1 プロローグですの
「それでは、行ってきますの」
ライナといっしょにエルフ村の方までしばらく行ってくる予定ですの。
やっと長女のフェリシアが乳ばなれしたので、2人目を作る前にやっておきたいことを済ませることにしたんですの。
ここ最果ての村ことカイエラの街に住んでもう5年。
大きな家を建てたつもりでしたが、家族も増えて賑やかになってきましたの。わたしの娘フェリシアを筆頭に、ヒルダの息子のソランと娘キャロルが年子で生まれましたの。
そして今もリィのお腹がそろそろ目立ってきた感じですの。
初孫の誕生が近いってことで魔王もずいぶん楽しみにしてるようですの。
フェリシアは何故かリィに一番なついていて、いつもリィのしっぽで遊んでますの。そのリィは最近、人型をしてると悪阻がつらいようで、猫型になってることが多い感じですの。
それでも小さくなると子供の発達に悪いということで大きなまま猫型になって、今もお兄様の膝でモフモフされてますの。そのリィのしっぽにフェリシアがまとわりついている姿を見てるのがとても可愛らしいですの。
「フェリシアちゃんのことは、気にせずのんびりしてきてください」
ヒルダがキャロルを抱っこしてソランの手を引いたまま、見送りに来てくれましたの。
お兄様は手を振ってくれてますけど、フェリシアがリィのしっぽに夢中なままなのがちょっと不満ですの。でも、フェリシアに泣き出されると行けなくなるので、ガマンするしかないですの。
おっぱいをあげる時以外、フェリシアの面倒を他の3人にまかせておいたので、もしかしたらフェリシアはアリサのことを、おっぱいをくれる人としか認識してくれてないのかもしれませんの。
もうちょっとアリサのことを母親としっかり認識させておかないといけなかったとも思いましたの。
ライナがいてくれると、世界樹を通ってエルフ村へはすぐ行けるからとっても便利ですの。
ライナはアリサを送ってくれた後、すぐに戻ってくれてもよかったんですが、ひさびさだからゆっくり里帰りするってことでしたの。
それに、祖母であるユイナさんの話を自分が知らないのはよくないだろうって言ってましたの。ライナだけまだ子供がいないから、ゆっくり子作りしてくれてもよかったと思ったんですが、特にあまりそういうことは考えてなかったようですの。
エルフの寿命からすれば5年とかあっという間のことでしょうから、別に気長にいけばいいと思ってるのかもしれませんの。
エルフ村へはあらかじめお手紙を出して返事ももらっていたので、ユイナさんもアリサのことを待っててくれましたの。
「おー、2人ともよく来た。
さぁ、アリサも遠慮なく入ってくれ」
「しばらく、お世話になりますの」
「あー、このおばばでよければいくらでも話をさせてもらおう。
ところで、ライナ。曾孫の顔はまだ見せてくれないのか?」
「もう、そういうことはファンナ姉ちゃんに言ってよ。わたしはまだまだ若いんですからね」
「どちらが早いかのぉ。わしが精霊となる前にちゃんと作っておくんじゃぞ」
「はいはい、それもこれも精霊の気まぐれだから、気長に待っててね」
ライナもユイナさんの前では大人しいものですの。
「それで、アリサの聞きたいのは600年前の勇者シモンの話ってことじゃったの?」
「はい、そうですの」
「話せるのはあくまでわしがシモンと出会ってからのことだけじゃぞ」
「それで十分ですの」
「さすがに昔のこと過ぎて、細かいことは忘れてしまってるから、断片的に印象深く残っておることだけじゃぞ」
「了解しましたの」
ユイナさんの話をすべて書き残しておくべきだと思いましたの。今それを残しておくことが将来のためになるとそう考えていましたの。
「そう、シモンと出会ったのは夏の日のことだった」
ユイナさんの長い物語が始まったんですの。
おひさしぶりです。って言っても1ヶ月前ですか、本編完結したのは。
こーんな感じで外伝を始めてみました。
本編は毎日更新でしたが、外伝はまったく書き溜めでませんので気ままな更新になると思います。
そして、アリサちゃんの一人称ってすっごく書きにくいですの……
次の話からは語り手は変わることになりますの。当然、主役はロリババアの若かりし頃になりますの。




