4 旅立ちはこっそりと
先日、第6回ネット小説大賞 (なろうコン)の一次選考結果が発表されて、本作品が一次選考を通過しました。
二次選考の発表は4月末のようですので、1ヶ月間ドキドキしてます。
「俺と一緒に戦ってくれないか?」
話の最後にシモンから口説かれてます。さっきまでのただの下心丸出しのエロい目ではありません。
魔族と戦っていた時の真剣な眼差しです。
このギャップはなんなんでしょうね。
実はさっきからシモンの話を聞いていた時にすでに心が奪われていたんです。
このままエルフ村で暮らしていくのには、わたしの冒険心が耐えられなくなってました。
でも、わたしは族長の娘。
そんな旅が許されるはずがありません。
わたしは悩みました。
行きたい! この勇者とともに思いっきり戦ってみたい。
自分の可能性を信じて広い世界を旅してみたい。
「行きます」
わたしは、シモンの目を見てそう答えました。
「そう言ってくれると信じてた。こう見えても女性を見る目はあるつもりだ」
どういう自信なんでしょう? 女性限定なの?
「準備をします。ここで待っててくれますか?」
「それはいいけど、どのくらいかかるんだ?」
「そうですね。2時間ほど待ってもらえますか?」
その返事が返ってくる前に、ぐーーーと彼の腹の虫が返事をしてくれた。
「先に何か食べるものを用意しますね」
わたしは、集落へ急いで引き返し、パンを買ってシモンのところへ届けたおいた。
「じゃ、このあたりでおとなしくしていてくださいよ」
わたしが家に帰ると誰もいないようだった。
部屋に戻りカバンに急いで着替えを積み込んだ。
そして、両親に向け簡単に手紙を残すことにした。
☆☆☆
お父様、お母様
噂されていた魔王の侵攻は各地で実際に起こっているようです。
このまま、わたしはエルフ村でおとなしく暮らしていくことはできないと感じました。
わたしの力でどこまでできるかわかりませんが、魔王との戦いに向かいます。
苦しい戦いになると思いますが、無駄に命を捨てようとは思っていません。
いつかきっと戻ってきますので、挨拶もせずに旅立ちます。
ユイナ
☆☆☆
慌てて思いつくままに書いたので、うまく今の気持ちが伝えられてる気がしません。
やはり手紙の文面ってのは時間をかけて考えないとダメダメみたいです。
とは言っても時間がないのでこのまま残しておきましょう。
早くしないとお父様たちが、いつ戻ってくるかわかりませんからね。
着替えを詰めたカバンと、愛用の弓と杖を抱えてわたしはそっと家を離れました。
今度帰って来るときは、魔族との戦いに決着が着いてからでしょうね。
そうして、わたしはシモンと合流して、二人でそっとエルフの森を抜けたのでした。
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「ふーん、その時の手紙がまさか何百年もずっと保存されてるとは、お祖母ちゃんも計算外だったのね」
ライナはどうやらその文面を知っていたようですの。
聞くところによると、村の英雄の残した手紙ってことで、寺小屋みたいな学校で教科書にずっと載ってるらしいですね。




