急上昇
「……え、嘘。なんでこんなにレベルが上がっているの、マー君?」
「言っただろ? モンスターハウスで大量のスライムを倒したからな。戦闘中にレベルアップを感じられるくらい変化があったよ」
「でも、こんなにレベルって上がるものなの? ちょっと信じられないんだけど……」
これからも最大限に注意を払いつつダンジョンに潜っていく。
俺がそう気持ちを新たにしたところで、琴葉のほうも話題を変えるために俺の【鑑定】を行ってくれた。
そして、その結果を見て驚いている。
それを見てちょっと自慢げな雰囲気を出してしまったが、【鑑定】結果の詳細を聞いて俺も琴葉同様に驚いてしまった。
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氏名:如月真央
性別:男性
位階:LV11
職業:【運び屋】
所持スキル:【収集Lv3】・【重量軽減Lv4】・【体力強化Lv3】
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「これはなにかの間違いなんじゃないのか?」
「ううん。そんなことないはずだよ。もう一度【鑑定】したけど、結果は同じだもん」
「戦闘中に変化を感じてたのはこれが理由か。何回もレベルが上がっていたんだな」
「気にするところはそこじゃないと思うんだけどなー。っていうか、スライムを倒すのってこんなにレベルアップできるものなんだ? あれ? でも、それなら昨日もレベルアップしてるはずだし、ほかの人ももっとそのスライムダンジョンに行くんじゃないのかな?」
だろうな。
レベルアップの要因がスライムである。
そう考えるのは違和感があるだろう。
事実、昨日俺が十数体のスライムを倒してもレベルは上がっていなかった。
ならば、モンスターハウスを攻略したからか?
それも違うと思う。
理由は単純だ。
あのモンスターハウスには百を超えるかと思う数のスライムがいた。
だが、どう考えても二百は超えていない。
このレベルアップが大量のスライムを倒したことが理由だとしたら、レベル十一まで行くには千体以上を撃破していなければおかしいだろう。
ということは、だ。
やはり、俺の急激なレベルアップの理由は【収集】にあるのではないだろうか。
俺はモンスターハウスのスライム群に攻撃を行う前に、それまではしていなかった【収集】の使い方をした。
モンスターを倒した際に得られるかもしれない、目には見えていない経験値を【収集】する。
【収集】する対象は経験値で、その【収集】先は俺の肉体だ。
つまりは、俺の体を鞄代わりにして、その内部に集めた経験値がレベルアップにつながった。
もしかして、うまくいくのではないだろうかと考えた実験がモンスターハウスによる大量撃破をもって最高の結果として現れたのかもしれない。
が、そうだとすると気になることがある。
それは、スキルのレベルも上がっていることだ。
どのスキルもレベルが上がっているが、【重量軽減】は昨日レベルアップを果たして二になったばかりだった。
そして、今日はそれが四になっている。
どういうことだろうか。
昨日と今日では重たい荷物を持つという行為はほとんど変わらないように思う。
仕事を頑張ってはいたし、ダンジョン内でも重たいものを持っていた。
だが、それでもここまでスキルレベルが上がるとは思えない。
ということは、経験値というのはスキルにも反映されるのかもしれない。
いや、違うか。
モンスターを倒したときに得られるかもしれない戦闘経験値でスキルが上がるとは考えにくくはないだろうか。
もしかしたら、そういうこともあり得るのかもしれないが、それよりはスキルを使う際のスキル経験値、あるいは熟練度ともいうべきものも俺は【収集】したのかもしれない。
実際、琴葉のような【錬金術師】はダンジョンに潜らずにスキルレベルをアップさせている。
琴葉も昨日、魔石をポーションに【調合】した際にレベルが上がったではないか。
ということは、スキルを使う際には経験値、あるいは熟練度が手に入るが、それは【収集】を使い肉体に集めることで、よりスキルレベルを上げる効果が得られるのではないだろうか。
急激な変化に驚くと同時に、俺はさらなる可能性に気が付き、思わずニヤッと笑ってしまっていたのだった。
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