 というわけで、俺が人力でここまで持ってきていた。


 俺たちの家からお野菜ダンジョンまでは電車で一時間もあれば来ることができる距離だ。

 そして、俺には【運び屋】としてのスキルがある。

 【体力強化】と【重量軽減】だ。

 持久力を底上げする【体力強化】と位階レベルの向上により、俺は以前までと比べてはるかに体力が増している。

 そして、重さを物理的に軽減できる【重量軽減】があればここまで自転車を持ってくることもできなくはなかった。


 一台の自転車を俺が乗って漕ぎ、もう一台をほかの装備と一緒に背負子に固定して背負ってここまで自走して来たのだ。

 一応、自転車から車輪を外してコンパクトにまとめてはいたけれど、思ったよりも自転車がかさばってしまっていた。

 なるべく人も車も通らないような道を選んでここまで来たので、最短距離よりはかなり距離が伸びてしまったが、それでも疲れることなくたどり着けたのは本当にスキルの力に感謝しかない。


 ちなみに琴葉はここまで電車で来ている。

 一緒に自転車で来てもよかったのだが、俺のほうが圧倒的に体力があるために走るスピードとそれを維持する力が違ったので、別行動したというわけだ。

 下手に電動アシスト自転車のバッテリーを魔力バッテリー化したために、ダンジョン内でしか充電できないのが不便な可能性に気が付いてしまった。

 日常生活でも使うことを考えたら、普通のバッテリーが別にあったほうがいいかもしれないな。


 そんなこんなでダンジョンに入る前にいろいろありつつも、本日はダンジョン内を自転車を使って移動できる。

 このダンジョン内ならば、電動アシストに使うバッテリーを魔力バッテリーにしているために琴葉も楽に走ることができる。

 なので、一緒に並走して移動することにして、ダンジョン探索を開始する。

 ここはスマホで出入り口の方向が分かるようになっているし、ドローンの補助により迷うこともないため、自由に散策できるだろう。


「今日は神宮寺さんに装備を作ってもらったりしたから、今からだと時間的にサクランボはあんまり残っていないかもしれないよな。だったら、この薬草を採りに行ってみないか?」


「薬草を? でも、薬草だったらギルド建物のレンタルスペースとかでも手に入れられるんじゃないかな?」


「いや、あれはあんまりレベルの高い薬草が置いていないって前に琴葉が言ってなかったっけ? 実際に採取に行けば、【鑑定】を持っている琴葉なら高レベルな薬草を見つけられるなじゃないかと思ってね」


「そうなのかな? うん、でもいいよ。それじゃあ、薬草エリアに行ってみようか」


 お野菜ダンジョンは牧歌的な雰囲気の地形が広がるところだ。

 そこでは食べられるダンジョン産の野菜を採ることができ、サクランボは非常においしかった。

 が、今日はそこを狙わずに、食べ物とは別のものを探しに行くことにした。

 薬草採取だ。


 このお野菜ダンジョンではパンフレットが用意されていて、どこで何が採れるかを紹介してくれている。

 その中にいくつか薬草の群生地というものがあった。

 そこで、サクランボがあった方向とは逆方向にある中でも一番遠くの群生地に行ってみることにする。

 これはどうせ薬草を取りに行くのであれば、少しでもたくさんほしいからだ。


 歩いていくには遠くても自転車であれば早く楽に移動できる。

 人気のサクランボがある方向の群生地であれば、そちらに向かった人がついでに採取しに来るかもしれない。

 が、全く逆方向であればハイキング気分の人も少なくなるのではないだろうか。


「俺が先導するから後ろからついてきて」


「うん。それじゃ、しゅっぱーつ」


 自転車で並走するといっても俺が少し前を走っていくことにする。

 洞窟ダンジョンよりも自転車移動に適しているとはいっても、あくまでも道路はないからな。

 土が露出した部分や草の上であればまだいいが、石や岩が転がっているところもある。

 そういうところに乗り上げて転ばないように、俺が通った後を琴葉にはついてきてもらった。


 真っ暗闇のF-108ダンジョンとは違い、ダンジョン内でも明るく見通しのよいきれいな景色の中をあまり急ぐこともなく自転車で走る。

 気持ちがいい。

 いつもは仕事終わりにスライムを虐殺するかのように倒しつくしてレベル上げをしている俺だが、このときばかりは心穏やかにダンジョン探索を楽しんだ。

 こうして、しばらく走り続けて、俺と琴葉は薬草の群生地までやってきたのだった。

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