7-1 世界樹の門
「ドラヤーンの街って冒険者ギルドある?」
エルフ村に長期間滞在してるが、このあたりで一度、冒険者カードの更新やらなんやらしておきたいなと思い、俺はライナに尋ねてみた。
「ちゃんとありますよー。ほら私も」
そう言ってライナは自分の冒険者カードを見せてくれた。
「お、ちゃんと作ってあるんだ」
よく見てみると、ライナの職レベルは精霊使いでBランク、そして冒険者ランクもBになっている。
「冒険者ランクがBじゃないか。
コツコツと依頼こなしたのか?」
「いえ、なんかお祖母ちゃんの孫だからBランクにしといてやるって。
ギルドマスターの人がくれたんです」
「すげぇ七光りだな。
もしかしてギルドマスターってエルフ?」
「うん、そうですよ」
えこひいきだな。
そういえば、Bランクまではギルドマスターの裁量でなんとかできるって、メルドーラの街のギルドマスターも言ってたよな。
ライナの案内で俺たち4人はドラヤーンの街まで行ってくることにした。
予定通りに、冒険者ギルドで4人とも冒険者カードの更新をすませ、他に必要な買い物もすませておいた。
持ち金の大半をビレニアの通貨に両替しちゃってあるから、故郷へ飛ぶにあたっても、こっちで買い物しちゃったほうが便利なんだ。
そしてふたたび、エルフ村へ。
森に入る時にアリサとヒルダは恐る恐るって感じだったが、ライナといっしょのためか、まったく大丈夫のようだった。
いよいよ、世界樹の森への旅立ちだ。
世界樹の門をくぐってユイナさんに送ってもらえることになっている。
見送りにはファンナさんも来てくれた。
「それでは、ユイナさん。よろしくお願いします」
「待って」
ライナから静止がはいった。
「あのね。
もしかしたら、わたしの力でもヒルダも連れて世界樹の門を抜けれるかもって。
そんな気がするの」
「ライナったら、いきなりそんなこと言い出して。
お祖母様以外にそれをできる人は、村にもそう何人もいないのよ」
ファンナさんが止めにはいる。
「でもね、わたしもシモンのおかがでずいぶん力がついた気がするの。
特に試練が終わったあとに思ったの。
わたしにも、きっとできるって」
ライナは自信ありげだ。
「もしライナが失敗したらどうなるんですか?」
俺がユイナさんに尋ねると、
「別にそのときは、まだ目的地に行ったことのないやつがここに残されるだけじゃ。
やってみるがいい。
ダメだったら、そのときは残されたやつを送っていってやる」
「ありがとう、おばあちゃん。
みんなもそれでいい?」
ライナが張り切って俺たちに尋ねる。
「あー、期待してるぞ」
「ライナにまかせるんですの」
「がんばって」
「皆、ありがとう。
じゃ、わたしのまわりに集まって。
そして皆、私に右手をかさねて」
ライナは右手を前に出す。
俺たちはその上に右手を重ねた。
試練のときと似た感覚だ。
視界が歪んだと思ったら、何やらぼんやりした空間に入り込んだ気がする。
そして光が弾けたと思ったら、周りの景色が変わっていた。
俺は周りを見渡す。
ヒルダもちゃんといる。
もちろん、ライナやアリサも。
「ライナ、やったな」
「すごいですの」
「おめでとう」
俺たちの祝福にライナは満面の笑みで答える。
ちょっと涙ぐんでるな。
と思ったら、急にあらたまって、
「わたしの力なら、このくらいのことはできて当然ですから」
何か急に設定を思い出したようだ。
すぐ忘れてるんだから、もうそういう設定とかいいのに。




