6-8 世界樹の試練 その1
「すみません、姉のファンナに言われまして、旅立つなら試練を終えてからいけと」
「ファンナさんってあいさつしてないけど、いっしょに住んでるわけではないんだ」
俺の問いに対してライナは、
「はい、姉はもう結婚して子供もいますので別の家に住んでます。
小さい頃、母を亡くしてからはずっと姉にいろいろ面倒見てもらってたので頭が上がらないもので……」
「そうなんだ。
で、その試練ってのはなに?」
「この村の成人の儀式みたいなものでして、世界樹のもとで与えられた試練をこなすという。
普通は1人で行くのですが、すでに決まった相手のいる者はその異性とともに行ってもいいことに……」
「それっていっしょに行くのはエルフじゃなくても大丈夫なんだ」
「はい、あまり過去には例がないようですが、祖母いわく問題ないと」
「俺でよければいつでもつきあうぞ」
「ありがとうございます」
「何か準備することはあるか?」
「いえ何も……。
それでは今日の昼食後にお願いしてもいいですか?」
「わかったよ」
「それは、私たちはお手伝いできることはないんですの?」
「残念ながら、アリサとヒルダに手伝ってもらえることはなさそうです」
「それなら、ユイナさんにいろいろお話聞きたいと思いますの」
「わかりました。祖母には私のほうから言っておきます」
「ありがとうですの」
ということで、俺は昼食後ライナとともに世界樹へ出向いた。
世界樹では1人のエルフの女性が俺たちを待っていた。
「はじめまして、ライナの姉でファンナと申します。
どうぞよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ファンナさんは外見上はライナと同じくらいに見えるが、もう400歳を超えているそうだ。
っていうか、今気づいたが俺はライナの年齢知らないから、どのくらい離れてるとかさっぱりわからないんだが。
「ライナの試練には、私が立ち会わせていただきます。
ライナから聞いているとは思いますが、この試練は精神体となって世界樹の中で行われます。
試練の挑戦者が諦めるまで何度でも行えますが、外では時間はほとんど流れておりませんので、時間は気にせず挑戦してください。
詳しいことはライナが知っておりますので、中でゆっくり聞いてください」
いやさっぱり何も聞いてませんよ。
まぁ後でゆっくりライナから聞くことにしましょう。
「それでは始めましょう」
ファンナさんが歌い始めると、やがて視界が歪み、俺たちは世界樹の中へ溶け込んでいった。
気づくと何やら真っ白な部屋にいた。
横を見るとライナがいたが、その姿はなんとなく透けて見える。
っていうか、素っ裸じゃないか。
「あまりじっと見ないでください。
恥ずかしいじゃないですか」
「いや、あまりにもキレイだから……」
「また、そんなこと言って……前を大きくしないでください!」
あ、俺も素っ裸なのか。
「いや、これは生理現象だからしかたない。
ライナがあまりにも魅力的だから……」
「そうやってごく自然にそんなこと言うとか……」
ライナが真っ赤になってもじもじしている。
体が透けてても赤くなるとか不思議だな。
それにしても、外は冬の寒さの中、ここはまったくそういうのを感じない。
精神体だからかな?




