6-6 伝説のテイマー ルチア
「ついでと言ってはなんですが、残る勇者の装備について教えていただけませんか」
俺からユイナさんに話を切り出した。
「盾についてはすでに知っておるな。知りたいのはマントであろうな」
「はい、そうですの」
「マントについて話す前に、ルチアのことを話しておかなければならないな。
伝説のテイマーと言われておるあやつのことを」
ユイナさんは昔のことを思い出すようにゆっくりと話し始めた。
☆☆☆
勇者一行の4人シモン・アリサ・ナターシャ・ユイナは大陸の東の果てで、魔王のいる島へ渡る手段を探していた。
最初は舟でと考えたが、海上は魔族の空からの監視が厳しく、スピードの出せない舟で海を渡った場合、海上で戦いになれば勝ち目が薄い。
かといって人として空を飛べる手段は少ない。
魔法で宙に浮くことは短時間なら可能ではあるが、とても複数人を運べる手段ではない。
そんなときに、龍を操ることができるテイマーがいるという噂を聞き、最果ての村へ向かった。
最果ての村は大陸の東の南部。どこの国にも属さない小さな村。
そして、最果ての村はあらゆる種族のるつぼであった。
人間・獣人・エルフ・ドワーフ・竜人族・魔族らが共に暮らし混血も進んでいた。
各種族たちと上手くいかず、ドロップアウトした者たちが集まってできた村。
人間たちの多くは犯罪者や脱走奴隷たちの子孫であったし、他種族も似たような状態であった。
その村にルチアは暮らしていた。
魔族と竜人族のハーフと言っていたが、どうやら他の種族の血も混ざっているようだった。
要するに魔族の血を濃くひいた父と、竜人族の血を濃くひいた母との混血であった。
龍を操ることができるのは竜人族のみ。他の種族は決して龍を操ることができない。
ハーフではあったが、ルチアは龍に認められて、1匹の龍を友としていたのだ。
勇者はルチアを口説き落とし、勇者一行は魔王の島へ龍の背に乗り渡る手段を手に入れた。
☆☆☆
「ルチアさんが人間でないってのは予想通りだったの」
「まぁ物語であまり詳しく語られてないのは、別に差別ってだけでもないんじゃがな。
活動の場所が最果ての村と魔王の島だけじゃったから、あまり人々に知られてなかったからのぉ。
生き残ったわしやアリサも、わざわざルチアが魔族の血をひいておったとか宣伝することでもないしのぉ」
「言われてみればそうですの」
「わしにしても、イズバーンのほうへ行ったのはわずかであったしの。
その点、勇者やアリサ、それにナターシャはイズバーンでの活動がそれなりに長かったから、あちらではよく知られておった」
「やはりそういった事情は当人たちに聞いてみないと、後から残された情報だけで判断するといろいろ間違った認識になってしまうようですの。
反省して今後の課題にしますの」
「話がずいぶんそれたようじゃ。
マントの話に戻るぞ」
ユイナさんは話を続けた。




