8-11 回答
「今日はいろいろと率直な意見を聞かせてもらえたと思ってる」
俺はゆっくりと話し始めた。
「まず最初に、俺たちのことを信用していると言ってくれたことをありがたく思う。
だが、それでも俺は魔王のことを完全に信用することはできない。
長年の魔族と人間たちとの確執は根深い。魔族たちの狡猾さについても十分に知れ渡っている。
短い期間、魔族たちがおとなしくしていたからと言って、すぐに魔族のことを信じて受け入れることは難しい。
だから、今回の提案を受け入れることはできない」
俺はきっぱりとそう伝えた。
「残念です。受け入れてもらえるであろう条件を整えたつもりでしたが、わたしの計算が足らなかったようです。
それでは、あくまで戦いを選ぶと言うのですか?」
不死の王が俺にそう尋ねる。
「俺は別に魔王を倒そうとか考えてはいなかったんだよ。
魔王という存在を知り、自分が勇者であるということに驚いたものだ。
仮に魔王が過去と同じく平和を脅かす存在で、俺以外にそれに対抗できるものがいないのなら、そう思っていろいろ準備はしてきたつもりだ。
だが、別に魔王がそういう存在でないのなら、俺も別にどうこうするつもりもない。
それほどバトルジャンキーでもないつもりだしな」
「具体的にはどうなさるつもりでしょうか?」
不死の王は俺の言うことに納得できないようだ。
「そうだな。信用できない以上、監視させてもらう。
俺たちの平和を脅かす魔族がいるのならそれを討つし、その裏に魔王がいるとわかれば魔王も討つ。
まぁ今戦っても勝てないだろうって話は十分信じられる話だから、コソコソ逃げ回りながら姑息な手も使うことになるだろうがな」
「それならば、今は条約を結んでおけばよいのではないでしょうか?」
「約束ってものは信用した相手と結ぶものだと思ってる。
国家間の話は別なんだろうが、約束を結んでおいて相手を疑うということは俺にはできない。
そんな約束なら結びたくはないな」
俺が言い終わると、魔王は目を見開き、そして微かに口元をほころばしたようなきがした。
そして立ち上がると、
「勝手にするがよい」
そう言い残して、部屋を立ち去っていった。
「それでは今回の話の続きはまた将来あらためてということでよろしいでしょうか」
「それで依存はないな」
俺がそう回答すると不死の王は、
「それでは失礼致します」
そう言って深く一礼すると、部屋を立ち去った。
「残念ながら本日の会談は物別れとなってしまいました。
皆さんをお送りいたしますので、こちらへ」
リィはそう言うと、詠唱を唱え魔法陣を描き出した。
俺たちはこうして魔王の島をあとにした。




