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2 少年が空から降ってきた

 わたしはユイナ。

 エルフ村の族長の娘、幼い頃から精霊たちから愛され、今では村でも有数の精霊使いと言われてるんだ。

 と言ってもまだ十分に若いですよ。年齢的にも(エルフとしては)十分に若いし、見た目は……なんか成長が遅いのよね。なんていうか特に胸のあたりの成長が。

 他種族と比べてエルフの胸はやや控えめの傾向にはあるんだけど、そのエルフの中でも平均以下ってのはちょっと問題だと思わない?


 村のはずれの泉でそんなことを思いながら一人で水浴びしてたのよ。

 そしたらいきなり、


 バシャーン!


 なにか落ちてきた? すごい水しぶきが!

 この泉、それほど大きくない割に中心部は結構深いのよね。

 一体何が落ちてきたんだろう? と思って様子を見ていると……


「いてて」

 人間! しかも男が!


 この村はまわりを森に覆われていて、森全体に魔法がかけられているのでエルフ以外は惑わされてしまって侵入できないようになってるの。

 でも上空まで魔法は及ばないし、だいたいあの勢いで飛んでくれば幻惑とか関係なさそうね。


 それにしても侵入者って初めて見たよ。

 わたしは慌てて木陰に隠れて様子を見ることにした。


「もう、アリサの魔法は加減が効かないのが問題だよな。ここいったいどこだ?」

 人間の男が何やらつぶやきつつ、泉の浅瀬へ向かって歩いてきた。

 どうやら、人間の男はまだ若い少年のようだ。

 剣を腰にした戦士のような出で立ちをしている。


 そんなこと考えてるといきなり妖気を感じた。

 上空から迫る怪しい影、あれは話に聞く魔族?

 その魔族はさきほどの戦士の少年めがけて迫ってくる。


「危ない、後ろから魔族が!」

 わたしは咄嗟に戦士の少年に声をかけた。

 男は反射的に振り返り、剣を抜きながら身構えた。


「くそ、せっかくのチャンスを」

 魔族は三叉をかざして、戦士の少年に迫る。魔族の繰り出す三叉を戦士の少年は剣で払う。

 空を飛んだまま軽快に攻撃を繰り出す魔族と比べて、水に足を取られながらの戦士の少年の方が不利な感じ。


「水の精霊さん、お願い」

 わたしは水の精霊さんにお願いして、魔族を水の中に引っ張りこんでもらった。

 慌てた魔族は体勢を崩し、そのスキを見逃さなかった戦士の少年の剣が魔族のわき腹を大きく切り裂いた。


「ちくしょー、ここは不利か」

 魔族は再び飛び上がるとそのまま飛び去っていった。


「ありがとう。助かったよ」

 魔族が飛び去ったことを確認した戦士の少年は、剣を鞘に収めてこちらへ向かって歩いてきた。

「なんて綺麗なんだ」

 わたしの近くまで歩いて来た少年はいきなりそんなことを口走った。

「ふぇっ!」

 いきなりなんてこと言うのさ。そんなこと言われるの初めてだよ!

 人間って皆こういうものなんでしょうか。


 戦士の少年はわたしのことをじっと見つめる。

 その視線の先は……


 !!!!!!


 やばい、服着てなかった!

 水浴びしてたまま、いきなり人が落ちてきたり、魔族と戦闘になったりで……


 思わずその場でしゃがみ込んじゃいました。

 あまりにものショックで悲鳴も出ませんよ。

 っていうか、悲鳴とか出して他のエルフとか来たらそれはそれで困りますし。


 服はどこだと探してみましたが、服を脱いだ場所はずいぶん向こうです。

 どうしよう……

というわけで、外伝ユイナ編のスタートとなります。

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