ハズレの理由
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氏名:如月真央
性別:男性
位階:LV1
職業:【運び屋】
所持スキル:【収集Lv1】・【重量軽減Lv1】・【体力強化Lv1】
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俺がダンジョンでモンスターを退治し、【運び屋】としての職業とスキルを得た。
探索者ギルドでの【鑑定】でもそうだし、琴葉にも【鑑定】してもらって間違いない情報だ。
【鑑定】でわかることは三つある。
その人の名前や性別は変わらないので、肉体レベルと職業、そしてスキルの三つだ。
ダンジョンでの戦闘を経験してからレベルが発生するとされるため、ライセンスを取得した直後の人は全員レベルが一だ。
しかし、このとき肉体的な強さは数値化されているわけではない。
つまり、レベルが同じ人同士であっても力の強さや体力、俊敏性などは違うということになる。
なので、肉体レベルを他者と比較する必要はあまりないのだが、それでもレベルという存在は無視できない。
ダンジョンでモンスターを倒すことでレベルの向上がみられるのだ。
そして、レベルが上がればその人の身体的強さも向上する。
なので、より多くのモンスターを倒すことができる者はどんどん強くなれるし、そうでない者は変化がないというわけだ。
ちなみにだが、レベルが一のままであっても筋トレすれば力は上がるし、ランニングすれば体力はつく。
なので、ダンジョン外の努力は無駄にはならないが、それでもダンジョンに潜る者にとってレベルの存在は決して無視できない。
肉体レベル以外の二つだが、これはライセンス取得直後の者であれば職業の影響が大きい。
俺は【運び屋】となったことで三つのスキルを手に入れたからだ。
琴葉の場合は【錬金術師】となったことで【鑑定Lv1】・【調合Lv1】・【錬金Lv1】の三つのスキルを得ている。
たいていの職業では自動で一から三個ほどのスキルを得られるらしいが、それはその職業に見合ったものであるということになる。
職業である【運び屋】にはレベルという概念はない。
が、スキルは違う。
スキルにはそれぞれにレベルが設定されており、それは使い込んでいくことでレベルを上げることができるようになるのだそうだ。
【収集】ならばレベルを上げるほどに遠く離れた距離の者からも同意を得られれば採取したり取得した物を集めることができるようになる。
【重量軽減】や【体力強化】は重たい物を持ったり、持久力を高める行為を行うことで向上が見込まれるだろう。
なので、ハズレ職業であると言われることの多い【運び屋】でも今よりも強くなれる可能性は十分にある。
だが、ここで一番の問題はモンスター退治に向いているスキルがないというところだろうか。
戦闘職と呼ばれる職業を得ていれば、低難易度のダンジョンで出てくるモンスターであれば比較的楽に討伐できるらしい。
しかし、今の俺の状態だとお野菜ダンジョンに出てくる非アクティブモンスターであるウサギにすら苦戦する始末だ。
しかも、問題になるのが肉体レベルを上げるには自分でモンスターを倒さねばならないというところにあった。
要するに何人かと共同でダンジョンに入り、そいつらが戦闘職で俺が【運び屋】としての仕事を全うしたとしよう。
俺は戦闘職の者たちのサポートを必死になってやったところで、モンスターを倒せるわけではない。
そうなるとほかのメンバーはどんどん強くなっていくが、【運び屋】の俺はスキルレベルは伸びるかもしれないが、肉体レベルには変化がないのだ。
いわゆるゲームのようにパーティーを組めばその全員で経験値が共有されたり、分配されたりしないというのが、このリアルなダンジョンの仕組みであるということになる。
【運び屋】がハズレといわれる理由がここにある。
誰が好き好んで仕事が休みのときにまで危険のあるダンジョンへと行き、ほかの連中の下働きをして、けれど強くもなれない道を選ぶというのだろうか。
しかも、ダンジョンは何日も、何週間も、何か月も潜ったりしないということもある。
もしも、ダンジョンの奥深くに潜らなければならないのであれば【運び屋】は必須のメンバーであるとして重宝されるかもしれない。
が、現実にはそんなことはしないのだ。
ダンジョンは日本だけでも数多く確認されている。
そして、国は各ダンジョンに危険度にそって分類し、その情報を公開している。
お野菜ダンジョンの正式名称はF-47ダンジョンだ。
F級という危険度の低いダンジョンの公開順で47番目ということになる。
つまりは、だ。
ダンジョンに潜ってレベルを上げ、強くなっていった者は、より強いモンスターが出て稼げるダンジョンに行けばいいのだ。
同じダンジョンの奥深くに行くよりも、上位のダンジョンの入り口から近い、浅い階層を探索したほうが儲かるとしたら、【運び屋】なんてそうたいして重要な存在にはならないだろう。
なので、肉体レベルを上げて強くなっていきたいのであれば一緒にダンジョンに潜る戦闘職の者を探してもあまり意味はないということになる。
それならば、自分の力で倒せるモンスターを地道に倒していったほうがよい。
このダンジョンから出て、家に帰ったら、きっちり調べてみようかな。
経験値効率のおいしいダンジョンが近所にないかどうかだけでも確認しよう。
そう結論を出した俺は、しばしの休憩の後、琴葉と一緒にお野菜ダンジョンから脱出するために出入り口へと向かって歩いていったのだった。
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