表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫紹クン! ~孫策(オヤジ)の夢はオレが継ぐ~  作者: 青雲あゆむ
第2章 中華制覇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/64

40.豫州への侵攻 (地図あり)

建安22年(217年)3月 荊州 南陽郡 宛


 大軍による侵攻で、南陽郡の制圧には成功したものの、我が軍もそれなりの損害を被った。

 それに加え、南陽の各都市を統制する必要もあったため、それ以上の侵攻はできなくなる。

 しかしそのおかげもあって、我が軍の士気は高いままだった。


「いよいよ豫州よしゅうに攻めこもうと思う」

「おお、ようやくですか。待っておりましたぞ」

「フヘヘッ、腕が鳴るってもんだ」

「うむ、にっくき張遼を、討ち取ってくれるわ」


 そう言うのは呂範、魏延、凌統などの武将だ。

 しかしそれに対し、甘寧が冷静に問いを放つ。


「攻めこむのはいいんですが、敵の状況はどうなんです? だいぶガッチリ、固められてるんじゃないですか?」

「ああ、それについては陸遜、頼む」


 その答えを陸遜に振ると、彼が地図を示しながら、説明を始める。


「敵はこの陽翟ようたくに兵を集め、守りを固めています。その数はおそらく、20万に迫るでしょう」

「20万だとっ! 聞いてねえぞ」

「俺たちの倍じゃねえか」

「そんなんで、勝てるのか?」


 その衝撃的な兵力の見積もりに、数人の武将が驚きと疑問の声を上げる。

 するとそんな彼らを、厳しくたしなめる声があった。


「落ち着け! その程度の兵力など、事前に予想されていたことだ。これぐらいでおたついていては、勝てるものも勝てないぞ」

「し、しかし周瑜さま。普通に考えたら、倍の軍団になど勝てませんよ。それとも何か、策でもあるんですか?」


 周瑜に反論したのは凌統だった。

 しかし周瑜はまったく動じた様子も見せず、答えを返す。


「もちろん、策はある。しかしそれも、前線に立って戦う諸将の協力あってのものだ。貴殿らがそのようにうろたえていては、思うようにはいかんだろうな」

「ほう、さすがは周瑜さまだ。しかし今回の戦場は、曹操が得意とする中原だ。9年前の赤壁とは真逆になりますが、それでも勝てるんですかい?」


 今度は甘寧が、ニヤニヤと笑いながら質問する。

 それは周瑜を馬鹿にしているのではなく、彼なりに見当をつけている感じだった。


「たしかに9年前とは逆だな。今回は我らの方が、不慣れな中原に乗り出さねばならん。しかも兵力が半分程度しかないとくれば、心配するのも当然であろう」

「でしょうな。それで、どうするつもりなんです?」

「うむ、基本的には貴殿らに、多少の無理をしてもらうことになる」

「やはり、そうきますか。まあ、なんらか無理をしなきゃ、倍の敵になんて勝てないですからね」

「そうだ。しかしそれに見合うだけの成果は、出すつもりだ」

「だからそれをどうやるのか、教えてくださいよ」


 しつこく食い下がる甘寧に、周瑜はいたずらっぽい顔で答える。


「それは秘密だ。はかりごとは密なるをもってよしとす、と言うではないか」

「チェッ、おもしろくねえな。まあ、いろいろと想像は、つきますけどね」

「えっ、なんだよ、甘寧、教えろよ」

「それは自分で考えろって」


 呂範が甘寧に訊ねているが、甘寧はとぼけて答えない。

 他の者も相談をしていたが、少なくとも周瑜の言葉を疑う者はいないようだ。


 すると陸遜が、別の話を持ち出してきた。


「そういえば劉備が、豫州攻めに加えてほしいと言ってきたようですが、どうするのですか?」

「え? ああ、そんな話があったな。だけどそんな余裕があるなら、先に涼州を落とせと言って、断ってある。よその部隊が混じっても、面倒だからな」

「まあ、そうでしょうね。しかし劉備は不満を抱くでしょう」

「その辺は、後々の分配で調整するしかないな」


 実は宛城を落としてから劉備が、自分も豫州攻めに加えろと言ってきていた。

 しかしその部隊は大した兵力でもないし、こちらの指揮に従わない可能性もあるので、断ったのだ。

 そもそもそんな余裕があるなら、もっと涼州攻めをがんばれと、遠回しに言ってある。

 これで発奮してくれるといいんだが。


「いずれにしろ、俺たちが苦しいのは変わらない。しかしみんなには期待してるので、全力を尽くしてもらいたい」

「「「おうっ!」」」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安22年(217年)4月 豫州よしゅう 潁川郡えいせんぐん 陽翟ようたく


 その後、春の訪れと共に我が軍は、豫州へ押し出した。

 途中は妨害らしい妨害もなく進み、俺たちは敵の集結する陽翟の付近まで到達する。

 そして敵は20万の軍を分散することなく、陽翟の周辺で待ち受けていた。


「おお、壮観だな」

「ええ、さすがは中原の覇者、というところでしょうか」

「しかし曹操みずからは、出てきていないようですな」

「ああ、しかし主将は夏侯惇かこうとんらしいぞ。油断はできないだろう」


 敵城の周辺に布陣する20万の軍は、圧巻の眺めだ。

 しかしその主将は曹操ではなく、夏侯惇らしかった。

 とはいえ夏侯惇も、曹操に最も信頼されたという、歴戦の宿将だ。

 決して侮るべきではないだろう。


 対する俺たちは、あらかじめ目星をつけておいた場所に、突貫工事で土壁を築いていた。

 この時のためにスコップやツルハシもどきの工具を準備し、工事の訓練も兵に施してある。

 おかげで敵が様子を見ているうちに、即席の野戦陣地ができつつあった。


「孫紹さま。なんだってこんな陣地を築いてるんで? とっとと攻めた方がよくないすか?」

「まあ、そう焦るなって、呂範。ただでさえ劣勢なのに、正面から突っかかっても、勝ち目は少ないだろ」

「そりゃあ、そうですけど、こもったままじゃ、勝てませんよ」

「それも分かってる。ここからさらに見張り台を組んで、敵の動きを監視するんだよ。そのためにはまず、守りを固めなきゃな」

「ほえ~、なるほど」


 じれったそうにしている呂範に説明すると、ようやく納得してくれた。

 そんな話をしているうちにもどんどん土壁が築かれ、さらに見張り台の建設も始まった。

 見張り台はあらかじめ加工しておいた木材を組み合わせることで、短時間で作れるよう工夫したものだ。


 おかげで10メートルほどの見張り台が立ちはじめると、ようやく敵に動きが見えた。


「ほ~ら、敵があわてはじめた」

「あ、そうっすね。よ~し、俺もいっちょ出迎えてやりましょうかね」

「ああ、頼んだぞ」


 敵の一部が見張り台の建設を阻止しようと、突出してきた。

 それを我が軍の前線部隊が、土壁を盾にしながら攻撃している。

 さらに一部には敵の左右に回りこんで、包囲しようとすらしていた。

 それに気づいた敵部隊が、あわてて後退していく。


「フフフ、とりあえず先手は取れましたね」

「ああ、あとはどれだけ自在に、軍を動かせるかだ。そっちは頼んだぜ、周瑜」

「はい、お任せあれ」


 そう言って周瑜は、余裕の笑みを見せていた。

今回の舞台は豫州(荊州の右上の紫部分) 潁川郡の陽翟ようたくです。

左側の父城のさらに左に、南陽郡の魯陽があります。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


地図データの提供元は、”もっと知りたい! 三国志”さま。

 https://three-kingdoms.net/

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太平洋戦争の歴史改変モノを読みたかったら、こちらをどうぞ。

未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~

現代人が明治にタイムスリップして、歴史をひっくり返すお話です。

― 新着の感想 ―
[一言]  見張り台はあらかじめ加工しておいた木材を組み合わせることで、短時間で作れるよう工夫したものだ。 ↑ 嘘か真かは不明ですが 墨俣の築城で作ったとされる工法ですね 元日本人ならどこかでやってみ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ