E-Bike
緒方さんの紹介で訪れた中古車店で車の購入を決めた俺はその場で契約をした。
そして、その後は自分の住むマンションの管理会社と連絡を取り合う。
自動車は車本体を買えば乗れるわけではなく、そのほかにもいろいろな手続きを済ませておく必要があったからだ。
車屋店員さんと緒方さんに話を聞いて、まず行ったのが駐車場の契約だ。
幸いないことにマンションについている駐車場に空きがあるらしい。
そこを借りることとし、今度は車庫証明が必要ということでそちらの手続きを行う準備も進めていく。
ほかには任意保険も必要だろうということで、実際に事故したときの対応がしっかりしている保険会社はどれかなどを教えてもらい、資料請求をする。
また、高速道路を使った時のことを考えて、今までは持っていなかったETC用のクレジットカードも用意しておいたほうがいいだろうか。
今まで知らなかったが、思った以上にやらなければならないことが多くて大変だ。
自転車みたいに買って帰ったらすぐに乗れる気軽さがないな。
っと、そういえば、自転車屋にも顔を出しておこうと思ったのだった。
「なんだ、如月? 車を買ったと思ったら自転車まで買うつもりなのか?」
「そうですよ。っていうか、そのために緒方さんが交渉しているときに俺からも注文入れたじゃないですか。自転車を車の上に載せられるようにしたいって」
俺をマンションまで自分の車に乗せてきてくれた緒方さんがあきれたようにそう言ってくる。
車の購入や駐車場の契約、その他もろもろのほかに、俺はダンジョン探索用に自転車も買うつもりでいたからだ。
これも少し前から考えてはいたことだ。
きっかけはお野菜ダンジョンに入った時だ。
俺と琴葉がサクランボを採取するためにお野菜ダンジョンの中をテクテクと歩いている横で俺たちを追い抜いて行った自転車があった。
真っ暗な洞窟内では使い道に乏しいだろうけれど、広く見渡せて明るいお野菜ダンジョンであれば自転車での移動は素晴らしい効率を叩き出す。
だけど、自転車でお野菜ダンジョンまで行くのは俺たちの家からではちょっと距離があった。
それが自分の車を買って、その車に自転車を載せられるのであれば可能になる。
休日にお野菜ダンジョンに行くときに自転車搭載で現地まで行ってコインパーキングに車を預けておき、ダンジョン内部に自転車を持ち運んで移動できるからだ。
そのための自転車だが、どうせなら楽できるものを買おうと思ったのだ。
俺が買おうと思ったのはE-Bikeだ。
電動アシスト自転車の中でも自転車のフレームがスポーツタイプのものをとくにそう呼んだりするそうだ。
町中のアスファルト舗装されて走りやすいところならば、普通のシティサイクル型の電動アシスト自転車でいいのかもしれないが、お野菜ダンジョンの中は地面が土だからな。
マウンテンバイクやクロスバイクみたいな奴のほうが走りが安定しそうだ。
最近はそういうオフロードタイプの自転車にも電動システムが搭載されていて走りをサポートしてくれるものがある。
そして、そちらはバッテリーを【錬金】してしまうつもりでいた。
重量物である車を動かすための大容量バッテリーを魔力バッテリー化することはできないと思うと言った琴葉ではあったが、自転車ならできるかもしれない、とのこと。
実はゆかりさんの普段使っている自転車というのが電動アシスト自転車で、そのバッテリーを家で充電しているのを見て、なんとなくできそうだという感覚があったのだそうだ。
ならば、これから買うクロスバイクタイプのものであればできるだろう。
というわけで、自転車も中古で購入した。
電動アシスト自転車は中古だとバッテリーの持ちが悪いものがあるかもしれないけれど、魔力バッテリーにするならダンジョン内に限れば充電しながら走れるしな。
ただ、そのためにはレベルの高い魔石を用意しておいたほうがいいだろう。
購入した車はこれから整備をして車検を通してから納車される。
ということで、もろもろの手続きを終えて俺が乗れる状態になるまでにはまだしばらくかかるだろう。
それまでの間に今回購入した自転車を俺と琴葉分の二台、魔力バッテリー搭載型にするためにF-108ダンジョンで魔石に魔力集めをし続けよう。
今日一日でかなりの額を使い込んだ俺は、それでもこれからの活動範囲の拡大を思ってワクワクが止まらなかったのだった。
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