表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫紹クン! ~孫策(オヤジ)の夢はオレが継ぐ~  作者: 青雲あゆむ
第1章 実権掌握編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/64

幕間: 劉備クンは成り上がる

建安15年(210年)2月 荊州 武陵郡 漢寿


 俺の名は劉備 玄徳。

 前の左将軍にして、徐州牧も務めたことのある男だ。


 荊州で劉表の厄介になっていた俺は、劉表の死と曹操の侵攻で窮地に陥った。

 ところが同盟を組んだ孫権の軍が、何倍もの敵を撃退してしまったのだ。

 俺たちはこれ幸いと、領地の獲得に走ろうとしたのだが、世の中はそう甘くない。


 いろいろと周瑜に先回りをされた挙句、武陵郡だけしか手に入らなかった。

 そこで軍備の増強と、益州の奪取計画に勤しんでいたんだが、そこへまた孫権から申し出があった。

 今度は共同で益州に攻めこんで、領地を山分けしようってんだ。


 最初は同じ劉姓だから嫌だといって、協力を拒んだんだ。

 できれば単独で、益州を取りたかったからな。

 だけど向こうはこっちの思惑など、すっかりお見通しって感じで、逆に脅しを掛けられた。


 俺が協力しなくても、孫権はいずれ益州に侵攻すると言うし、逆に劉璋のような罪人を放っておくのかと、責められる始末だ。

 それじゃあ、実際に益州をどう治めるんだと聞けば、俺に漢中の守りを任せたいって言うんだぜ。

 しかも俺の働きしだいでは、周辺の郡も任せてくれるらしい。


 今の領地規模からすれば、何倍にも増える大盤振る舞いだ。

 よくこんなことを承知するもんだな。

 いや、それだけ俺が頼りにされてるってことか。

 ここは一発、やってやろうじゃねえか。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安16年(211年)4月 益州 広漢郡 


 その後、1年近くを準備に費やし、いよいよ俺たちは益州の攻略に動いた。

 どうやったのか知らねえが、孫権陣営は見事に内応者を作り出し、俺が益州入りするお膳立てを整えてくれたんだ。

 まあ、それも劉璋と同じ姓を持つ俺がいなきゃ、成り立たない策だけどな。


 もっとも、いま名乗ってる臨邑侯りんゆうこう 劉復りゅうふくの末裔ってのは、俺の勝手な自称だ。

 実際に漢の宗室である劉璋とは、大きな違いがあるんだが、ヤツは藁にもすがる思いで、俺に援軍要請を出した。


 おかげで俺たちは、約1万の兵を率いて益州入りし、行く先々で歓待されたわけだ。

 まったく、劉璋ってのは本当におめでたいヤツだな。

 こんな甘ちゃんじゃあ、益州はいずれ誰かに取られるだろうから、俺がいただいてやろうってもんだ。


 やがて俺たちは広漢郡の涪に到着すると、突如、牙をむいた。


「て、敵襲~。劉備軍が裏切った~っ!」

「おのれ、卑怯者~!」


 すっかり油断していた益州軍に襲いかかり、砦のひとつを奪い取ったのだ。


「フハハッ、ぬるいぬるい。歯ごたえがなさすぎるわ!」

「ああ、まったくだぜ。こうも簡単にいくとは、思わなかったな」

「ですね。これなら敵を引きつけておくのも、なんとかなりそうです」


 陣頭に立って戦った関羽、張飛、趙雲らが、楽しそうに言葉を交わしている。

 一騎当千の彼らの働きによって、ほとんど損害もなく砦を奪えた。

 今後はこの砦を拠点に、益州軍を引きつけておくのが、俺たちの仕事だ。


「諸葛亮、ちゃんと孫権軍は動いてるんだろうな?」

「ちゃんとこちらの状況は伝えてあるので、すでに益州入りしていることでしょう。さすがにこの機会を逃すほど、孫権も間抜けではありますまい」

「ああ、そう願うぜ。まあ、劉璋の間抜けぶりを見ると、単独でも益州を取れそうだけどな」


 そんな冗談を言うと、諸葛亮が真面目な顔で否定する。


「……さすがにそれは、難しいのではありませんか。できたとしても、時間が掛かりすぎます」

「心意気の問題さ。なにしろ俺たちの働きしだいで、受け取る領地が変わるんだからな」

「たしかにそうですな。それでは私も、知恵を振り絞るとしましょう」

「おう、頼むぜ、軍師どの」


 これこれ、この言葉だよ。

 一度でいいから、言ってみたかったんだよな。

 以前は行き当たりばったりで動いてたから、失敗も多かったんだ。


 今は諸葛亮が細かいとこを見てくれるから、ぐっと安定感が増している。

 この調子で今後も、どんどん成り上がってやるぜ。

 そのためにもちゃんと仕事してくれよ、孫権軍。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


建安16年(211年)7月 益州 蜀郡 成都


 その後の戦況は、ほぼ目論見どおりに推移した。

 俺たちが益州軍の主力を引きつけている間に、孫権軍が成都を急襲し、2ヶ月ほど囲んだ後に、劉璋が降伏したそうだ。

 そして戦後処理を済ませて、成都へ到着すると、顔を合わせた周瑜に、一発かましてやったんだ。


「いよう、久しぶりだな、周瑜どの」

「ああ、久しぶりだ、劉備どの」

「そっちは上手いこと、劉璋を降伏させられたみたいだな。だけど俺たちの働きがなければ、こうも上手くいかなかったってのは、分かってるよな?」

「そうかもしれないな。しかし我らの軍勢がいなければ、できなかったことも事実だ」


 しかしさすがは周瑜。

 澄ました顔で、応じてきやがる。

 やはり一筋縄では、いかないな。


 その後の交渉を諸葛亮に任せると、ヤツはそこまでやるかと思うほど、強気の要求を突きつける。

 しかし周瑜たちもある程度、覚悟していたのか、想像以上にこちらへ譲ってくれた。

 なんと漢中郡に加え、広漢郡、広漢属国、蜀郡、そして巴郡の北西部が、俺の支配領域と認められたのだ。


 その人口は300万人に迫る勢いで、今までの10倍以上だ。

 以前、治めていた徐州よりも多いくらいで、これで俺も大領主である。

 しかも周囲を峻険な山々に囲まれてるから、外からも攻められにくい。


 孫権との関係さえ良好なら、曹操を倒すのも、夢じゃないかもしれないな。

 そのためにもとっとと漢中を制して、力を蓄えるとするか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太平洋戦争の歴史改変モノを読みたかったら、こちらをどうぞ。

未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~

現代人が明治にタイムスリップして、歴史をひっくり返すお話です。

― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり劉備自身もこの対応が甘いと感じてるんだな わざわざ劉備を肥え太らせてるのだけは謎だ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ