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ライセンス

「えっと、なになに? ダンジョンの探索者になるためにはライセンスの取得が必要、っと……」


 琴葉からのメッセージを受け取った俺は早速情報収集に乗り出した。

 今まであまり興味を示していなかったことだが、さすがにいきなりダンジョンに潜りに行く、なんてことはできないというのくらいは知っていたからだ。

 異能の力を手に入れ、未知の物質を持ち帰る。

 なんともロマンあふれる冒険に思えるが、これは現実で起きていることである。

 なにかわからないものを持ち帰ることを国が良しとしないのだ。


 ダンジョンは放置しても大きな問題はなさそうであるということがわかった段階で日本ではほとんどのダンジョンが閉鎖された。

 臭い物に蓋をする。

 それがこの国の出した結論だったというわけだ。


 だが、それは結局一部覆されることとなる。

 というのも、ダンジョンから持ち帰られたものが現世で有効利用できることを他国が証明していったからだ。

 このまま、日本にできたダンジョンを封鎖して放置するだけでは、海外に後れを取ってしまう。

 そうなってはならないと民間からの突き上げがあったらしい。


 が、だからといって、はいわかりましたとはならない。

 それも他国が示してくれたデータがもととしてあった。

 小さなひとかけらの物質が、思いもしない効果をもたらす高価なものである。

 そんなことがごく当たり前に起こるダンジョン素材とそれがもたらす利益を反社会勢力が利用する可能性も十分にある。

 それを資金源としてテロ行為が広がったケースも他国では現実に起こってしまった。

 要するに、国のためにダンジョンを活用していく必要に迫られてはいるものの、それをうまく規制し、制御する必要があるということになる。


 こうして、ダンジョンに潜るには国が発行するライセンスを取得しなければならないという制度が出来上がったわけだ。

 ダンジョンに潜る者は探索者ライセンスを発行された者に限られ、ライセンス保持者は常に国からの監視を受けることとなる。

 ネットで調べた公的な情報でも、探索者の体内にマイクロチップを埋め込んで日常生活では常に位置情報を捕捉し続ける仕組みになっているようだ。

 また、探索者が持ち帰った品などは基本的にダンジョン管理庁が管轄する。

 民間の企業はダンジョン素材を手に入れるためには、このダンジョン管理庁を通して手に入れるようになっていて、当然、それができる企業はしっかりと調べられてからでないと取引が行われない。


 一部では批判もある制度ではあるものの、こうしてできたシステムで現在のダンジョンは管理されている。

 当然ながら、俺もそれを無視してダンジョンに潜ることはできないわけで、首輪をつけられた国の犬として未知の世界に飛び込むことになるだろう。

 あまりいい気分はしないが、まあ、いいか。

 自分自身では真面目一本でこれまでの人生を送ってきたし、これからもそうだ。

 探索者にへんな奴が紛れ込んでいる可能性が少ない分だけ、このシステムはこちらの身を守るためにもなるだろう。

 そんな基本情報を軽く流し読みしながら、ライセンス発行のための受講料をネットで支払ったのだった。

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