5-4 国境の街トラバリー
旅は順調。
イズバーン王国と隣国ビレニアにまたがって位置するトラバリーの街に到着した。
この街で手持ちの通貨の両替を行い、入国税を支払うのが最も一般的な渡航手段らしい。
国境と行ってもこの街以外は特にその境はあいまいであるので庶民は無視する人も多いらしい。
商人などは後で咎められて商品没収などという事態を避けるため、きちんとこの街を通っているようだ。
俺たちも最初はこの街を無視して一気に森林地帯を抜けて行くルートを考えていたのだが、アリサいわく、なんかきな臭いかもということで、安全策を取って正当なルートで入国することにしたのだ。
「いよいよビレニアなの。
いろいろ楽しみなの」
「ビレニアってどんな国なんですか?」
ヒルダの質問にアリサが答える。
「いろんな文化がごっちゃまぜな国なの。
イズバーンは90%以上が人間ばかりだったけど、ビレニアはそれもごちゃまぜなの。
それでも人間が一番多いけど、半分以下って話なの」
「へーそうなんですか。どんな種族がいるんですか?」
「ドワーフやエルフが割りと多くて、他に竜人族や獣人族がそれなりの数いるそうですの。
小人族や巨人族や数少ないけどいるって聞きますの。
他に魔族との混血の人たちも混ざってるらしいの」
「それらの各種族ごちゃまぜで上手く行ってるのか?」
俺もいろいろ聞きたくなってきたので、
「お互いにあまり干渉しあわないってのが大事みたいなの。
人間の王家が一応あるんだけど、各種族にそれぞれ自治権があるようなの」
「じゃ各種族は別々に住んでるのか?」
「そういう種族ごとの村や街と、ごちゃごちゃに入り交ざって住んでる比較的大きめな街とかあるようなの」
「ふーん、そうなんだ。目的地のエルフ村もそういった村の1つってわけか」
「そういうことなの」
通貨の交換も終えて、いよいよ街のビレニア側へ向かうことになった。
俺たちは冒険者カードを身分証として提示し、所定の入国税を支払った。
「この入国税の支払証が大事なの。
ちゃんとしたルートで入国した証明になるから、なにかあった時に面倒がないの」
「じゃ、なくさないようにしっかりと保管しておかないとな」
「はい、わかりました」
街のビレニア側は見渡すだけでイズバーン側とは変わって、人々の種族がさまざまなのがわかる。
獣人族の女の子のケモ耳は実際に見るのは初めてだけど、確かにいろいろ萌え要素が満点だな。女の子に比べると獣人族の男性はいかにもって感じで怖そうだ。
「お兄様、あまりじっと見つめるのは失礼なの」
しっかりばれているようだ。
確かに礼儀に反するかもしれないから気をつけよう。と言っても、ついいろんな種族を見ると目で追っちゃうんだよな。
「たぶん、この街の人たちはそういう目に慣れてると思うけど、先へ進むとそういうわけにはいかないから注意なの」
気をつけよう。




