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「あなたたち、すごいのね。どうやってそんなに高レベルな素材を手に入れたのか気になるけれど、聞くのはマナー違反かしら。それじゃあ、いよいよ防具についての話をしていきましょう」


 十本の苦無を【鍛冶】スキルで強化してくれた神宮寺さん。

 そのうちの一本を手にしてみるが、今までよりも馴染む感じがする。

 よくわからないが魔鋼と呼ばれる金属が鍛え上げられただけではなく、重心などのバランスもよくなったんじゃないだろうか。

 多分投げやすくなっていると思うが、今はそれを確かめることができないので、鞄へとしまって防具についての話題に切り替える。


「苦無を使っていたことから分かると思いますけど、俺がダンジョンに潜るときに使うのは投擲武器です。なので、投げる動きを阻害する装備は避けてできますか?」


「関節の動きを阻害しないように、ね。手足もしっかりと守るように、胴体は体のひねりも考慮して、と。こんな感じかしら?」


 俺が使う武器とそれによる体の操り方から求められる防具。

 それを話し合うために神宮寺さんが使ったのはパソコンだ。

 机の向こう側にいる神宮寺さんがこちらの要望を聞きながらノートパソコンを操作し、そしてその画面をこちらへと向けてきた。


「おおー。すごい。これは防具の3Dモデリングですか?」


「そうよ。【鍛冶】スキルで防具を作る場合、腕装備とか足装備とか、胴体装備って感じで自動で作られるのよ。サイズはスキルが相手の体に合わせて作ってくれるのだけど、細かなところはそうじゃないわ。だから、こういうふうに先に画像でどんな防具を作りたいか依頼主と相談しておいたほうがどちらにとっても不幸がないでしょう?」


 どうやら、【鍛冶】スキルで防具を作ると便利なような不便なような感じになるらしい。

 例えば腕を守る小手を作ると、誰に対してもサイズ違いの同型製品が自動出力される、といったことになるのだそうだ。

 もちろん、素材に使う金属などによって違いは出てくるが、形としては同じだ。

 だが、スキルで形作る前に詳細なイメージをしていれば変化が与えられるのだという。


 しかし、だからといって誰もが生産職の【職業】を得たからと言って制作物の詳細なイメージをできるものではない。

 そこで、作られたのがサポートAIだそうだ。

 これはAI機能を使って条件に適した防具をパソコン画面上に出力してくれる。

 今回のケースであれば苦無投擲に合わせてAIが考えた最適な防具装備を3Dモデル形式で毎秒ごとに生み出し続けているようで、そのうちの一つを神宮寺さんが見せてくれたというわけだ。


 AIってすげえな。

 これならば、作るほうも依頼するほうも実際の品が出来上がる前にイメージしやすいから分かりやすい。

 貴重な素材を使って装備を作った後になって、やっぱりこんなんじゃ嫌だ、などともめることも無くなるんじゃないだろうか。

 生産者側にとっても、表面の複雑な模様なんかを無限に近いパターンでAIが生み出してくれるので、アイデアに困ることがなくなるのだそうだ。


「……しっかし、なんかこれ忍者っぽい恰好が多いですね」


「そうね。ま、苦無を使っているんだからそうなるんじゃない? 騎士みたいな装備をして苦無を投げるっていうのも違和感あると思うし。……騎士様の姿がお望みならそうするけど、どうするの?」


「いや、最初の忍者っぽいのでいいですよ。こいつでお願いします」


 パソコン画面に表示している防具イメージ一覧を見ながら神宮寺さんとやり取りする。

 さすがに西洋の騎士の姿で背負子を背負っているのは違和感が大きすぎるだろう。

 まあ、それを言えば忍者っぽい恰好もそうなんだけど。


 腕や足は金属板を使いつつ、動きやすいものに。

 胴体部分は金属を糸のように引き延ばして、それを繊維として編み込み、重ね合わせて作るという手法で。

 基本は黒をベースに全身に一体感が出る体にぴったりとフィットする感じの装備をお願いする。


 レンタルスペースに置いてあったダンジョン産金属に前日に長時間F-108ダンジョンに潜って得た高レベル魔石を琴葉が【錬金】で魔鋼へと変える。

 その魔鋼素材を使って【鍛冶】スキルを発動する神宮寺さん。

 すると俺の体に最初からあったかのような自然なフィット感の防具が気が付いたらできていた。


 こうして俺は新たな装備を整えることができたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 便利だな、鍛冶師 錬金術師は、これを使っても見た目だけで、中身の1番重要な物は自分の理解だからなぁ まぁ、生産職は、最後は腕だもんね
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