探索者ギルド
「ここが探索者ギルド、か」
ライセンス発行のための申し込みを済ませた俺の元に、後日ダンジョン管理庁から郵送されてきた資料。
そして、その中に含まれていた案内書を鞄に詰めてやってきたのが、通称探索者ギルドと呼ばれる施設だ。
通称、とあるように正式名称ではない。
国が用意したダンジョン管理庁が運営している施設の建物なのだから。
だが、だれがいつ呼び始めたのかは知らないが、ダンジョン管理庁などという堅苦しい名称よりもギルドという呼び名が定着しているということらしい。
一応、広く国民にダンジョンを開放するという名目でダンジョンの封鎖を解いたために、このようなライセンスを発行するための施設というのは各都道府県に用意されているらしい。
もっとも、人の少ない田舎では数が少なく、都会になるほどに多い。
幸い、俺が住んでいる場所からはそこまで遠いところまで出向かずとも、公共交通機関を利用してすぐにたどり着いた。
これはある意味で運が良かったかもしれないな。
ライセンスの発行には幾度かの講義を受ける必要があるために、ギルド施設へと何度か足を運ぶ必要があったからだ。
あまりに遠い場合にはめんどくさくなって途中でやめてしまう人もいるかもしれない。
今時、講義くらいはリモートでもいいんじゃないだろうかと思わなくもないが、ダンジョン内部は命の危険がある場所でもある。
さすがに誰でも彼でもライセンスが発行できるものではないということなのだろう。
さて、そんなギルド内部だが、まあありていに言ってしまえばそこらにある役所を連想させるものだった。
ロビーがあり、そこでは整理券が発行され、カウンターに人が順番に向かっていく。
俺はそのロビーの横を通り過ぎ、階段を昇って上の階へと移動していく。
その上階にあるのはまた役所のカウンターであり、そこで案内書にあった書類に必要事項を記入したものを提出し、別室へと案内される。
「……結構いるんだな」
今日が土曜日だからなのか、それとも平日でも多いのか。
初回講習の部屋にはかなりの人数がおり、俺は空いている席を探すために部屋の中を見渡して着席する。
毎日、それなりの人数がライセンスを取りに来るのかもしれない。
まあ、しかし全員が本気で探索者として身を立てていこうと考えているわけではないだろう。
俺だってそうだ。
幼馴染の琴葉のことがあったから、ダンジョンに興味を持っただけだ。
琴葉と俺は幼馴染であり、昔からの知り合いではあるが、年齢は俺のほうが少し上。
琴葉はまだ学生で、俺のほうはというとすでに仕事をしている社会人でもあった。
今の仕事がべつにいいというわけではないのだが、探索者のライセンスを取得してそれを今後の仕事にしていこう、などと考えているわけではない。
あくまでも、琴葉のことが心配になったから、というのが理由だ。
が、俺の志望動機とは別にして、ここにいる連中の狙いは違うだろう。
部屋の中で若い男連中がかたまって座っているようなところでは、ダンジョンで一旗揚げて一攫千金を得ようと考えているかもしれない。
だが、一定年齢を超える者はどちらかというと【職業】狙いなのではないだろうか。
【錬金術師】は当たりの職業である。
これになれば、少なくともダンジョンが消え去らない限りは高額な報酬を手にし続けられる可能性が高い。
そんな可能性が、一切の勉強や努力なしに手に入る可能性があるのであれば、ある程度の受講費を払ったとしても高いとは言えないだろう。
ようするに、この部屋にいる半数以上の者はダンジョンそのものよりもダンジョンで得られる【職業】とそれに付随する【スキル】が重要なのだ。
こればかりはやってみないとわからない。
各国で研究はされているのだろうと思うが、少なくともネットでの情報ではダンジョンに入る前に自身が手にする【職業】を判断することは無理ではないかというものばかりだった。
俺はどうなんだろうか。
できれば、当たりの【職業】を手に入れて、幼馴染とダンジョントークを楽しめたらいいのだけれど。
そんなふうに考えながら、俺は初回講習を受けたのだった。
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