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8-7 リィからの提案

「それは魔王ガラムスと勇者シモンとの間の不戦条約です。

 生ある限りお互いを侵略せず、また不慮の事故などにより、魔族と人間たちとの間に問題が発生した場合、誠意をもってこれを抑えるように行動する。というものです」


「質問です」


 アリサが挙手した。


「どうぞ。

 大人数での会議でもありませんし、随時発言なさって構いませんよ」


「『生ある限る』となっておりますが、どちらかが死んだ後はどうなりますの?」


「後に生き残った方もそのまま条約を守るものとします」


「先に死んだ方の陣営のほうから、侵略と思われる行動を仕掛けた場合はどういたしますの?」


「生き残った方は誠意をもってそれを抑える行動を取っていただきたいと思いますが、限界があると思われますので、その際はあくまで努力義務と考えております。

 ただ、できることならば、死する前に後を継ぎし者にその志も継いでいかせるようにしたいと」


「そちらは魔王という立場から魔族全体に命令することが可能であろうが、俺は国王でもなんでもない。

 俺にできることは限られていると思うんだが」


 ちょっと死者の王に途中で質問するのは躊躇われたけど、リィになら気軽にできるな。

 俺からの質問に対してリィは、


「魔族の実力は人間たちにもまだしっかりと浸透しているはずです。リスクを冒して魔族の領土を侵略して得るメリットはほんのわずかですので、魔族がおとなしくしている限り、自ら魔族に対し行動を起こす国はないと考えております。

 魔族に対して行動を起こす可能性のあるものは勇者以外には冒険者が考えられますが、彼らに対しては勇者殿の影響力は十分にあるのではないかと考えております」


 冒険者たちへの影響か。それならばなんとかなるかもしれないな。


「たぶん、寿命的に考えるとわたしが最後まで残るんだけど、残ったものに何か制約はあるの?」


 ライナからの質問にリィは、


「この契約は魔王と勇者の2人以外に何も制約をかけるものではありません。

 ただ、できましたら、その意思を継いでいただけたらと思っています」


「質問よろしいでしょうか。

 人間同士の契約は神の名において縛ることが可能です。

 ですが、魔王と勇者の契約はどうやって行うのでしょう?

 また、その契約をどちらかが違反した場合、どのようにペナルティを」


 ヒルダが質問すると、魔王が目を見開くと静かに答えた。


「互いの名においてのみ約を結ぶ。よってペナルティなどない」


 俺の名において?

 魔王はそれに価値を見出しているというのか?


「補足させていただきます。

 我々は皆さんのことを観察させていただきました。

 そして信を置ける。そう判断したことで、こうした場を設けさせていただきました。

 ですので、あとは皆さんが我々を信頼していただけるかどうか。

 それのみと思っていただいて構いません。


 そのため、私たちは皆さんへ2つの贈り物を用意しました。

 まず、1つめはこれでございます」


 そう言うと、リィは包みを開くと、その中からマントを取り出した。

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