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閑話 初夢

「お兄様、もう朝ですよ。

 起きてください」


 アリサの声で夢から覚めた。どうやらすっかり寝坊したようだ。

 あれ?

 アリサってエルフ村に行ってたんじゃなかったっけ?


「もう、お兄様ったら、お休みだからと言ってすっかり、お寝坊さんになってるんですの」


 お休み?

 なんのことだろう?


「アリサ、いつの間に帰ってきてたんだ?」


「え?

 アリサは別にどこにも行ってませんですの」


 ???

 なんか話がおかしいな。


 よく見ると、アリサの顔がなんか若返ってるように見える。

 エルフ村でなにか知らない魔法とか美容法とか身につけてきたんだろうか?


「どうしたんだ、アリサ。

 なんか肌がツヤツヤしてるじゃないか」


 こういう時はちゃんと最初に褒めておかないと拗ねるからな。

 結婚生活も長くなると少しはそういう知恵も身についてくるものだ。


「お兄様、どうしたんですの?

 口下手なお兄様にしては珍しいですの。

 でも、そんなこと言っても何も出ないんですの」


 なんだかんだ言って、アリサは喜んでいるから成功だな。


「なにはともあれ、アリサの顔を見れて嬉しいよ」


「お兄様ったらいったいどうなさったんですの?

 急にそんなことを言い出したりして……」


「まぁいいじゃないか。

 それより、もうフェリシアには会ってきたのか?」


「フェリシア……?

 誰ですの?」


「え?」


 なんかアリサがマジメな顔で言ってるけど、なんの冗談だ?


「どうしたんだ、アリサ。

 俺たちの長女じゃないか」


「長女?

 お兄様とわたしの?」


「いったいどうしたんだ?

 本当にアリサなのか……」


 いや、どんなに本物そっくりに化けられても、俺がアリサと偽物とを見間違えるはずがない。

 若返って見えるが、俺の目の前にいるのは本物のアリサだ。


「お兄様ったら嫌ですの……

 急にそんなこと言われても……

 プロポーズもなしに、いきなり子供のこと言われても……」


 なんかアリサが急に赤くなってしまった。

 俺はなにか変なこと言ったか?


「でも、お兄様がそう言うのならアリサはいつでもいいですの」


 アリサは意を決した表情で俺の目をじっと見つめてきた。

 なんかいいムードになってきたけど、これから2人目を作ることになるのか?


 俺はアリサを手元に引き寄せて、熱いキスを……


「お兄様ったら積極的ですの……

 でも、ファーストキスはこんな激しいものでなく、もっと優しく……」


 え?

 ファーストキス?

 なんのことだ。


 俺はふと周りを見回して気づいた。

 ここはカイエラの街の俺たちの家じゃないぞ。

 ガダウェルの実家の俺の部屋じゃないか。


 いつの間に俺とアリサは実家に帰ってきてたんだ?


「ここってガダウェルの実家の俺の部屋だよな。

 俺たち、いつ帰ってきたんだ?」


「お兄様、いったいどうしたんですの?

 アリサもお兄様もずっとここに住んでいましたの」


「だって、俺たち魔王と戦うために冒険者になって……」


「お兄様、新年から夢のお話ですか?

 なんか面白そうな夢を見てたようですの」


 夢?

 まさか……


「お兄様、もしかして卒業後に冒険者になるつもりですの?

 でも、お兄様と一緒に冒険者って悪くないですの。

 どんな夢だったんですの?

 アリサに話してほしいですの」


 俺は勇者になってアリサや他の皆との冒険の数々の話をアリサに聞かせた。

 アリサは最後まで目を輝かせて聞いていた。


「素晴らしい話ですの。

 特にアリサとお兄様が結ばれるってところが最高ですの。

 勇者や魔王うんぬんは抜きにして、そのあたりだけでも本当のことにしたいんですの」


 おいおい……

 夢だったとすると、なにか俺は取り返しのつかない言動をしてしまったんじゃないのか?


 俺とアリサが本当の兄妹じゃないってのも夢だとすると、ちょっと問題がある気が……


 これは困ったぞ……





「シモン様、シモン様」


 ヒルダの声で俺は起こされた。


「どんな夢をみていたんですか?

 ニヤニヤしてたと思ったら、最後にうなされてましたが」


 あれ?

 今のは夢か。


 どうやら、居間でうたた寝しながら夢を見ていたようだな。


「でも、シモン様は本当にアリサ様のことが好きなんですね。

 寝言で何度も『アリサ』って優しそうに言ってましたよ」


 おやおや……

 長いことアリサに会ってないせいで、アリサの夢を見てしまったのかな。

 アリサのことが好きってのはあえて否定はしないが。


「待望のアリサ様が帰って来てますよ」


「え?」


 俺は飛び起きて玄関の方へ駆け出す。


「お兄様、あけましておめでとうですの。

 新年くらいはお兄様やフェリシアと暮らしたくて一時帰省ですの」


「おかえり、アリサ」


 俺はおもいっきりアリサを抱きしめる。

 そして夢の時よりも激しくキスを。


「わたしも帰ってきてるんですけどね」


 ライナがむすっとした顔でアリサの後ろから声をかけて来た。


 フェリシアの手を引いたリィをそれを見て無遠慮に笑う。

 キャロルを抱っこしてソランの手を引いたヒルダが微笑んでいる。


 久々に一家8人が揃った新年の日。

 今年も平和な日々が送れますように。

 あけましておめでとうございます(遅

 タイトルからしてネタバレな夢オチです。

 夢オチって結構好きなんですよ。


 すっごーーーーーーーーく、ひさびさな更新は閑話になりました。

 いつまでも連載中のままほっておくのもなんですので、キリのいいこのお話で完結としておきます。

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