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 トントントン。

 キッチンで琴葉が料理をしている音が聞こえてくる。

 お野菜ダンジョンから帰還した俺たちは再び電車を使い、家に帰ってきた。

 その途中でスーパーに寄り、食材を購入して今に至る。

 琴葉は約束通り、ダンジョンで採取したニンジンやジャガイモを使ったカレーをふるまってくれるらしい。


 手伝おうか?

 琴葉が料理を始める際に俺はそう言ったが、自分ひとりでやるとのこと。

 一応俺も自炊はしているので料理はできるのだが、それでも簡単なものをチャチャっと作る程度だ。

 なので、料理の腕という面で言えば琴葉には大きく劣ることは前から知っている。

 そのため、一度断られた段階でおとなしく引き下がり、情報収集を始めた。


 【運び屋】の俺が強くなるためにはどうすべきか。

 今すでに持っているスキルだが、それを伸ばすのがまずは重要だろう。

 ハズレ職業であるとはいっても無価値ではない。

 それになにより、スキルは日常生活でも使用できるからだ。


 もしも、スキルがダンジョン内だけでしか使えないというのであれば、【運び屋】は本当にハズレであると同意せざるを得ないだろう。

 ダンジョン内を山のような荷物を持って歩くことができるとして、それが一歩ダンジョンから出たら荷物に押しつぶされるとしたらどうだろうか。

 あまりに不便。

 だが、幸いなことにそんなことはなく、ダンジョン外であってもスキルは発動するために重たい荷物を背負って歩くことはできる。


 これは【錬金術師】にも言えることだった。

 琴葉の職業である【錬金術師】が当たり職業だといわれるのは、ダンジョンの外であっても有能優秀であり、かつお金を稼げるからである。

 帰宅途中で琴葉とも話していたのだが、彼女は今のところ積極的にダンジョンに潜る意思はないようだ。

 なにせ、非アクティブモンスターであるウサギですら倒すことを嫌がるくらいだ。

 攻撃を行ってくるモンスター相手に戦おうという気はないとのことだった。


 だが、【錬金術師】という職業を活かす気はあるとのこと。

 それは、探索者ギルドへ行って力を使うことで実現できるようだ。

 琴葉はまだ学生であり、基本的には学業が一番大事。

 なのだが、クラブ活動は行っておらず放課後には時間がある程度あるということで、学校が終わり次第探索者ギルドへ行くつもりであると教えてくれた。


 探索者ギルドには探索者のための施設があり、そこには購買を行う店もある。

 そして、ギルド内にはレンタルスペースがあるのだとか。

 レンタルスペースには【錬金術師】や【鍛冶師】などといった生産系の職業を得た探索者がスキルを使ってものづくりを行えるようになっている。

 例えばだが、【錬金術師】である琴葉ならばレンタルスペースで提供される薬草を用いてポーションを作ると、その作成したポーションの質と量に応じた金額分を購買部が買取してくれるシステムがあるのだ。


 薬草というのも当然ダンジョン産の素材である。

 もしも、探索者ギルドからの支援がなにもなければ【錬金術師】は自分でダンジョンに薬草を採取しに行き、それによって手に入れた素材で【調合】や【錬金】を行うことになるだろう。

 が、それはどうしても時間がかかる。

 すべてのダンジョンで薬草が手に入るわけでもないので、必要な素材があるダンジョンまで足を運ぶだけでも労力なのだ。


 その手間を惜しんで、せっかくの優秀な職業の探索者がライセンスを取得したにも関わらず、普通の一般の仕事につくことになればそれは探索者ギルドとしても損失となる。

 なので、レンタルスペースを用意し、そこで生産職に必要な基本的な素材を提供することでスキルレベルを上げやすくしているのだそうだ。

 ある程度レベルが上がればさらに良い品が作れるようになり、そうなればほかの仕事をしようと思わなくなるほどに手に入れられる金額も大きくなる。

 また、探索者ギルドの購買で売ることができる商品を確保しやすいという面もあるのだろう。


 いいなぁ、と思ってしまう。

 当たり職業と呼ばれるだけあり、手厚い仕組みがすでにあるのだからうらやましい。

 その点でも、【運び屋】はハズレだな。

 【重量軽減】があるとはいえ、多少荷物が軽くなるだけだ。

 それによって何かを生み出すことができないのだから。

 おかげで探索者ギルドから【運び屋】に出される提案といえば、日当いくらのダンジョン内での荷運びという本当にただのバイトみたいなものだけだった。


 探索者ギルドを通して【運び屋】の俺が強くなることは難しそうだな。

 琴葉がカレーを作り終えるまでに調べた情報で出した結論は結局わかりきったものだった。

 ずっと見ていたスマホを置いて、絨毯を敷いた床の上にごろっと横になる。

 どうやらそれで眠ってしまったようだ。

 しばらくして琴葉から声を掛けられて目が覚めた時には、部屋の中には食欲をそそるいいにおいが広がっていたのだった。

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