新武器
レベルを上げるための方法。
大雑把に言うと二つの方法が考えられたが、俺は今までどおりF-108ダンジョンに潜ることにした。
ただ、今までよりも奥へと潜るつもりだ。
そのために琴葉によって魔力バッテリー搭載型となったドローンを複数機運用していくこととする。
このドローンは俺が持つ発信機の信号をキャッチして自動追尾をしてきてくれる機能がついている。
さらに言えば、ドローンに備わった障害物センサーで周囲の物を避けながらも、地形把握をしてくれるのだ。
これを探索者用アプリの地図と連動させる。
今までもしていたが、複数のドローンを同期させながら同時に使用することで、それぞれの機体の距離からさらに正確な進行方向や移動距離、地形把握が可能となり、高精度な地図を作ることができるだろう。
この機能に期待したい。
いずれきたる新人教育実習ダンジョン編で使えるモンスターハウスを複数用意しておきたいというのもあった。
多分、このダンジョンは国が用意した地図から外れた範囲にはほとんど人が来ないはずだ。
真っ暗闇の中で戦うストレスもあるだろうし、人気があるわけでもないダンジョンをくまなく歩きまわってみようというガッツのある人もそういないだろう。
なので、俺はこのダンジョン情報として公開された地図の範囲外まで足を進めてみようと考えていた。
ただ、これからの探索では新しいことにも挑戦してみようと考えている。
それは、そのうちやろうと考えている武器による攻撃だ。
今はスライム退治としてスリングショットを主武器にしている。
が、これはどう考えても攻撃力が低いだろう。
肉体レベルの向上により発射する玉の威力が上がっているのは間違いないのだが、スライム以外のモンスターにダメージを与えられる気があまりしない。
あくまでもスライムのような体表面が柔らかい相手にしか通じない武器だと思う。
なので、俺が今度用意しようとしたのは、刃物だ。
鋭い刃がついた武器。
これならば相手の体を傷つけ、出血を強いることができる。
が、今まで遠距離攻撃していたので、刀や剣を持って戦うというのはさすがに自信がなかった。
というか、【運び屋】はそれらの武器がスキル的にはあまり適していないというのもある。
【運び屋】という【職業】は【重量軽減】というスキルを持つ。
このスキルは所持している物の重量を軽減してくれるため、荷物運びに役立つスキルだ。
なのだが、これが意外と武器との相性が悪い。
というのも、持っていると重さが物理的に減少してしまうため、武器そのものの重量によるダメージが減ってしまうのだ。
重たい武器を体感的に軽く感じてブンブン振り回して、それによる重さの衝撃で大ダメージを与える、ということができれば良かったのに。
そう思ってしまった。
それならば、【剣技】スキルがなくても力こそパワーでごり押しできる。
レベルを上げて物理で殴る、というやつだ。
が、重さが減少した武器ではそれがやりにくい。
軽くなった武器でだと、突きや斬撃主体の攻撃が必須になるだろうが、それにはどうしても高い技量が求められる。
俺は自分にそれがあるかと考えたとき、ないな、と思った。
だからこそ、新しく用意しようとした武器は刃物ではあるが、剣などではなかった。
いや、形状的には近いものかもしれない。
けれど、使い方は全然違う。
俺が次の武器に考えたのは投げナイフだったからだ。
鋭い刃がついたぶ厚めのナイフ。
これを投擲して対象に突き立てる。
大ダメージはないかもしれない。
が、これもスリングショットと同じで【収集】を使うことで、遠くに投げたナイフを回収していく算段だ。
相手は体に刺さったナイフがスキルによって取り除かれることで、強制的に傷が開く状態になるだろう。
そのため、命中すれば必ず出血するはずだ。
で、投げるときには俺が所持するために重量が軽減しているが、投げた後は元の重量に戻ることで、重さのダメージも多少は利用できる。
肉体レベルが上がった今なら、投げナイフの飛距離も結構あるのではないかと考えている。
まあ、今はまだ試していないのだけれど。
あくまでも机上の空論に近い。
が、試してみる価値はあると思う。
こうして俺は、次の武器として投げナイフを選択した。
琴葉の【錬金】でそれを作ってもらったところ、ナイフについての造詣がない琴葉はなぜかナイフというよりは苦無みたいなものを作った。
……なんで苦無?
忍者じゃないんだけどな。
ま、いいか。
使えないことはないだろう。
こうして細長い菱形みたいな形をした新武器を持ち、俺はダンジョンに向かうことにしたのだった。
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