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モンスターハウス

「……これって、モンスターハウスか?」


 暗闇の中をライトで照らしながら洞窟内を歩いていた。

 それまでと同じように、常に左手側を壁にするように移動する左手法でダンジョンを進んでいた俺が、曲がり角を曲がってすぐに見えたその光景に驚く。

 そこは、まっすぐに進む通路の横壁に別の小さな通路のようなものがあるT字路になっておりその先は小部屋のようになっていた。

 その小部屋のような場所を覗いたらスライムが大量にいたのだ。


 それまでは基本的に一体、多くても二〜三体のスライムが床や壁にへばりついているだけだった。

 なのに、ここでは粘性の体のスライムが積み重なっている。

 ぶっちゃけちょっと気持ち悪い。

 思わず俺はここまで歩いてきた通路を逆走するようにして戻ってしまった。


 ……大丈夫だ。

 さっきの小部屋にいたスライムが俺に気が付いて追いかけてくる、という状況にはなっていない。

 しばらく追跡されないかどうかに気を配り、追手がないことを確認した俺はスマホのアプリを起動する。

 そのアプリで表示させたのは地図だ。


 お野菜ダンジョンはだだっ広い田園風景の広がるダンジョンだった。

 そのため、国はダンジョン公開に際して出入り口近くにアンテナを設置し、そこから発せられる電波を使ってダンジョン内にいても出口の方角が分かるように対策してくれていた。

 だが、それはこの洞窟型のダンジョンでは行っていない。

 理由は同じようにやっても洞窟内では電波がすぐに届かなくなってしまうからだ。


 なので、このダンジョンでは安全確保の意味で地図の販売を行っている。

 こちらは有料だった。

 ダンジョン出入口からどのように洞窟が続いているかが、まるで迷路のような地図として表示可能になる。

 洞窟の奥深くまでを完全に網羅しているわけではないようだが、国が把握できた範囲はそれなりに広く、それを公開してくれている。

 それを使って、さきほどの小部屋が本当に小部屋なのかを確認しようというわけだ。


 ちなみに、こんな地図があってなぜ俺が右手法だの左手法だのといったやり方で昨日と今日、探索していたのかはちゃんと理由がある。

 それはもちろん迷わないためだ。

 実はこの地図はスマホのアプリで表示されるものの、意外とよく迷ってしまうケースがあるらしい。

 最初はそんなことないだろうと思ったのだが、実際にダンジョンに入るとよくわかる。

 自分の持つライトしか光源がなく、常に洞窟の壁を見続けるのだ。

 景色に変化がなく、目印もない。

 しかも、電波が届かないということは当然ながらGPSのように現在位置を表示もできない。

 ある程度歩いていけば、自分がどこを通ってきたのか、どの地点にいるのか、どちらを向いているのかなんてすぐにわからなくなる。

 そうなれば完全に迷子だ。


 ゲームのように上から俯瞰して見られればまだいいのだろうけれど、そうでなければ本当に大変だ。

 一度迷ったら下手すると出られないかもしれない。

 出られても時間がかかって真夜中になるかもしれない。

 だからこそ、迷いにくいとされる方法を用いての探索だった。

 俺は安全にダンジョン探索するために、ダンジョン内で通路を曲がるときにはアプリを表示させて位置を確認するようにしていた。

 そのおかげで、今俺がいる位置とその周辺の状況を確認できた。


「やっぱ、さっきのところは先が行き止まりで袋小路になっているな。なんであんなところにスライムが大量にいるんだ?」


 今更だけど、モンスターについて俺はなにも知らない。

 スライムというのがなにものなのか。

 どうしてこのダンジョンではスライムが出現するのか。

 何を食べ、どうやって数を増やしたりしているのか。

 あるいは、何も食べず、数も増えたりはしないのかもしれないけれど。

 そんな普通に疑問に思うことを何も知らずに、ただモンスターとして退治して魔石を得ている。


 もしかするとここがスライムの発生地点なのだろうか、と考えてしまう。

 本当に袋小路になった小部屋に大量のスライムが山のように積み重なっていたからな。

 あるいは、もしかして王様のスライムのよう複数体のスライムが合体して巨大化するとか?

 そうなったら、俺はそのスライムには勝てないだろう。


 どうしようか?

 今のうちに逃げ帰ったほうがいいのかもしれない。

 けれど、好奇心のほうが勝ってしまった。

 俺は一度退避したはずなのに、再び先ほど見た光景を見るために小部屋のほうへと進んでいったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] スライムハウス~ ぽよんぽよんなスライムじゃない方みたいなスライムのハウス うーん 遠くから一匹ずつ倒していくとして 何時間かかるかな?
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