8-5 不死の王かく語りき その1
「まず最初に、わたしが封印を解かれた後の森にアンデッドが大量発生していたと後になって聞きました。
皆様方に多大なご迷惑をかけたことをお詫びしておきます。
ただ、この件以外でそれ以降、わたし及び魔族が、人間ほかの皆様に御迷惑をおかけしたことはないと思っております。
こちらの確認できていない案件がございましたら、ご指摘ください」
不死の王の問いかけに、アリサから、
「ここ1年間に魔族関連と思われる事件は、その1件のみであることを確認しております」
と回答した。
「ありがとうございます。
それでは本題に入ります前にわたしのことを説明させていただきたいと思います。
人間ほかの皆様から四天王などと言われ誤解されておりますが、596年前のときも現在もわたしの立場は魔王の相談役にすぎません。
いかなる戦闘行為もしておりませんし、今後もするつもりはありません。
わたしは知識を集め、必要とする者にその知識を与えるだけの存在にすぎません。
ただ、そうした存在を以前の勇者殿や賢者殿は危険であると断じたようですが」
「今もその考えに変わりはありませんの?」
アリサから不死の王にそう尋ねる。
「世界樹を通してエルフ族の知恵を受け継ぐことができ、少し考え方が変わっております。
すべての知識を与えるのでなく、どのような知識を与えるのが相手にとってもっともよいか、それを考えれるようになったようです」
「それならば、アリサからあなたに言うべきことはないですの」
アリサは満足そうに頷いた。
「ありがとうございます。
続きまして、今日お集まり頂いた議題について皆様に説明させていただきます。
魔王が復活したことにより魔族たちの期待が高まっておりました。
再び世界を魔族の支配下におけるのではないかといった期待です。
魔王は魔族たちの期待どおりに前回の魔王より強大なちからをもっております。
また、前回の魔王より賢明でもありました。
魔王は前回の敗戦の原因や魔族の現状を鑑み大きな不安を持ったため、わたしを復活させることを選択しました。
わたしは復活後、すべての状況を調査分析した結果、こう結論づけました。
現状の魔族のちからで世界を一時的に支配下におくことはかなりの確率で可能である。
ただし、魔王が今世を全うした後、間違いなく魔族は滅びると」
不死の王の出したその結論は、奇しくもアリサのだした結論と一致していた。
「皆様も御存知の通り、魔族の能力は全種族の中でも際立って優れています。
ただし、その繁殖能力は全種族の中でも最低ランクに位置します。
以前の戦いですでに魔族の絶対数は生物学的に危険と言えるレベルまで減っておりました。その後も有効な処置が取られないままでしたので、その絶対数は危険なままとなっています。
もし、現状で魔族が大きな戦いをしたならば、その勝敗に関わらず取り返しのつかない値まで減少するでしょう。
ここで今回の話し合いの提案に入るのが本当でしょうが、その前にもう1つのデータを皆様に提示しておきます」
不死の王はここで少し間をおいた。




