7 女戦士
北に向かっての旅は順調……だったんですけどね。
ドルナビアの街で変なやつに引っかかっちゃったんですよ。
「ねぇねぇ、あなたたちが噂の勇者一行ってやつですよね。わたしも連れて行ってよ。
こう見えてもなかなか強い戦士なのよ。他の子たちよりぜったい役に立つからさ」
うちのパーティーはわたしが加わった現状では、純粋な前衛はシモン一人なのよね。
実際のところは、アリサが前衛も後衛もなんでもこなしちゃうから、まったく困ってないんだけど。
傍から見たら、確かに戦士がいたほうがよさそうなパーティーバランスかもしれないです。
その女戦士はボンキュッバンって感じで男好きのするタイプってやつですね。
スケベなシモンならもしかしたら……って思ったんだけど、アリサはぜんぜん気にしてない様子。
昼食のときにそっとアリサに聞いてみたところ、
「ああいうのはシモンのタイプじゃないから大丈夫よ」
って。本当かな?
ナターシャもすっごくスタイルいいけどさ。
「シモンはおっぱいの大きさで人を判断しないわ」
なんだそうですよ。そういうものなんでしょうか?
「とはいえ、シモンはなかなか女の子に強いこと言えないでしょうからね。
そろそろ鬱陶しくなってきてるし、追っ払いましょうか?」
「それがいいかと思いますよ。わたしもあんな感じの人とうまくやっていけそうにないですし」
アリサの一言にナターシャも同意したようです。わたしもまったくもって同感。
女戦士はまだ、シモンに絡んでいたようです。
アリサが女戦士の横に立って、呼びかけます。
「戦士さん、ちょっとしつこすぎって思うんですけど?」
「あら、ちんちくりんの賢者さんが、何を言い出すのかしら?」
アリサに対して、女戦士は酷いことを言ってくれますね。
「うちのパーティーにあなたのような未熟な戦士の居場所はないのですよ。
証明してみましょうか? うちのパーティーの誰とでもいいので、一騎打ちしてみましょう。
一騎打ちで勝ったら、その人と交代であなたをパーティーに入れることにするわ。
当然、こちらも魔法なしでお相手しますわよ」
「言ってくれるわね。わかったわ。
そうね、そこのチビのエルフとやらせてもらおうかしら」
えーーー!
魔法なしで戦士と一騎打ちって聞いてませんよ!
弓で戦うわけにもいかないよね。
そうなると、手持ちの武器って言ったら杖?
こんな魔法補助用の杖で一騎打ちするの?
わたしが混乱してガクブルしていると、アリサが耳元でそっとささやきました。
「大丈夫、旅立つ前のあなたとはもうすっかり変わってるはずよ。
シモンとの旅で身についたあなたのその力を見せて上げなさい」
何のことだかわからないよ!
負けたら嫌だなぁ……こんな女戦士がわたしの代わりなんて……
街の広場で女戦士とわたしの一騎打ちとなった。
わたしは両手杖、女戦士は木剣での戦い。
「チビのエルフさん、行くわよ」
女戦士が木剣を構えて走ってきた。
なに? このゆっくりした走り方は……
わたしは余裕でよけて、すれ違いざまに女戦士の脇に両手杖を振るう。
軽く振るっただけのつもりだったのに、わたしの一撃で女戦士は吹っ飛んで苦しそうに脇腹を押さえてうずくまってしまった。
あれ?
もうおしまい?
「勝負はあったようね。約束通り、パーティーにあなたの場所はないわ」
アリサがそう宣言する。
わたしはどうして勝ったのかわからないまま首をかしげるばかりでした。
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「やはり勇者の能力ってのは、あれなんだね。
気づいた頃には自分でも驚くほど強くなっちゃっててびっくりするよね」
ライナにはあらかじめそう言ってあったはずですの。
でも、この勇者としての能力そのものはお兄様と同じで間違いなさそうですの。




