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ショートショート6月~

王子さまとわたし

作者: たかさば
掲載日:2020/06/13

一人で、草原のシロツメクサを集めて、花冠を作っていたの。

そこに、白馬に乗った王子様がやってきたのよ。


ぱからん、ぱからん、ぱからん。


とっても大きな白馬の上から、王子様が私に声をかけた。


「君に世界を見せてあげる。」


王子さまは、私をふわりと抱え上げて、白馬の上に、のせてくれた。


広い、広い草原の、遠い、遠い端が見えたわ。


私の目の前に広がっていた草原は、こんなにも広かったんだ。

私の目の前に広がっていた草原は、あの場所で終わりなんだ。


「この草原の向こうには、もっと広い世界が広がっているんだよ。」


草原の向こうに広い世界があるというならば。


「僕が君を、ここから連れ出してあげる。」


私は広い世界を見に行きたいと願ったの。


私は作り終えた花冠を一つだけ持って、王子様にさらわれたわ。


王子様の連れてってくれた世界は、とても大きな世界だったけれど。


どこにも広い草原がなくて。

どこにも広い空がなくて。

どこにも私の自由がなくて。


私、何も知らなかったわ。

私、自分が何者かという事すらわかってなかったわ。

私、とても無知だったわ。


シロツメクサの花冠が、私をずいぶん慰めてくれていたけれど。

いつしか枯れて、何も言わなくなってしまったわ。


何もない部屋で、私はただ一人、毎日訪れる王子様を待っていたけれど。

王子はすぐに命を終えてしまったわ。


人は、ずいぶん、急いで、輪廻の輪に戻るものだと、気付いたわ。


王子はずいぶん、私のもとに生まれ変わっては姿を見せたけれど。

誰一人として私を覚えていなかったのよ。


いつもいつも初めましてから始まって。

いつもいつも生まれ変わったらまた君と恋をすると約束をして。

いつもいつも私のことを忘れて生まれてきて。


最後に王子が生まれたのは、遠い遠い昔の話。


私を囲い込んでいた石の砦は崩れ去って。

私を囲い込んでいた石の砦の隙間からつたが伸びてきたから。

私を囲い込んでいた石の砦から抜け出したのよ。


私がずいぶんぶりに見た青空は。

私がずいぶん昔に見た青空と変わらなかったわ。


人がいなくなってしまったこの場所は。


どこまでも限りなく緑が覆いつくしていたのよ。


人のいなくなったこの星で。

緑だけがただ自由に存在しているわ。


私はずいぶん、寂しがり屋になってしまったみたい。


王子様が、とても愛おしくてならないの。


あんなに私を忘れて生まれてきたというのに。

あんなに私を置いて土に帰ってしまったというのに。


こんなにも、私に涙を流させるなんて。


緑が限りなくあふれるこの星で。

私は一人で、人の誕生を待ちわびて。


星の命の尽きる前に。


人が再び生まれることを祈りながら。


私はただ一人、シロツメクサの花冠をこしらえるの。



私はただ一人、愛する人を、待ち続けるわ。



私はただ一人、愛する人を、愛し続けるわ。

こちらの作品は連載中の「恋をしてみないかい」https://book1.adouzi.eu.org/n6305gi/

にも掲載しています。


ちょっとせつない、普通の人と普通じゃない人との恋のお話をまとめました。ぜひご覧下さい。


新作あります。

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― 新着の感想 ―
[一言] これは、いい話。朗らかさと同時にどこか寂しさを感じさせる。私とは誰なのか、気になりますね。そこを明らかにしないところがいいところです。でも、私気になります。
[良い点] とりあえず、終末ちゃんの幸せを祈りましょう。 最後の行間が地味に響きました。 [気になる点] 花言葉は『約束』かな? [一言] もしかして、今日の昼ごろアレを見ました?
2020/06/13 19:33 退会済み
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