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ネットの情報

「私が料理をしているときに、いろいろ調べていたみたいだけど何かいい情報はあったのかな?」


 カレーを食べ終えて一服しているときに琴葉が尋ねてきた。

 帰りの電車の中でもさんざん俺が言っていたからだろう。

 ライセンスを取得したからには、ダンジョンに潜ることにしたからには、どうせなら強くなりたい。

 おいしいスパイスカレーを食べたことで、若干気持ちが揺らいだりもしたが、その気持ちは確かに今もある。


「情報、か。そうだな。ネットでいろいろ見てみたけど、分かったことがひとつだけある」


「ひとつだけ分かったこと? どんなことが分かったの?」


「ネットではダンジョン関連の情報はデマがかなり多いってこと。多分、ネガキャンされているってのもあるんだろうな。ほんとかウソか分からない、っていうか明らかに嘘っぽいのも多いんだよ」


「へえー、そうなんだ。まあ、ダンジョンは危険だとか、モンスターを倒すのはよくないって人もいるもんね」


 そうなのだ。

 人類の歴史でこれまでに存在しなかったダンジョンが出現した。

 その後にさまざまな経過を経て、今はライセンスを取得した者はダンジョンに潜る探索者となり、そこで未知の素材を手に入れてくるように制度化もされた。

 だが、それは全人類の考えが統一されてそうなったわけではもちろんない。

 日本国内でも実に様々な意見があるのだ。


 ダンジョンに潜ることに反対する人もいれば、その素材を持ち出すことに反対の人もいる。

 また、琴葉が言ったようにモンスターを討伐することに拒絶反応を示す人もいる。

 そういった人がネットでもいろんな言説を流しているのだ。


 また、それを払しょくするために日本政府が最大限の努力をしているのかというと、そうとも限らない、らしい。

 というのも、ダンジョンの情報は広まると危険なものもあるからだ。

 どこかのダンジョンで素材を得て、生産にかかわる職業の人がその素材にスキルを使って作り出した品が社会に大きな影響を与える。

 そんなことはごく当たり前にある可能性だ。

 それは良くも悪くも世の中に与える影響が大きすぎる。

 なので、危険な情報をシャットアウトするように制限しているのだとか。

 つまりは、ダンジョンについて判明したことをすべてつまびらかに公開しているわけではない。


 そんなことがあり、国はダンジョンの危険性を隠しているのだという言説を否定するにたる情報を開示できていない。

 また、探索者にとっても利益が絡むために間違った情報を流す人もいるのだそうだ。


 というのも、ゲームのように攻略情報をネットに上げても利益にならないからだ。

 自分たちが発見した貴重な情報はなるべく独占したいと考える人は多い。

 どこのダンジョンで取れた素材が大きな利益を生む、とわかった時、それを隠すのは当然だろう。

 また、隠すだけではなく嘘の情報を流す人もいる。

 全然違うダンジョンで手に入れたとか、その場所は非常に危険で立ち入るべきではない、とかあれこれと分かりにくい嘘を並べ立てるのだ。


 なので、本来であれば集合知として活用できるはずのネットの情報は玉石混交のうち石の割合が高い、信憑性の低い情報が多い。

 一応、国が出している情報は基本的には信じられるものではあるが、国が公表していないからといってなにかを否定する材料にはできない。

 そのため、あまりネットの情報だけを信じることはよくないだろうというのが、俺が調べた限りの結論だった。


「ようするに、ある程度の情報を集めたら自分で検証しながら確認していく、ってのが一番なんだろうな。幸いにも琴葉の【鑑定】で得た情報ってのは間違いないものだろうし、それが一番だと思う」


「そっかー。【錬金術師】の情報もそうなのかな? 私もいろいろネットで見ていたんだけどなー」


「【錬金術師】も国の公式ホームページを見るのが一番だと思うよ。【運び屋】とかと違って当たり職業だし、なによりスキルで薬を作ったりもするからな。人が服用する薬品ってことでまがい物が流通しないように、しっかりとした情報を公開しているはずだから」


「そっか。公式ホームページにないポーションとかは怪しい薬ってことになるんだね。よかった。それなら私は公式の情報を集めていれば、とりあえずオッケーってことだね」


 琴葉の【錬金術師】についてはそうなるだろうな。

 ハズレとしてやり玉に挙げられることの多い【運び屋】は割と冗談交じりの否定論が多い。

 ネットではいかに【運び屋】が役に立たないかをネタにされたりする風潮があるのだ。

 なので、俺は自分で思いついたことを検証していく必要があるだろう。

 俺はネット情報を真に受けすぎずに、これからダンジョン生活を送っていくことに決めたのだった。

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