魔力精製水
「すごーい。見てみて、マー君。八等級ポーションができたよ」
「八等級ポーション? ポーションって傷を治す薬だよな。たしか、等級って十段階だったっけ?」
「そうだよ。今日、私がギルドのレンタルスペースで【調合】したときにはどれも十等級しかできなかったのに、マー君の持ってきてくれた素材を使ったら八等級ポーションができたの。おかげで私の【調合】スキルのレベルがひとつ上がっちゃった」
「お、まじか。【調合Lv2】になったってことか。おめでとう、琴葉」
俺がギルドから許可を得てダンジョンから持ち帰った素材。
どれも大した値段にはなりそうにもないことだから、ギルドで売却せず、琴葉の【鑑定】レベルの経験値になるかと思っていた。
だが、どうやら予想以上の効果があったようだ。
俺が実験を行い、魔石のレベルをあげていたのが影響したのか【調合】レベルが上がったのだという。
まあ、レンタルスペースでも頑張ってスキルを使っていたからこそだろうけれど。
「それはもちろんそうだけど、やっぱりマー君のおかげだよ。だって、この水も予想外だったから」
「ん? 水? もしかして、ペットボトルに入っていた水のことか? あれがなにか関係しているのか?」
「多分、魔石だけだとポーションの等級は上がらなかったんじゃないかと思うの。でも、あの水も素材に使ったおかげで二つも等級が上がったって感じかな」
「……あれは【収集】スキルでペットボトル内に集めただけだけど、ほかの普通の水とは違ったってこと?」
「うん。【鑑定】したら魔力精製水って表示されていたから、多分マー君のスキルのおかげだと思う。探索ギルドでもポーションを作るときには精製水を使ったほうが質のいいポーションができる傾向にあるって聞いていたけど、多分この魔力精製水のほうがもっと良くなるんだと思うよ」
魔力精製水、か。
まさか、そんなものが出来上がるとは思いもしなかった。
ちなみに、琴葉の発言を聞いてすぐその場で【収集】スキルを使って空気中の水を集めたところ、ただの精製水と【鑑定】では表示された。
琴葉いわく精製水ってのは不純物のない水だそうで、純水とも呼ばれるものだそうだ。
ただの精製水ならばドラッグストアでも買えるし、探索者ギルドのレンタルスペースにも物品として用意されているのだとか。
しかし、この魔力精製水というのは見たことがないし、知らなかったそうだ。
「ふーん。もしかして、【運び屋】の【職業】はハズレだって言われているから、こういう使い方ができるって知られていないのかな? ネットでは見たことなかったし、俺もただの思い付きでやっただけだから」
「新発見ってことなのかなぁ? どうするの、マー君?」
「どうするって、そりゃ決まっているだろ。わざわざ公表なんてしないよ。ほぼ初探索の【運び屋】の俺ができた手法なんだから、情報が出まわったら誰でもマネできるようになる。それはさすがにもったいないよ。まあ、いつかは誰かが同じようなことをするだろうし、知られる情報だと思うけど」
「そっか。じゃあ、私もこの魔石とか魔力精製水のことはほかの人には言わないようにするよ。レンタルスペースにももっていかないほうがいいかもしれないね」
「そうだな。秘密にするならそのほうがいいかもしれない。じゃあ、こうしようか。俺は今回見つけた新手法で魔石と魔力精製水をダンジョン探索したら持って帰る。で、それはこの部屋に置いておくから、琴葉がこの二つを素材に【調合】とかをするならこの部屋だけですること。どうかな?」
「うん、いいよー。やった。それなら、これからもマー君の家に遊びに来られるね」
うれしそうに微笑みながら喜ぶ琴葉。
その姿を見て、俺もなんだか楽しくなってきた。
いいよね、こういうの。
お互いが協力して、レベルを高めていける。
こうして、俺は素材を集める係として、琴葉はその素材を使ってポーションなどを作る係として明日からもダンジョンにかかわっていくことを約束したのだった。
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